短歌を書く時
ボクは、途方に暮れて上を見上げる。
見えるのはシミのついた天井以外ないと分かっていたのに、それが目に入った瞬間になんとも言えない徒労感に囚われる。
――なんでこんな歳にもなって短歌だなんて・・・・・・。
見飽きた自分の部屋の風景と真っ白なままの紙にゴリゴリと気力を削られもう滅入ってしまいそうだ。
――それもこれもアイツのせいだ・・・・・・。
頭に浮かんだ憎たらしげな笑みにダイナマイトを投げつけつつくたびれたベッドへと身を踊らせる。
ボクの入ったサークル、
黄昏研究会は研究会と名を冠しているにも関わらず特にサークル内容が決まっていない珍しいサークルだ。
毎回の集合日に順番でやる事を決めるサークルとはもはやいえないモノなのであるが・・・・・・。
――まさかサークル長が短歌だなんてモノを選ぶとはね・・・・・・。
三十二回目の集合日、
我らがハ〇ヒたる彼女は第一回でツチノコ探しを敢行する位にアレな性格で、
今回は伊右〇門のお茶のペットボトルをウチのテーブルに叩きつけつつ、
こう宣いなさったのだ。
「今回はみんなでここについてる短歌のコンテストに作品を出すわよ!」
――通称ゲロブタ君が前回王様ゲーム(酒入り)をやった時のアイツのコスプレ赤面写真、どうしたのかな・・・・・・。
だなんて思っていたらいつの間にか川柳コンテストに短歌を出すハメになっていた・・・・・・わけだ。
――訳が分からないよ
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こうして、押し付けられるように春を担当する事になったのだが、急に思いつくはずもなく・・・・・・。
――外、歩いて考えるかな・・・・・・。
秋真っ盛りの町並みを春だと錯覚するように努力をし、黄色や黄緑色が風景の上に乗ったのを確認して歩き出す。
――今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春今は春
ゲシュタルト崩壊しそうなくらいに頭に言い聞かせて幻視を保って近くの川原まで行くと、小さな白い蝶達が舞っている。
幾匹かで固まって遊んでいる姿を菜の花を幻視した斜面で愛で、短歌を考える。
――あっ。
一匹がバランスを崩してひっくり返ってしまった。
他の蝶たちが集まって、その蝶を助けようとする。
その時、花びらの隙間からそれの真理が垣間見える。
――白か・・・・・・。
「うし、書くか!」
少し戻った気力がまた削がれる前に、と家に駆け戻り机に向かう。
「陽だまりの
ぽかぽか温い
散歩道
咲くはアブラナ
舞うは白
っと。」
我ながらよく出来た、と紙を誇らしげに折りたたみしまい込む。
いい光景を見れたのと乗り気でなかったものからの開放にボク・・・棍後利口はいつの間にか清々しい気分に変わっていた。
「たまには乗り気でないことをするのも悪くないな。」
そうつぶやいて何時もの日常へと回帰していった。
棍後利口→(口以外平仮名に)→こんごり口→(濁点と初めのこを抜く)→んこり口→(ひっくり返す)→口りこん→口リコン
これを踏まえて読んでみると何か切り開けるかも知れません。