第4話XⅡん十色
第4話
XⅡん十色
「まさか特殊型が自ら逃げるとは、進化が加速しているな」
本部の会議室で、今野正は頭を抱えていた。アセルデストロイヤMarkⅡの初陣が特殊型を
逃すという結果に終わったからだ。世界が3度経験した特殊型で初めて討伐に失敗したからだ。
一週間たってもこの事は大きくとりあげられ、ネットでは「核兵器が必要」とか「米軍に頼れ」と騒がれた。
会議室には今野玲菜やオペレーターの二人、他にも何人か知らない人がいたが「東京大学生物学教授、五反田明日香」と書かれた名札を付けている
白衣の人だけは認識できた。
「とりあえず、全部説明してくれよ?進化って何ですか?何が起きてるんですか?2台あったなんて聞いてないですよ!」
ペルクスは何も状況を読み込めていなかった。初めての訓練中にいきなり戦わされられ、聞いてもない
もう一台のアセルデストロイヤとその操縦者が出てきたんだからそれもそうである。
その時会議室のドアが開き一人の男が入ってきた。赤いジャケットを羽織った
暑苦しそうなひとである。ペルクスは雰囲気だけで彼が赤いアセルデストロイヤに乗って
いた人だと認識した。
「よ、俺はアポロだ、実は同じ養護施設出身だから覚えていてもいいとおもうんだけどな。」
彼は近くに共通点を持っている人がいて驚いた。しかし彼の周りにこんなひとがいたら覚えていそうな
ものである。自分の親も覚えてないならしょうがないと思った。
「とりあえず、君が乗ってたのはアセルデストロイヤMarkⅡ戦車型だったMarkⅠと足回りは共通の新型、
で僕が乗ってたのはアセルデストロイヤMarkⅡ-red、拡散オルセイン弾を搭載したやつ。
あ、オルセイン弾ってのはアセルドロイドの核を染色するやつね、進化とかはチーフに聞いて」
アポロの早口にペルクスはついていけなかった。話を聞かなかった代わりにアポロという名前から恐らく
自分と出自はそう遠くないだろうと思った。
あと、学校で何度か細胞の核を染色する酢酸カーミンだか、オルセインだか聞いたことがあるな、
と考えていた。彼にじっくり考える暇も与えず今野正が話し始めた。
「通常は何も変わってないが特殊型は進化している。2008年に北京を襲った個体は攻撃をしなかった。
しかし2011年に宮城を襲った個体はレーザーを撃った。今回の個体はこの対策本部を狙っていた。
さらに正四面体、正六面体、正八面体と形も複雑に、緻密になっている。もはや知能があるといっても過言でない。
ですよね教授。」
「ああ、このままだと次の次に正二十面体が現れると考えられる。角度的に砲撃をある程度反射できるだろう。
知能の発達からアセルデストロイヤの特徴まで分析されるかもしれん。実際前回の個体はアセルデストロイヤの
戦いを見て逃げたとも考えられる。」
ペルクスは教授の話が案外難しくなくて安心した。だからこそ、先で来るであろう敵のイメージが具体的になり、
ある意味恐怖を覚えた。その時一ノ瀬オペレーターがパソコンを見て、顔色を変えた。
「緊急警報!緊急警報!ブラジルサンパウロ沿岸にアセルドロイドが出現!特殊型は・・・」
突然一ノ瀬オペレーターの動きが止まり、二宮オペレーターが続けた。
「2、2体同時出現・・・通常型確認無し、レーザー攻撃で町が破壊されています。米軍が向かったようです。」
「なに、2体同時だと?ついに協力をおぼえたか化け物め、1週間でこれほどとは」
五反田教授も驚きをかくせない。
「へ、2体同時に出てきてくれてラッキーだぜ、こいつらやれば、汚名返上して残りは正二十面体だけになるだろ!いくぞ新人!」
町が壊されているのに、なんでこんなことが言えるのだろうか、ペルクスは込みあがる言葉をここで言うべきでないと止め、
急いでブラジルに向かおうとした。
~ブラジル・サンパウロ~
「アセルデストロイヤMarkⅡ、MarkⅡ-red ブラジル国内での砲撃を許可する。今回は私有地でも自国領土でもないため拡散オルセイン弾の
使用は許可しない」
「どうせこんなに町めちゃくちゃなのに」
2台のアセルデストロイヤの前にはそれに立ちはだかるように2体の特殊型、正八面体と正十二面体が浮かんでいた。
アポロはすぐさま銃を正八面体のほうに向け、赤い弾を発射した。
すると正八面体の中心に赤い球が見えた。
2体の特殊型は3mほどの間合いを開けており、拡散オルセイン弾でなければ核の同時染色は不可能だった。
しかし、正が拡散オルセイン弾の使用を許可していない以上、ロックがかけられているため、
アポロはどうすることもできず憤慨していた。
「まずはリベンジからだぜ!オラオラ!」
赤いアセルデストロイヤから弾がいくつも発射され3発ほど正八面体の赤い核を貫通した。
アポロはすぐさま安堵したがその安堵は長く続かなかった。
少し形を崩したと思われた正八面体だが、隣にある正十二面体が近づき、
一つの五角形の面が正八面体の一つの三角形に合わさった。
すると細胞質基質が正十二面体から正八面体に流れ込み、正八面体は形を取り戻した。
その後、二体はレーザーを撃ち始め、ビルを破壊していった。
すぐさまペルクスはアセルデストロイヤmarkⅡを動かしビルへ向かっていき中の人を助けようとした。
「おい新人!どこ行ってやがる!こいつら2体同時にやるぞ!」
「で、でも人が!」
「アセルデストロイヤは人命救助のマシーンじゃない!サッサとしろ!」
ペルクスはアポロの言動にやはり納得できなかった。しかし言われるがまま赤いトリガーを引き、正十二面体に向けて
放ち、染色した核に銃を向けていた。
そしてアポロの合図で同時に発射したが、わずかにペルクスが早く正十二面体の形は一度崩れ、正八面体と合わさって回復した。
「おい、こいつらやらなきゃ新人が助けようとした人も死ぬんだぞ!」
「そうか、そうなんだ!じゃあ、撃ちますよ!せーの!」
2体のアセルデストロイヤが放った弾はそれぞれ正八面体と正十二面体を貫通し、緑色の液体に還元した。
ペルクスはアポロがただのお調子者じゃないことを知って安心した。
彼と一緒なら次に来るべき正二十面体も倒せそうな気がした。