プロローグ1~テンプレな終わり?~
初めての作品です。拙い部分は微笑ましく見守ってください。
俺は上野 巧、少し手先が器用なだけの高校生だ。そんな俺に人生最大のピンチが訪れていた。
「てめえら、全員殺してやるーーーーー」
男はそう叫びながら目の前でナイフを取り出し、周りを威嚇するようにナイフを振り回す。人々が逃げ惑うなか、俺はそれを男の少し後ろから見ていた。
「ま、マジでか。てか、逃げなきゃ」
俺もその男から逃げるべく背を向けて走り出そうとすると、視界の隅に腰を抜かした母親とその腕に抱かれた女の子が見えた。男はその二人を獲物と見定めたようだ。
(いや、俺には何も出来やしない、無理だ)
(本当にそうなのか?本当に何も出来ないのか?)
俺の耳に自分のようで自分では無いような声が心の底から聞こえた気がした。
そして、俺は走り出す。
男に向かって
(ちくしょーーー、何で俺は通り魔に立ち向かってんだよ、何も出来ないに決まってんだろ、何が本当に何も出来ないのか?だよ)
俺の存在に気付いた男は此方に振り返りナイフを突き刺そうと向かってくる。
(くっそ、こぇぇーーーー?あれ?)
自分に迫るナイフを見て俺はどこか自分の心が冷静になっていくのを感じていた。
極度の集中状態にある俺の目には男の動きがひどく緩慢に見えていた。
(何だろう、あのナイフを今の俺なら捕れそうな気がする)
男と俺の一瞬の交錯の後ナイフを握っているのは俺の手の方だった。
通り魔はナイフが俺の手に有るのに気付くと慌てて此処から逃げ出そうとする。
「ちょ待て、このやろ」
俺は逃げる通り魔を取り押さえるために走り出そうとすると腹部に違和感を感じ、一度立ち止まる。俺が自分の腹部を見下ろすと赤黒い何かがじわじわと服に広がっていく。
ふと、後ろを振り返った俺の目には若い男の警官が震える手で拳銃を握っているのが見えた。
「えっ、何で?」
俺は脚から力が抜けて背中から地面に崩れ落ちた、何故自分が撃たれたのかがすぐには理解出来なかった。
だが、俺の目の前には腰を抜かした母子、そして俺の手にはナイフが握られている。
(あぁ、そういうことかよ、端から見たら俺が通り魔だわ)
本当の通り魔は他の人に取り押さえられながら、此方を驚愕の目で見ている。そして、母子もまた何が起きたのか分からないという表情を浮かべていた。
そして、俺は遠のく意識の中、
(こんな、終わりも悪くないか)
と意識を手放した。
~後日談~
ニュースより抜粋
「速報です、本日午後6時頃上野巧さん18歳が通り魔に間違われて警察官により射殺されました。巧さんはペン回しやドミノなど多くの世界記録を保持しており、中でも50段トランプタワーに至っては彼自身を除けば誰も更新出来ないと言われるほどでした。」
ある有名陶芸家のSNSより
「彼が小学校の時、私の陶芸教室で作った皿は私の師が『お前も遂に儂を越えたな』と私の作品と勘違いするほどでした。」
ある人気ゲームで世界一のプロゲーマーより
「ニュースで彼の顔写真を見て驚きました。以前、偶然訪れたゲームセンターで僕が世界一となった対戦型格闘ゲームで何回対戦しても勝てず格の違いを見せ付けてくれた彼が、こんな形で亡くなってしまい、もうリベンジ出来ないと思うと勝ち逃げされたようで歯痒くもあります。」
彼の死は多くの業界で連日騒がれた。
次の投稿は何時になるかわかりません。