第2話Ⅵでもない運命
第2話
Ⅵでもない運命
あの日から5年が経った。その日から何度も何度もその生物が世界各地の海から
現れ、軍が鎮圧した。防衛費は恐ろしい桁数だった。
幸いあの時の正四面体のような特殊個体はほとんど現れなかった。
たった一度だけそれが現れたのは2011年の4月、日本宮城県の仙台市。
東日本大震災が起き、ただでさえパニック状態だったのに、その生物が現れたのは
大きな混乱を呼んだ。幸いそこには救助のため、自衛隊や各国の支援部隊が大勢いたので
持ち合わせていた非常用武器で人型個体は対応した。
しかしその時の特殊個体。そのときは立方体型だった。それには全く成す術がなかった。
ある程度攻撃したあと、攻撃してこない個体なので攻撃することをやめたが、
その個体はレーザーのようなものを放ち、街を破壊した。
人が死ぬことは何度もあったが、ここまで建物に被害が出たのは初めてだった。
その後米軍が駆けつけ小型新型核爆弾でその立方体を破壊したが、国内での強力兵器の使用は
4年後に被爆70年を迎える、そして何より原発事故の直後で原子力に大きな批判が向けられている日本政府は
それを隠蔽し、特殊個体は通常兵器でも破壊可能。とした。
宮城県で感知された放射線は原発のもの。と発表された。
4年後の2015年、その生物の正体が国際生物学会で明らかになった。
それは「巨大単細胞生物」ということだった。ほとんど構造を持たないこと、半透明の液体、つまり
細胞質基質が膜=細胞膜と壁で囲まれていること、そしてなによりの証拠は体のどこかにある「核」を
破壊しない限りその生物を殺せないということであった。
呼称として「アセルドロイド」と名付けられた。
大きな被害を受けた日本はその生物に対抗する組織「レジスト」を結成した。
防衛省の官僚、今野正をリーダーとし、同じく防衛省であり、彼の妻、今野玲菜を副チーフとする。
他にも東京大学の生物学教授、五反田明日香氏などをも入れた。
最大の凄さはその生物を殺すための新兵器、戦車のようなクローラーに銃を持った人の上半身のロボットがのった
対単細胞生物兵器「アセルデストロイヤ」だった。
しかし、その操縦者は未定だった。