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prologue

「田邉 てふ」の処女作になります。一番嫌いな恋愛と夢をテーマに描いてみました。ひねくれ者なので、ちゃんと恋愛物になっているか不安ですが、一生懸命書いたので最後まで読んで頂けたら幸いです。よろしくお願いします。

プロローグ


「・・・さむっ」、今朝はいい天気のクセに気温5℃、空はやけに青い。しかもその青い画面に白いスプレーでサラッと吹き付けた様な霧状の雲がチラホラ見受けられて、なんとも空っぽい。久しぶりに空が綺麗だと思えた。

視線を落とせばそれに負けじと霜柱がこれでもかと地面を押し上げ綺麗な氷柱を見せている。オレはそれを何の躊躇もなく踏みつけて歩く。ザクザクって感じでちょっと気持ちいい。

嗚呼、気付けばこの世に生を受けてもう17年、これまで割と平凡に生きてきたと思うオレな訳だが、世の中何が起きるか分からない。

本当に突然言われたのだが、家の引っ越し、更にオレの転校がここ数日で決まったらしい。

ビックリするしかないのとほんとダリぃとしか言いようがない。

めんどくさがりのオレだからクラスメートに最後の挨拶をしなくてよかったのは良しとして、せめて仲のいい奴らにはとメールだけは送っておいた。冷たい奴だと思われてるんだろうな・・・結果、返信はゼロ。これには少し凹んだよ。


転校なんてそんなに大した事ないように思うかもしれないが、オレにしたらそうとうな事件な訳ですよ。

今まで引っ越しなんてもちろん、転校なんてしたこと無い訳で、まあ正直、転校と言えば昔は憧れていた時期もあったりして、実際転校生に恋した事もあったような無かったような・・。

要するに転校生ってのはなんだか特別な存在で、クラスの誰もが転校生に興味を示したり、いつも見ているクラスメートより新鮮なせいか、どことなくカッコ良かったり可愛く見えたりするもんなんだよね。

色で言うならピカピカで真っ白って感じ?

何年も同じ学校に通っていれば、大体そいつの色は決まってくるもんで、ずっと同じクラスのヤツなら尚更だ。

絵の具を塗る時に使うパレットってヤツがあるでしょ?

あれに絵の具を一週間位放置してガッキンガッキンに固まっちまったみたいにキャラが固定されちゃうワケ。

その上から他の色を乗せても、被せた色の下には岩みたいなイメージが固まってるでしょ?ガッキンガッキンの固まったイメージを剥きたてのゆで卵のように真っ白でツルツルに変えるには転校生になるのが手っ取り早い。

でもまぁ高校生の二年生にもなるとそんなイメージチェンジなどただの面倒事に感じてくるもんだ。

そりゃあ髪型やファッションは別だけど、・・・気分的な問題だからね。でもこの歳で人間性やキャラを変えるにはちょっと遅いかな?って感じ。めんどくさいしね。

猫被ったってここまで築き上げた人間性はそうそう崩れるモノではないでしょ?確かにイメチェンするにはチャンスなんだろうけど、オレってばそういうのどうでもいいって感じだから早い話、今更転校なんて面倒事でしかないって訳。しかもただ通ってる通学路を変えるだけではなく、ご丁寧に引っ越しまでセットで付いているっていう超めんどくさい豪華なイベント。しかも引っ越し先の学校が一つしかないのかは知らないが、選択の余地もなく行く学校は決まっていた。

引っ越し先から近いって理由なのか、オレの学力的な問題なのか、とりあえず都立の春川高等学校っていう小学校の低学年の時に遠足で登ったような中途半端な高さの山の中腹にある学校に決まっていた。

そうなのだ、この春川っていうトコは東京のクセに山があり川があり空気がキレイな大自然たっぷりな場所で、ゴミゴミした都会に疲れた人々がガイドブック片手に訪れる割と有名な観光地なのだ。今まで高層ビル群に囲まれて育ったオレにはかなりのカルチャーショックだが、これはこれでいい事なのかもしれない。何もないド田舎だけど・・。


 そもそも何故転校なのかって事だが、一般的に引っ越しや転校といったら親の都合が八割だと思うのだが我が家とて例外ではない。

オヤジは保険会社に勤めているのだが最近の保険会社の不祥事や倒産が原因での客離れで成績不振とかで異動とかなんだろう。だろうっていうのは子供ながらに親の気持ちを察してあげたというところだろうか、言いにくい事は聞かなかったという訳だ。

オヤジに頭下げられて転校してくれって言われたら何も言えないでしょ?そりゃあ言いたかったけど今まで中高と私立の学校だったし学費とかけっこう高い学校だったし今まで相当スネかじってたから・・。

とにかく素直に親の言うことを聞いてこの春川にやってきたって訳なのだが、実はこの春川ってトコには小学生の頃たまに来たりしてた事がある。

こっちには婆ちゃんの家があって夏休みになると川で泳いだり、山で昆虫採集しに来ていたので全く知らない土地ではない。こんな大自然たっぷりでも東京なんだよな一応・・。最近は全然来なくなってしまったが・・。


 そんな懐かしい婆ちゃんの家で両親とオレとの家族三人お世話になり、そしてオレはこれからココから徒歩50分の新しい学校へ通わなきゃいない。

今までの学校が駅まで五分、駅から五分だった事を考えると50分も歩きっぱなしなんて授業が始まる前に体育の授業を受けた感じだ。

まあまだ若いんだし、これ位の運動は学生らしくていいかな?

・・なんて思える程大人じゃないのが最近の高校生ですよ。

自転車くらい買ってもらおうかね。学校は山の中腹だから結局押してあがらなきゃだけど・・。

電動自転車なんて高いモノおねだり出来る状況じゃないしね。


それにしても今まで何をするにも便利な都会に住んでいたオレが今更、大自然に囲まれて暮らすってのはかなりの無理があるんじゃないのかい?小さい頃来た時よりは多少栄えてきたみたいだけど、町には夜9時に閉まるコンビニが一軒、電車は一時間に一本、ついでに携帯のアンテナも一本という都会では考えられない場所だ。

少し気が滅入ってきた。


そんな事を考えながら歩く事20分、どんどん学校のある山が近づいてきてオレのテンションと緊張は完全に反比例しだした。

今思えば、この春川での高校生活はオレの人生で絶対に忘れる事の出来ないモノになっていく事をこの時点では全く想像してなかった。



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