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永遠に  作者: 月島裕
2/5

別れの夜

叔母「竜…」

竜「おばちゃん…ゴメン何も手伝わなくて……」

叔母「大丈夫だよ…夕方ぐらいから通夜になるから二階で少し休んでなさい。」

竜「大丈夫…少しでも裕の側に居たいから……」

叔母「そう……」


裕と俺は産まれる前から一緒だった

母親同士が姉妹っていうのもあって今の家に引っ越す前は二軒挟んだ先が裕の家だったからだ

俺が産まれる4ヶ月前に裕が産まれた

だからからかな一緒に居るのが当たり前だった

遊ぶのも寝るのも出掛けるのも一緒だった

側に居ないのが不思議な感じで…

俺が不安定な時も黙って側に居てくれた…

俺はアイツに何かしてあげられたのかな…


竜「裕…俺はどうすればいい?これから…どうやって生きてけばいいのかな……」

泣いても泣いても涙は枯れる事なく流れ続ける



母「竜、こっちに来てお茶でも飲みなさい」

竜「いらない…側に居る………」

母「あんたが、そうやってたら皆困るんだからね!いいから一回来なさい」

竜「分かったよ……」

おかぁの言ってる事は分かる

皆、裕とお別れをしなきゃいけないんだよな…


婆「竜、ご飯は?」

竜「食べたくない……」

婆「ばぁちゃん作ってやろうか?竜は、ばぁちゃん作ったのなら食べるでしょ?」

竜「ありがとう…でも今はいらないや……なんか食べる気しない……」

婆「そう……」

叔母「竜…裕の事怒ってるの?」

竜「怒ってもしょうがないよ…もう…」

叔母「……」

竜「でも、俺が暴走族に入った時……叔父ちゃん俺の事殴ってまで止めたのに……なんで裕の事ほっといたんだよ……なんで……自分の子供じゃん……」

叔父「俺も止めたんだ、殴ってもキレても…アイツは俺の話し聞いてくれなかった……」

竜「なんで俺に言ってくれなかったんだよ!」

叔父「こんなんでも親だからな……自分で止められるって思ってたんだ……もう手遅れだけどな……」

竜「うっ……ゴメン叔父ちゃんもおばちゃんも辛いのに……本当にゴメン……」

その後、叔父ちゃんは一言も話さず裕の側で酒を飲んでた

そんな責めるような事言うつもりなかったのに…

自分の幼さが嫌になる……



裕は親戚の誰からも好かれていた

優しい性格で活発、おばちゃんを誰よりも大切にしていた

叔父ちゃんは酒を飲むと暴れるタイプだったようで殴らる、おばちゃんをいつも守っていたみたいだ

そんな事も、ずっと知らずにいた

アイツが死んで初めて聞く話しが多かった…

俺に知られたくない事がたくさんあったんだな…


結局、俺は自分の事を優先し過ぎていて思いやってあげられるほどの器がなかったんだろうな……

裕……俺は……



母「竜、今から葬儀屋さんが来て通夜の準備するから手伝ってくれる?」

竜「分かった…」

叔母「竜、裕の写真選ぶから一緒に選んでくれる?」

竜「うん」

叔母「写真、いっぱいあるから悩んじゃうねぇ…」

竜「叔母ちゃん……今聞く事じゃないかもしれないけど……」

叔母「何?」

竜「なんで裕は事故にあったの?…」

叔母「十字路の交差点あるでしょ」

竜「うん」

叔母「あの交差点を右折した瞬間にトラックに跳ねられたみたい…トラックの運転手は裕が信号無視をして右折してきたって言ってるんだけど……他に見てた人が裕の方の信号機は矢印出てたって……トラックが急に車線越えてきたって……死人に口なしってね……」

竜「………」

叔母「ヘルメットも被ってたんだけど無免許…特効服……裕の方が悪くなるのは当たり前なんだよね……」

竜「……そうなんだ……ゴメン……」

叔母「そんな事ないよ……叔母ちゃんも止めなかったから……今も出て行く裕の姿が目に浮かぶ……目覚ましにつけてた、曲が聞こえてくる……後悔しかないんだ……」

竜「叔母ちゃん……」

叔母「私はダメな母親だったんだ…」

竜「そんな事ないよ!裕は叔母ちゃんを大事に思ってた!ダメなんかじゃない!ちょっと息抜きが過ぎたんだよ……」

叔母「ありがとう……少し気持ちが楽になった……」

竜「気の利いた事言えなくてゴメンね……」

叔母「そんな事ないよ……竜が居てくれて嬉しい…早く写真選ばなきゃね…」

竜「うん……」 


二人で選んだ写真は五枚だった

笑顔の写真


葬儀屋さんが云うには歯の見えてる写真はダメらしい…

笑顔でも歯が見えてるのはダメ…

意味を言われたけど覚えてない…


結局、中学校の卒業写真に決まった


今思うと、この頃が一番楽しかった

お互い夢もあった

裕は小さい頃から野球が好きで野球選手になるのが夢だった

人一倍、努力して腕のいいピッチャーだった

高校に入ってから妬まれ毎日殴れたらしい…

そのせいで肩を壊した

夢を失いやけになり暴走族に入ったと……


裕が亡くなり初めて聞く話しばかり…

俺には勉強についていけない

つまらないから辞めたと笑ってた


今更、聞いても何も出来ない…

俺がそいつらぶっ飛ばしてやったのに…


裕は自分の夢のためにただ、ひたすら我慢してた…

肩が壊れたと解ってから暴力沙汰をおこしたのが原因で退学…

裕は人に弱みをみせない奴だった

俺にでさえ


叔母「竜、そろそろ始めるらしいから来なさい」

竜「はい」


見たことのある連中

そして地元の友達たち

亡くなったと聞いて泣き崩れ倒れる奴


俺には理解出来ない…

一番辛いのは叔母ちゃんや叔父ちゃん、弟たちだろ?

なんでかな…

俺は歪んでる…

そこまで慕われる人間が裕…


でも、そんな奴ら見たくない…

悲劇のヒロイン気取りがって思ってしまう…

俺…本当やな奴だな…


叔母「竜、裕の部屋で休んでなさい。皆帰ったら呼ぶから」

竜「……分かった…ごめんね…」

叔母ちゃんは俺の醜い気持ちに気付いたのかな…

それに比べて彼女は1人、1人に優しい言葉をかけてた

裕が選ぶ訳だ…


俺の彼女の美紀は違った…

美紀「本当は会いたくないからうそついてるんでしょ!」

竜「なんで、そんな嘘つかなきゃいけねぇの」

美紀「他に女いるんでしょ?!」

竜「お前うぜえ…もういいよ」

電話を切った後も、鳴り続ける電話…

そしてメール……

今は、そっとしといてくれ…


俺は女見る目もないんだろうな……



母「竜、どうかしたの?声が響いてたよ」

竜「バカ女から……意味分かんないから疲れた…」

母「ほっておけばいいんじゃない?それより、そろそろ通夜終わるから降りてきたら?」

竜「うん…」

母「何かあったの…?」

竜「俺…歪んでるから…」

母「何が?」

竜「なんかさ…皆が泣いて話しかけてくるんだけど、悲しさの競争みたいに見えてきて…正直うざかった……」

母「まだ、子供だからじゃない?皆。大人びていても、やっぱり子供なんだよ」

竜「かもな…俺も…」

母「嫌でも大人になるんだから」


さすが母親だよな…

俺をなだめるのが上手い…


婆「竜少しは休めた?」

竜「いや…電話がうるさくて……」

婆「まぁ無理もないね……明日、火葬になったんだ」

竜「あっそうなんだ……俺よく分かんないけど…早くしなきゃいけないんだね」

婆「時期もあるんだけど…最近暑いでしょ。遺体の傷みが激しくなる時期だから…日にちもあるし…」

竜「そうか……なんか夢の中にいるみたいで……」


ガチャ


姉「裕は……」

県外に行ってた姉貴が車飛ばして帰ってきた

婆「由里…危ないから、ゆっくり帰って来てねって言ったでしょ」

姉「だって……事故ったったって……」

叔母「裕…即死だったの……」


姉貴の泣き声が響き渡り皆泣いた…

俺は頭が痛くてクラクラしてた…

画面が揺れる…あっこれは夢だったんだ……


姉「竜!」


俺は、そのまま倒れたらしい…

疲れと寝不足


そして気付くと次の日の朝


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