表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

スタートライン

作者: 彼方

 僕には結局、何ができるんだろう?

 ふと喫茶店でコーヒーを飲んでいる時に、そう思った。僕は学生時代にやりたいことなんて特にないのだけれど、無為に過ごす気にもなれない。何かがしたい。でも、何ができるかわからない。

 ふっと溜息を吐き、椅子に深く寄りかかった。大学一年生になったばかりで、まだサークルへどこに入ろうか決めていなかった。アルバイトも始めていないし、まだスタート地点に立ったばかりだ。

 僕は試しに高校時代の友人に今どうしているか聞いてみることにした。

 今どうしてる? とメールを送った。

 そこでウェイトレスが前を通り過ぎて、心地良いコーヒーの香りが漂ってきた。僕はコーヒーの二杯目を頼むことにした。

 ウェイトレスを呼んで注文を済ませると、メールが返ってきた。そこにはこう書かれていた。

 俺、音楽始めたんだ。ギターをやりだして、友達と駅前で弾き語りしてる。

 僕はしばらくそのメールを見て、言葉を失っていた。あの内気で言葉少なである友人が人前で歌っているなんて、信じられなかった。

 どうして突然? と送ると、彼は淡々と答えを返してきた。

 俺は今の自分を変える為には何ができるかと考えてみたんだ。そしたら、一番やりたいことをやって、頑張って、色んなことを吸収すべきなんだ、と気付いたんだ。

 こんな真面目な答えが返ってくるとは思わなかったので、しばらく新しいコーヒーが運ばれてきたことにも気付かなかった。

 僕はコーヒーを一口飲み、彼に「ありがとう。今度聴きに行くよ」と返事を送った。

 そして、再び椅子に寄りかかって考える。

 僕にできること。それは、僕が一番やりたいと思うこと。

 僕は一つうなずいて、コーヒーを運んでいるウェイトレスの背中を見て、この喫茶店でコーヒーを運んでいる自分の姿を思い浮かべた。

 ふっと微笑み、携帯でアルバイト情報サイトを開き、読み出した。

 とりあえず、コーヒーの香りを感じていたい。そう思うのだった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ