第五話 世界最巧の初陣
バトルバトルしてますよぉー、本当ですよぉー
「ルーク様、武器の分配と配置が完了しました。まもなく魔物と衝突します」
護衛の言葉に俺は考えごとを一旦、中断して注意事項を伝える。
「各員、自分の持ち場を離れすぎないようにね。幸い飛べる魔物は殆ど落としたから、不意討ちについては考慮しなくて良いと伝えておいてくれ」
槍やらフォークやら投げたら以外と落とせたことにビックリだった。本当にこれがまた面白い様に当たるのだ。
因みにフォークとはあのフォークである、サイズは農具だから段違いだが。
「了解しました。伝えておきます」
屋敷で本ばかり読んでいた甲斐があったよ、大体の魔物の特徴はもう全て記憶してるからね。
飛竜はシンプルすぎて参考にならないけどね。
俺もそろそろ持ち場に着かなきゃ。
今回の布陣はシンプルだ。
森森森森森森森森森森森森森森森森 河河河河
魔 河河河河
魔 魔 河河河河
魔 魔 河河河河
魔 河河河河
魔 魔 河河河河
魔 魔 河河河河
河河河河
田田田 田田田 田田田 田田田 河河河河
田田田 田田田 兵 田田田 田田田 河河河河
田田田兵田田田 兵 田田田兵田田田 河河河河
民民民 民民民 俺 民民民 民民民 河河河河
今の季節が、地球でいう5月に当たることと稲科の植物が存在したことで、この作戦が効果を発揮してくれる。
そう、田んぼの水量が一年で最も多いのだ。
早速先頭のオークが田んぼに足を捕られて転倒する。こうなってしまえば、普通の人でも囲めば倒すことが可能だ。
まあ、植えたばかりの稲はダメになってしまったが。
あちこちで足を捕られた魔物達が、槍やらフォークやらで刺されて息絶えていく。
だが、この状況はそう長く続かない。
空を飛ぶ魔物以外にも厄介な奴は居るのだ。
「ブラッドウルフが来るから気を付けて!」
そう、奴らは田んぼを跳び越えて来るのだ。
「うぉ!!」
突然跳んできたブラッドウルフに驚き転倒する農民。くそ、包囲が乱れる!
「任せときな、『風刃』」
護衛のリーダーが初級魔法一発でウルフの首を空中で切り飛ばした。
「すまねぇ、助かったよ!!」
立ち上がり礼を言う農民。
それを見て、俺は攻撃に専念することに決めた。
農民のカバーは護衛が何とかしてくれると信じよう。あの、実力なら任せられるし。
俺は、護衛達の後ろで馬から降り、向かってくる魔物達に武器を投擲する。
「いっけぇーーーーー!!」
フォークは正確に猿の魔物の顔に突き刺さった。
いや、倒せたから良いんだけど、
やはり、おかしくないか?投げた後にフォークが加速しているんだけど。
「はっ!!」
もしかしたらと思い、俺は小声で言った。
「なあ、居るんだろ?」
「「「「「「「………………………」」」」」」」
「居たら、撫で撫でしようと思ってたのになぁ~」
すると、馬の荷物袋からかなりの数の風の精霊達が出てくる。
「「「「「「「撫で撫でして~!!」」」」」」」
我先にと向かってくる。どうして、こんなにコイツらは甘えん坊なのか。
「分かった、終わったら撫でてやるよ、全員な」
「「「「「「「「「わ~い!!」」」」」」」」」
「所で、お前らが俺の投げた武器を加速させてんの?」
「うん、お手伝いするの」
「お菓子くれる人、大事」
「撫で撫で担当はレアだもん」
「ル~くんを守りたいの」
中々、愉快な理由だな。最後の子は、まともなのが逆に浮いてるな。
「でも、何よりも」
「「「「私(僕)達と遊んでくれる人が大事」」」」
全く、コイツらと来たら。あれは、遊んでんじゃなくて、本気で避けてたんだよ。
まぁ、今となっては良い思い出だけどな。
「なら、ドンドン行くよぉーーー!」
「「「「「「「おぉぉぉーーーー!」」」」」」」
俺は片っ端から、武器を投擲していく。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
大体は片付いた、後ヤバそうなのは、あと俺に向かって突撃してくるヘルボアという巨大猪だけだ。
「おらぁーー!」
俺は槍を今まで以上に全力で放った。ボアの眉間へと吸い込まれていく槍。
「ガキンッ」
なっ、牙でガードってアリかよ。
なら、田んぼに嵌めてやる…………って、魔物で埋まっちゃってるぅぅぅーーーー!?
ヤバイ、このままじゃ、誰かが死ぬ。
てか、どう見ても俺を狙ってるぅぅぅーー!
そっちがその気なら、殺ってやるよ!正面から!
俺は武器を脇に持てるだけ抱え、猪に向かって走っていく。
「待て、坊主!あれはヤベェから止まれって!」
「止まらないよ、僕も…………アイツも!!」
「くっ!」
他の魔物の生き残りが邪魔で俺を止められなかった護衛のリーダーはやけくそで叫ぶ。
「なら、絶対勝てよぉーー、坊主ぅぅーーー!」
「任せといて♪」
茶目っ気を出して、ウィンクしながら俺は突進していく。
衝突まであと五秒も無いだろう。
俺は抱えた武器を二本の槍を除いて、地面に斜めに突き立てて叫ぶ、
「土の精霊さん、ご褒美やるからその武器を地面に固定してくれぇぇぇーー!」
即座に武器に土が絡み付き一本の槍に姿を変えていく。
これなら、行ける!
いや~、博打だったけど、風の精霊が居るなら他も居ると思ったんだよね。
本当に居てくれて良かったぁぁぁーーー!マジで居なかったら詰んでたよ。
俺は両手に持った槍を交互に投擲する。今回は牙で弾かせてはやらない。
「風力全開で行くぞお前らぁぁぁーー!!」
「「「「「おっけぇぇぇーーーーい!!」」」」」
「『音速槍』」
「パァン!!」
「パァン!!」
音速を越えた槍は、空気の壁を越え衝撃波を纏う。
槍はそのままバリスタを越える速度で猪に突き刺さり、その前足を吹き飛ばした。
「ギィヤァァァァーーー!!」
前のめりに転倒したヘルボアは、その自らの力によって、土槍が根本まで体に突き刺さり動きを止めた。
「坊主が殺りやがった!」
「倒したのですね、これは将来が楽しみです。」
俺は、槍を投げたときの強風で吹き飛ばされたお陰で衝突は避けれたが、七歳で『音速槍』は不味かった。
短い距離で音速に持っていく為に、先程と違い投げながら加速をさせていたので、肩が外れてしまったのだ。
「でも、これで終わりだ。僕達の勝利だ!」
勝鬨を俺は上げた。
「「「「「おぉぉぉぉぁーーーーー!!」」」」」
後は、父さんがやってくれるはず。
俺は痛む両腕に顔をしかめながら、父さんと飛竜の決着を見届ける。
もう、勝利は目前のようだ。
傷付いた飛竜は、散発的な抵抗しか出来ていない。
「本当に父さんはすごいな!憧れる相手に不足無しだよ」
皆が気を抜いて、生き残ったことを喜ぶ中、
そんな人々の運命を嘲笑うかのように
森で起き上がる影があった。
戦闘が最巧っぽくない?(;゜0゜)はっはっはっ
まだ、七歳に巧な戦闘はさせられませんよ