10月の文化祭に向けてロボアニメの歴史を纏める
「部長~ 私ゆ~れ~部員なんだけど?」
「だからどうした絵描きマシーン一号?」
「一号って何さ、他に二号がいるっての? 信じられない! 私だけを愛してくれてるって囁いていながら二号さんも抱えてるなんてサイテーよ! 私がいないと文芸部が潰れるって言ってたのは嘘だったの!?」
珍しい事に本日は文芸部室に2人以上の人がいた。それでも人数は1人増えての3人で、旧校舎にある教室の半分を区切って作られた文化部用の部屋はまだ広い。なので後輩は白衣セーラ先輩と彼女のクラスメイトでありなおかつ幽霊部員として名義を貸している滅多に出てこない幽霊部員な副部長とのじゃれ合いを横目に普段通り小説を書いている。
という訳では無い、テキストエディタの代わりにペイントソフトを立ち上げて絵を描いていた。
「文化祭まで2日しかないのに展示物が仕上がって無いのだ。黙々と作業する二号を見習えー号め……」
「酷い! 僕との事は遊びだったんですね! 副部長と別れてくれるって言っていたのは嘘だったんだ!」
今の今まで描いていたグロ絵を保存し、ダンと立ち上がり副部長に合わせてネタを続けると、ノリノリな後輩の演技に副部長は茶髪と豊満な胸を揺らしながら白衣セーラ先輩から見えないよう親指を立てた。
「お前たち2人は漫才をしたいのか、それとも文化祭のをするのかはっきりしてくれないか?」
「そりゃ、文化祭の準備しながら先輩と遊びたいんです」
「私は部長で遊ぶついでに文化祭の準備してる感じかな?」
その様子に先輩は頭を抱える、現在文化祭まであと2日。しかし文芸部の成果として配布予定、もとい予算を得る為最低限の活動をしているという証明の為に作っている冊子がまだ仕上がっていない。
「もー、いざとなったら去年と同じで10年前の冊子を編集しなおして出せば良いんじゃないの?」
「それをやって今年、予算が半減させられたんだぞ副部長?」
だからと言ってロボットアニメと文芸史の関連という強引なテーマで纏めた冊子が全うな活動として認められるのかは微妙な処で、お笑い芸人の方が有名になったブルーゲイルや主人公が金髪さんからお守り貰って死ぬ小説版が存在する物はまだしもそうでない作品についてまで纏めるのはいかがなものか。
出来ればもうちょっと装って主人公が死亡する初代や、細かいところに差があるZとZZ、ヒロインに大きな差があるνや、原案に近いV、完全に別物な武闘伝、ほぼ本編なW、そしてなぜXに小説版が無いのかといったメジャーな作品と文芸的な要素を織り交ぜた物にするべきだと後輩は進言したのだが。
「けどこれだって取れるかどうか怪しくない? ぶっちゃけ後輩君が上げてた奴の方がまだ文芸部的にはマシな気がするんだけど…… 焼け石に水でしかないけど言い訳の理屈は通るようなきがするなぁ」
「それは、否定できんが嫌だ」
副部長までもがこの無茶な試みを止め安定感のある内容で纏めようと話を進めるが、部長こと白衣セーラ先輩はそれを真正面から否定しながら立ちあがり、芝居じみた動作で拳を握りしめ言葉を続ける。
「確かにGの小説版は素晴らしい、それだけで一つのジャンルを形成しているといっても過言では無いだけの厚みがある。だがロボットの小説はそれだけでは無いし、そのバックボーンであるロボットアニメは更に広い。つまり私の溢れ出る情熱はそれだけを語るには余りにも荒れ狂っているのだ!」
「つまり文化祭の成果物にかこつけてロボットアニメを語りたいって結論ありきで行動してるんですね」
「そ、そうでもあるが……」
突っ込まれてシュンとなる先輩を愛でつつまぁいいですけどと後輩は作業に戻る。それに続くように仕方無いなぁと副部長も作業を再開した。
「まぁ、今日明日泊まる覚悟ならどうにか完成しそうな気はしなくもないですし頑張りましょう」
「確かにねぇ~ けど君はともかく女の子捨ててない私はシャワーを浴びに帰りたいんだけどなぁ~」
「い、いや待て! なんだその物言いは私が女を捨ててるような空気を出しているんだ!」
結局、最終的には上手い事期限までに間に合って10部程刷った冊子を文化部共同スペースの端っこに置いたのであるが……結局例年通り一部も減ることなく、まぁこんなもんだよなと幽霊部員を+1したメンバーで打ち上げをして文化祭は終了。
部費に関しては明らかに例年とは毛色が違って濃い内容に対し生徒会が内容の確認を拒否、最低限の活動実績はあるとして来年も同額の予算を確保出来たのであった。