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第三章

第3章


今日は無事に教室で授業を受けている。そんな事は当たり前の事なのだが、初日からバックレて河原で焚き火なんて、とても普通とは言えない。

結局、転校初日から学校をバックレ、クラスメイトからはある意味一目置かれた存在になったようだ。

大丈夫だろうか?オレは普通に過ごしたいのに・・。

んで、その原因の姫乃だが、今日はまだ来ていない。またハムカツパンでもかじりながら河原で焚き火でもしてるんではなかろうか?

ぶっちゃけ、この先なるべく関わるのは遠慮したい。



朝のホームルームで軽く挨拶をして自分の席につく。教壇の目の前のアリーナ席だ。普通、転校生といえば窓側の一番後ろの席になるのが一般的ではないのか?

もうご存知だと思うが、オレはこんなアリーナで授業を受ける程、優等生ではない。

そして気になるのはオレの後ろの席。今日は空席になっている。多分アイツの席だろう。

今日欠席しているのはアイツしかいないみたいだから・・・。

・・・姫乃だ。

アイツの事だ、後ろから色々ちょっかいとか出してくるに違いない。

・・・めんどくさい席になっちまった。ドラマとかなら可愛い女の子が隣の席で、楽しい恋愛が始まるってのが王道なのに・・・。

まぁ、三年生になったら、そんな事もあるかもしれないから、しばらくは我慢だな。



今日の授業は四限まで、昼過ぎには帰宅だ。オレの心配をよそに姫乃は結局来なかった。


 放課後、一応オレだけは職員室に呼ばれ、昨日のバックレの謝罪と各教師達への挨拶をさせられた。昨日、姫乃が言っていた通り担任はキモいヤツで、こんなに寒いのに顔面が油っぽく、いちいち「夢」を熱く語ってくる、チビで小太りのオッサンだ。勘弁してほしい。他の教師も担任の青春映画からパクった様な話に少し引いている。


オレは適当に聞き流し、教師達への挨拶を済ませ職員室を後にした。

荷物を取りに教室に戻ると男子二人が机に座って話をしている。こんな田舎にしては珍しい感じのチャラ男だ。

「お先に・・」

一応、声を掛けて帰ろうとするとチャラ男二人が話し掛けてきた。

「なあなあ、都心から来たんでしょ?マジいいクラブとか知らない?」

どうやらクラブに行く相談をしていた様だ。

「オレはあんまり行かなかったけど、知り合いは渋谷の666ってクラブによく行ってたよ。」

あんまりというか、クラブなんて行った事もなかったが、前の学校のクラスのヤツらがよく話していたクラブの事を教えた。

「そこ知ってるよ。よく雑誌に載ってるもん。やっぱいいんだぁ。」

「今度一緒に行っちゃおうよ。渋谷とかよくわかんねぇからさ。」

チャラ男達は全くチャラくもないオレをクラブへ誘ってきやがった。

勿論、行く気はなかったが、まだこっちに来て2日目、友達もいなかったので社交辞令的に了解しておいた。

しかしこの約束は社交辞令では終わらず、この夏オレ達は渋谷のクラブへ行く事になる。


チャラ男達の名前は「矢部竜也」「小滝雄一」、通称やべっちとコタッキーだ。

この二人がオレの春川生活初の男友達となった。

趣味は合いそうもないが、やっぱり男友達ってのはイイ。

この日は三人で下校し、パイオツに寄ってハムカツパンを食べながら暗くなるまで色々話をした。

特に女の子の話は盛り上がり、パイオツのおっさんにうるさいと注意される程だった。


そして次の日からオレはやべっちとコタッキーとつるみだし、春川生活は順調に滑り出した・・・気がしたのだが・・・。



期末テストも終わり、授業もほとんど午前中だけになって、もうすぐ二年生も終わりかけた頃、それまでおとなしかったアイツが動き出した。

それはこの日の四限の日本史の授業中、突然立ち上がり、「あたしさぁ、自分で見た事とかしか信じらんないから、歴史とか全然興味ないんで帰ります。」



「はぁ?」

いきなりの事でビックリして振り返ると、姫乃は自信満々で仁王立ち、教師を睨み付けていた。いまさら歴史を信じられないだとかバカな事を堂々と言い放ちやがった。

ほんとのバカだ。

授業をバックレたいならトイレとか体調悪いとかあるだろうに・・・。

そして姫乃は荷物をまとめ、教室を出て行こうした。ドアに手を掛け廊下に出ようとした時、ピタッと止まりひき返して来た。

イヤな予感がする。

そのイヤな予感はもちろん的中、姫乃はまっすぐオレの所へ来て、オレのカバンと腕を掴み、初日の校門前で引きずられた様に再び引っ張られて廊下に出された。

教室のみんなは唖然として見ている。先生も突然の事で言葉を失ったみたいだ。

「バカっ、何やってんだよ。巻き込むんじゃねぇよ。」

腕を振りほどき、オレは姫乃に怒鳴った。

「だって・・・、一人じゃ怖くて・・・」

何が怖いのかよくわからなかったが、半泣きの姫乃を見ていて意外な反応に少し戸惑っていた。コイツならバックレて何が悪いの?っていうイメージだからだ。そのせいもあってか、何だか可哀想に思えた。

「もう出て来ちゃったんだから、しょうがねぇだろ。」

そう言うしかなく廊下を歩き始めた。トボトボと後ろを歩き始める姫乃。

正直、ムカつく奴だけど可愛い。


男ってのは本当にバカだと思う。どんなにムカつく事をされても、美人なら大抵の事は許してしまう。

美人は得だなんてよく言うが、それは男がバカだと言うことを意味している気がしてならない。あながち間違いではないだろう。

とりあえず、今日も四限で終わりなので、このまま姫乃と帰ろうとすると、後ろからオレを呼ぶ声がした。

「おーい、ちょっと待てよー。」

オレと姫乃は一緒に振り返った。

茶髪の逆立てた頭を揺らし、やべっちとコタッキーがこっちへ走ってきて、「マジ、何あれ?超ウケんだけど。」

軽く息を切らしながら笑っている。

「別にウケなんて狙ってないんだけど。」

二人を睨みながら、さっきの沈んだテンションを感じさせない態度で話す。

「テストも終わったし、授業なんてめんどくさかっただけよ。あんた達だって出てきてんじゃん。」

「まぁ、リアルにダルいからねぇ。」

コタッキーは後ろ髪をつまみながら笑っている。

とりあえずオレ達は姫乃の提案で、また河原へ行く事にした。



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