第七話 『ベッドの下』
僕は死月さんの繰ったドールに囲まれて身動きがとれなくなった。死月さんの能力は僕の能力とはとても相性の悪い能力なので僕は出だしができない。
死月『私の手作りドール…とってもかわいいでしょう?』
死月さんは、にんまりと不気味は笑みを浮かべる。普通に怖いと思った。
僕『う、うぅ…』
死月『あれれ?泣かしちゃったかな?』
死月さんが僕に同情したらしくドールの力が一瞬緩んだ。これはいける。
僕『うわぁぁぁん…』
死月『あわわ…ごめん!ごめんってば。』
死月さんが慌てている。そしてドール達の動きが少し遅くなっている。僕はその隙をついて死月さんの首を片手でつかんだ。
死月『わ、わぁ…あれ?泣いてないの?』
死月さんは僕が泣いていないことがわかるとドールをまた繰った。これはまずい。
僕『能力を停止してください。』
死月『なんで?』
僕『停止しないのなら…あなたの水分を奪いますよ?』
僕の能力は『水分を奪う』。接近戦ならとても良い能力。
死月『ひ、ひぃ…そんなことしたら私死んじゃうじゃん。やめる。やめるよぉ。』
死月さんは落ち着いたらしくベッドに腰を掛けた。僕は隣に座った。
死月『驚かせちゃってごめんね。興奮しちゃってた。』
僕『だ、大丈夫ですよ。』
死月さんは能力を使って疲れたらしく眠り始めた。僕は部屋から退散しようとドアの前に立った。
ガタッ…ガタッ…
僕『あれ?おかしい…ドアが開かない…』
そういえば僕が部屋に入った時に死月さんは妙な行動をしていた。もしかして鍵をかけていたのか。
僕『う…』
僕は死月さんが起きるまで部屋で暇を潰すことにした。本当はこんな気味悪い部屋から早く出たいところだったが、死月さんが気持ち良さそうに眠っているので邪魔してはいけないと思った。
キラッ☆……
ベッドの下で何かが反射して光った。
僕はベッドの下を覗いた。僕はギョッとした。ベッド下もドールでいっぱいなのだ。そしてさっき反射して光った物の正体は『ナイフ』ということがわかった。
僕『ん?…これって…』
僕はベッドの下のドールの中のひとつのドールに見覚えがあった。
赤いあめ玉のような眼…赤いウサギのようなリボンカチューシャ…赤いスカーフ…黒いポンチョ…水色で長くてバサバサした髪…露出狂……のドール。
僕『これって……やっぱり……マスター……?』
僕の声は震えていた。そして後ろに嫌な気配を感じた。
死月『ねぇ…何を見ているの…?…』
僕『う……ごめんなさい…』
死月『だから…何を見ていたの…?』
僕『マスターみたいなドールがあったのでそれを…』
死月『あ、あああああああああ!』
死月さんは大声で叫んだ。そして『恥ずかしい』と連行し始めた。
僕『わ、わぁ……べ、べつに引いてませんので平気ですって。』
死月『うわあぁぁぁぁん………コケになりたい…』
僕は死月さんを慰めてから死月さんに鍵を開けてもらい部屋から出た。
つづく
少林奏 時刻: 19:41