第十一話 精霊接触法
ルークとクロナの年齢を七歳と十四歳に変更しました。
流石に五歳でこれは異常だと作者自身がビビったためです。
はいはーい、此方は絶賛人命救助中のルークでぇぇーーーす!
という訳で地下牢獄が崩れる前に全ての錠を外し、風の精霊で衰弱した人達を運んでいた俺は、目の前に落ちてくる瓦礫たちを、
「『小爆発』!」
発動に必要な最小魔力で、本来の威力の十分の一のボムを連発して瓦礫を粉々にしていた。(中々の高等技術だよ!)
こうでもしないと魔力が切れてしまうからだ。
精霊を使えないだけで、大きく戦力が下がるのは課題だな。何か、対策を考えておかなきゃ。
そんなことを考えながら、
俺は登っていく途中で、残った人を回収しながら外へと逃げ出す。
やっと、ひと安心……………出来るわけないか。
そして、外へと飛び出した俺の眼前には最後の障害が大暴れしていた。
「発見殲滅!」
メリア王女の評価がぐんぐん下がっていくのが、自分でも分かる。
「フラムは何処だ?止めるのに失敗したのか?」
マジか頼みの綱のフラムが居ないんだけど、
(ルーク、メリアを止めて!戦闘狂形態に成っちゃってるから!)
頭に直接響くフラムの声に俺は、
「フラムが死ぬなんて………いい奴だったのに」
(死んでないわよっ!ちゃんとメリアの格好を見なさい)
「うん?メリア王女の格好?」
あら?メリア王女の服がシンプルな深紅のドレスから、深紅のドレスメイルに変わってますな。
「何か、可愛さがアップしてる!!」
(違うわよ!!)
(私は今メリアと同化してるのよ!こうでもしなきゃ炎を止められなかったの)
「成る程、じゃああのメイル部分がフラムなのね?」
(正確には違うけど、まあ、そういうことね)
「まぁ仕方ない、止めるよ」
炎と爆発で地上は、滅茶苦茶な状態だ。
抑えてこれとかもうホラーの域だと俺は思います。
そのなかで、踊るように犯罪者達を殴り終えたメリア王女の籠手は緋色に輝いている。
「おい、フラム!あれ抑えられないの?」
(あれだけはセーブできないから頑張って♪)
「まだ、人間が残っていたのね♪」
メリア王女がこちらに振り向く、
「ルークですよ王女様ぁぁーーー!」
ヤバい!なんか、話を聞いてくれる雰囲気じゃないんだけど!
俺は風の精霊と土の精霊で王女にやられた犯罪者達とその雇い主である闇奴隷商人を戦闘区域から逃がし、騒ぎを聞き付けてやって来た騎士団の周りに送り届ける。
騎士団は即座に賊達を捕縛していく。
だが、ここからが問題だ。
俺が救出した人達は百人近く居るため、すぐには運べないって言うか、王女が殴りかかってくるので運ぶ暇がない。
余波で衰弱した人が吹き飛ぶのが視界の隅に映り、慌てて風で受け止める。
王女様、見境が無さすぎるっ!目に付いた人を全員倒さなきゃ気がすまないの?
ハッ、そうだ!俺は希望が居ることに気づいた。
騎士団助けてぇぇぇーーーー!
俺は希望を騎士団に託す。
騎士団の面々は俺を見て、変な動きを送ってくる。
何やってるんだ?
はっ!あれは、確か王国式騎士団系ハンドサイン!
屋敷で一応覚えておいて良かったぜ。
騎士の一人が右手を頭に左手を右腰に当てて上を向く。
確か……………敵の注意を引けだったかな。
で、次はどうしたらいいんだ?
えーと、自分の右腕を叩く動作だから……………武力の行使による徹底抗戦だったか。
成る程、俺に意識を向けている間に奇襲で騎士団が抑える訳だな。
んっ?まだあるのか?
騎士団の階級を表す胸の階級章を指差した後、指を二本上に立てた。
確か……………あれは、階級関係のハンドサインだったはず、
「って、二階級特進じゃねえかよぉぉぉぉぉーーー!!」
ハンドサインをしている騎士の横で包帯まみれの騎士がこちらに手招きをしている。
*幽霊ではありません
「ひぃーーー!戦死した騎士の幽霊がぁぁぁーーーー!」
*何度も言うようですが幽霊ではありません
「ギリギリ俺も生きてるから大丈夫だよ、ちょっと夜中に叫びながら目覚める癖が付くだけだよ♪」
「やっぱり生きてたけど、何か心に傷を負ってるよ!」
どうやら、王女の暴走は頻繁に有るらしい。
「もう、こうなったらやるしかない!」
俺はある持ち物をこっそりと確認する。よし、多分行けるかな。
「ガハッ!」
ポーチから顔をあげた瞬間に、腹部にフラムと瓜二つのモーションでボディブローが叩き込まれる。
速すぎる、明らかに子供じゃないだろ。
風で自分の体を後方に飛ばして無ければ、今のでゲームオーバーだった。うん、僕も子供じゃないよね。
間髪いれず追撃してくる王女を今度は油断せず迎え撃つ。
「復元『輝羽』!」
お馴染みのフラッシュで、先手を突き一瞬王女の動きを止める。
そして、目下最大の脅威である緋色の籠手に手を伸ばし、一瞬で留め具を外し掠めとった。
「まずは、片腕っと」
俺はメリア王女に見せびらかすように籠手をプラプラさせると、
「最高にいいわぁぁぁーーーーーー!!」
怒るかと思ったら最高に喜んでました。
爆発による推進力で一瞬で間合いを詰めてくる。
とにかくその拳打は単純だが速すぎて避けるのが困難だ…………普通の人の場合は
その普通じゃない部類に入る俺は、速度もパワーもメリア王女に負けているが、搦め手を使えば寧ろ有利になる。
何故なら、わざと隙を見せればメリア王女は必ず突きにくるので、それを見越して回避することで、圧倒的なステータス差をカバーしつつ、持ち前の器用さで残りの籠手も奪い去った。
「籠手も無いし、ストップでいいんじゃないかな?」
「何を言ってるの?ここからよ?解放、再召喚」
俺が持っていた籠手が消えて王女の手に戻る。
「そんなのアリですか?」
「これぐらいは常識よっ♪」
くっ、可愛い。こんな場面じゃなければ凄くいい笑顔だ。
「そう言えば、僕ばかり狙ってて良いのか?」
そう、王女は元々無差別に攻撃していた筈なのに今は俺だけに集中している。
メリア王女は顔を傾けて考え込んでいる。
俺は内心ほくそ笑む…………巻き添えの時間だ騎士団の同志達よ♪
「そう言えば、私は元々誰も殺す気は無いのよ?だから、実は他の人狙う必要無いの」
「あれ、でも…………さっき」
「あぁ、あれは、演技よ。こうでもしないと皆遠慮して全力を出してくれないから♪」
「戦闘狂形態っていうのは?」
「今回のはフラムの勘違いね」
今回はってことは、
戦闘狂形態が在ることは否定しないんだね。
あれ、じゃあ騎士団囮作戦出来ないじゃん?
「じゃあなんで僕は狙われてるんですかね?」
「貴方のことがずっと気になってたのよ…………何でか分からないけど、でも、さっきはっきりと分かったわ」
物憂げな表情を浮かべる王女の姿に俺の中の悪魔が首をもたげる…………が寸前で止めた!
これは罠だ!
「きっと、私あなたの………………
幼さと大人の色気の奇跡のコラボレーションに、何だかもう騙されても良いような気がしてきた。
………強さを何となく感じ取っていたのね!」
ちくしょう!聞かなきゃ良かったぜぇぇーーー!
「僕そんなに強くないんですけど…………」
ブンッ、スッ、ブンッブンッ、スッ、スッ
「なら、何で攻撃が当たらないのよぉぉぁーーー!」
「まあ、状況が特殊だからね」
フラムが炎の出力と爆発力を抑えている間は、俺に対して最も相性が良い範囲攻撃を王女は使うことが出来ないことが俺にとって有利な状況を作り出したのだ。
「せめて、メリア王女が格闘技やら武術を嗜んでいたら、万が一にも勝ち目が有りませんでしたが、流石にその年ではまだだったみたいですね、フッ」
「くぅぅーーー!」
俺は大振りな彼女の拳を避けて懐に入り、この勝負と俺の内に潜む悪魔に対しての結論を出すことにした。
「これで終わりです………メリア王女!」
王女は眼前に迫る俺の拳に、ギュッと眼を瞑り衝撃を待つ。
ポンッ
「という訳で、メリアが大人になってもっと強くなるまで決着はお預けにしよう」
俺はそう言ってメリア王女の頭を優しく撫でる。
赤くなったメリア王女のドレスメイルが炎を撒き散らし、収まると元通りのドレスと疲れた様子のフラムが現れた。
メリア王女は何か言いたそうだったけど、撫で撫での前に表情を緩めて、ポーっとしている。
突然の呼び捨て + ナデポ + プロの撫で撫で
これは決まったぁぁぁーーーー!
「何が決まったのですかルーク様?」
心が読まれてる気がするのは気のせいだろうか?
「ルーク君何が決まったの?」
こっちもエスパーに目覚めてるらしい。
「べっ、別に何でもないよ、それよりクロナとミラこそ何やってるんだい?」
「突然屋敷を抜け出したのは気付いていたので迎えに来るつもりだったんですけど、肝心のルーク様は幼い女の子を赤くしてニヤニヤなさっていたので、ほっといて帰ろうかなぁーと思いまして」
「ルーク君、早く帰ろっ!ここのお屋敷とっても綺麗なの!」
君の動きに合わせて弾む金糸のほうが綺麗だよ。
本当にクロナはともかくミラは僕の荒んだ心を癒す唯一のオアシスだよ。
「あれ、大丈夫?お顔が真っ赤だよ?」
ミラが赤くなったメリア王女に近付き心配そうに声を掛ける。
やっぱりミラは優し………………じゃなくてヤバい!
聖女候補と王女っていうそれぞれの国の将来を担う人材が出会っちゃったよ、しかも今俺達戦争中なんだぜ。
「ええ、大丈夫よ、所で貴女は?」
「私?私はミランダっていうの、ミラって読んでね♪」
「私はメリアよ、宜しくね♪」
「じゃあ、えーっとメリーって呼ぶね」
「良いわよ、私貴女のこと気に入ったわ!」
「仲良くなれそうだね」
どうやら、二人の相性は中々良かったようだ。
あっ!そう言えばクロナは何処だ?
後ろを向くといつの間にか地面に文字を書いてウジウジしていた。
「ルーク様は歳の離れた私みたいな従者は嫌いなのでしょうか……………はぁ」
「僕はクロナのこと大好きだよ♪」
よしよしと優しく頭を撫でる。
「全くルーク様は子供らしいのからしくないのかよく解りませんね」
取り敢えず持ち直してくれたようだ。
美少女の悲しむ姿は、なるべく見たくないのさ。
「ルーク、あんたって本当に女の敵ね。ちょっと見損なったわ」
いつの間にかフラムが俺を心底蔑んだ目で見ている。
凄くゾクゾ…………じゃなくて、悲しい気分になる。表情を隠すために俺が顔を伏せていると、
「あっ、ちょっと私も言い過ぎたわ……子供相手に言うことじゃなかったわ」
いや、申し訳ないが、フラムは何も間違っていないんだ。
間違ってるのは俺なんだ。
「あっ、しまった!」
「どうしたのですか、ルーク様?」
そう言えば、連れてきた人達放置したまんまだわ。
俺は皆に事情を説明して、衰弱した人達に勝手に拝借したポーションやそれぞれの魔法で治療していく。
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騎士団の協力もあり、直ぐに怪我人の治療は完了した。
「王女殿下、共に城に戻り陛下にご無事をお伝えせねばなりません」
「わかりました、ですがその前に挨拶をしておきたいのですが………」
「承知しました、その位の融通でしたら陛下もお許しになるでしょう」
メリアは燃えるような緋色の髪を靡かせながら振り向き、
「ルーク、この度は助けて頂き有難うございます、フラム共々また会える時を楽しみにしています」
「いえ、貴族として当然の行為をしたまでです」
流石に騎士団の前なのでおふざけは封印している。
「こういった場では、取り繕うのですね」
悪戯っぽく耳許に囁かれて頬が若干火照る。
戦闘時以外は、立派な王女なんだから、手に負えないよ……全く
そして、王女はあの後クロナともミラ程ではないが親交を深めており、メリアは改めて二人の前に立ち、
「ミラ、クロナ、貴女達は私の初めての友達です。わ、私が王女と知っても仲良くしてくれますか?」
不安げな様子で二人を見るメリア、
「メリーは王女でもメリーだよ?」
ミラは幼さ故の無邪気さでメリアの不安を払拭した。
「私はミラ程、自由に振る舞うことは出来ませんが、善処しますよ♪」
クロナはああ見えて頭が回るし、俺を注意するとき以外はおっとりとした出来るメイドさんだから、多分初めからメリア王女の正体に気付いていたのだろう。
「………………有り難う二人とも」
「良かったね、メリア………グスングスン」
フラムが号泣してるよ、本当にいい奴だな。
「良い歳して泣くなよフラム」
今日は迷惑を掛けっぱなしだったからお詫びに、ハンカチで涙を拭ってあげるていると、
「「ルーク君(様)、その人は誰なの(ですか)?」」
「「「えっ?」」」
俺、フラム、王女は顔を見合わせて、王女がフラムに手を伸ばす。
プニプニ
フラムの頬にメリア王女の指がめり込む。
「フラムに触れる?」
俺は不思議に思い、フラムの目元から手を離すと、
スカッ
メリア王女の手がすり抜ける。
おやおや、まさかこれは
次は、フラムの髪をにぎにぎする。
メリア王女とミラとクロナの指がフラムをツンツンする。
「止めなさいよっ!」
俺が手を離すと、
スカッ
「ルーク………あんたが触ってる間は実体化するみたい」
「マジですか?」
「マジのようね」
取り敢えず俺とメリア王女でミラとクロナに精霊のことを説明すると、
「まぁ、ルーク様がよく屋敷や馬車でじゃれていた子たちの上位個体なのですね」
「ルーク君と遊んでる子たちだよね、知ってるよ」
ミラもクロナも順応性が高すぎる気がする。
まぁ、俺が触ってる間だけ姿が見えたら、直ぐに精霊だと見当がつくか。
その後はフラムも交えて、話し込んでいると、
「王女殿下そろそろお時間です」
どうやら、時間なようだ。
「ではごきげんよう、ルーク、ミラ、クロナ…………………それと、ルークあの約束覚えておいて下さいね♪」
「承知しました……メリア王女」
って言ってもこの約束って再戦の約束なんだよねぇーー
まぁ、こんな誘われ方も悪くないか。
「じゃあね、ルーク楽しかったよ!」
フラムが俺にお別れを言ってくる。
「いや、フラムには手伝ってほしいことがある」
「えっ?いや、今日は疲れたのでけっ「行ってきなさい、フラム」はいはい、了解したわよ」
俺は王女の乗った馬車を見送り、最後の仕上げをすることにした。
王女もフラムを貸し出してくれたし、上手くいくはず、多分だけど。
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それから俺は治療を受けた違法奴隷達の前に立っていた。
「よしっ、逃げたい奴は逃げてよし!」
「ちょっと待て、まだ、納得してねぇよっ!」
「よく絡んでくるな君は……………まさか、僕のこと好きなんですか?ちょっとショタでホモとか救いが無さすぎますよ?」
全く鱗少年はよく絡んでくるな。
「ショタでもホモでもねえよっ!」
「まぁ、いいや、本題に移ろうか」
「俺はこの中に居る犯罪奴隷を逃がしやしないっ、絶対に!」
「だから言ったろ、お前を拐ったみたいに人を食い物にする奴はこの中にはいないって」
「だから、証拠見せろよ、その精霊とやらを!」
予想通りの展開にこっそりと俺は笑みを浮かべる。
「分かったけど、この事は秘密にしろよ」
「あぁ、約束する」
よし、今の騒ぎで救出した人の全員の注目を集めれたな。
「顕現せよ、旧き時代の人類を照らし、今の世の文明の象徴たる炎の化身よ!」
無駄にかっこよく偽詠唱をすることで、信憑性を高める。
俺の周りに炎が吹き荒れ、次第に炎が形を為していき俺の手に、フラムは自分の手を添えながら降りたった。
「喚び声は汝のものか?」
「………は、はい」
炎を纏う紅髪に美しさと可愛らしさをあわせ持つその美貌、更にその起伏の少ない身体は背徳的であり、神秘的な雰囲気を振り撒いていた。
圧倒的な気品と美しさを前に、誰もが言葉を失っていた。
………………何気にルークまでも、
フラムの本領発揮でしたね。
ルークとメリア王女の活躍は将来に期待!




