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 色々と忙しい。

 ギルにも会えない。

 たまたま学園に顔を出していた時にギルがいなかったりもする。

 ギルの顔を見ていないってさびしい。ギルと次に会えるのはいつになるだろうか。そんなことを考える。

 ギルのいる場所に行く事は簡単だけど、それだと色々めんどくさい事になる。婚約者がいるからほかの異性と仲良くするのはやめた方がいいのだ。

 そういう婚約者が居なければ、ギルと遊んだり、話したりするのが今よりも楽なのに。

 ギルと会えないのはさびしいなって私は我慢しているのに、ナグナ様は割とそういうこと考えていない節もあるから、なんだかなと思ったりもする。

 ウッカの噂は悪い方向にいっているらしい。

 嫌がらせもだ。

 本当に危険なものはヤーグたちが止めてくれているけれど。

 細かな嫌がらせの犯人もちゃんと見つけられていないって、ナグナ様たちは案外あんまりそういうのが得意ではないのだろうか。正直ウッカの周りにいるのは権力者で人気者ばかりだという事だからそういう犯人を見つけるぐらい簡単に出来そうなものなのだけれども。

 そういえば、違法な薬を売りさばいていた連中はとらえるか、殺すかをした。

 サンティーナ様とイサート様にも感謝された。それなりに広範囲にわたって行動していて、この国に薬をばらまいていたようだから。

 まぁ、私の場合『魔女』の一族が味方にいるからそういうのの対処がしやすかったというのもあるのだけれども。

 そういえば、一つ心配があることがあるとすれば、大ババ様が不調だという話だ。

 大ババ様はそれなりに年がいっている。正直、どうなるかはわからない。ムナとフラリもその話を聞いて大ババ様の元へ行きたがっている。

 ……ウッカが大変な時期だけど、フラリに大ババ様の元へ向かって欲しいとは思っている。もちろん、ムナにも。そして私も大ババ様を見に行きたい。

 手遅れになってから会えなくなったでは遅いから。

 会えるうちに会う。

 人は何時死ぬかなんて見当もつかないのだから。

 時間を作るのは難しかった。

 先にムナとフラリにいってもらった。

 私は、どうにか時間を作った。

 ――――そして大ババ様の最期に立ち会えた。

 大ババ様は、ベッドの上で私を見て笑いかけてくれた。

 泣き出したくなった。ここには多くの『魔女』の一族が居るのに。

 涙をこらえた。

 「エリザベス様……」

 大ババ様は私の名を呼んだ。

 大ババ様は、私に色々な事を教えてくれた。『魔女』の一族の代表で、優しいこの人の事が私はすきだった。

 誰かが亡くなる事は悲しい事で。

 もう二度と話せなくなる事は苦しい事で。

 だけど、誰も大切な人を失わずに生きていくなんて無理で。

 寧ろ私は奪う側にだって回らなければならなくて。

 「----『魔女』の、一族を、頼むよ」

 それが最後の言葉だった。大ババ様は、私に頼んだ。私を信用して、頼んでくれた。それが嬉しかった。

 大ババ様がそんな風に私に任せてくれたことが、嬉しかった。

 だけど、大ババ様は亡くなった。大ババ様は―――、もう笑いかけてくれない。

 大ババ様は、朗らかな笑みで、眠るように亡くなっていった。

 周りは誰もが泣いている。

 『魔女』の一族の皆は大ババ様を慕っていた。

 私だって、大ババ様が大好きだった。

 当主を継いで、忙しくなって大ババ様にあまり会えなくなったけれど、でも、大好きだった。

 だけど、私は涙を流さなかった。

 どうしても我慢してしまう。

 人前で泣いてはいけないと、自制してしまう。

 「----まかされたわ」

 私はただそれだけを告げた。あとから聞いたけれど、私はいつもと変わらない様子を浮かべていたと。ただ大ババ様をまっすぐに見ていて、大ババ様の頼みを聞こうとしていた事はわかったとそんな風にムナがいっていた。

 ギルに会いたいなと思った。

 涙を流せたら、思いっきり本音を口にできたらとそんなことを考えていた。

 ―――でも、会わない。

 私はナザント公爵家の当主で、第三王子の婚約者だから。私は私の立場のために、周りに醜態になるようなことはさらしたくないし、付け入る隙を与えたくないから。

 大ババ様が亡くなったことで『魔女』の一族の中でもごたごたがあったけれど、それはムナたちがどうにかしてくれた。正直助かった。大ババ様に頼まれた『魔女』の一族が大変なことになるのは避けたかったから。




 そうして大ババ様の件で色々あった後、私はヤーグから「嫌がらせがエリザベス様のせいになっている」というそういう話を聞いた。





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