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ウッカに久しぶりに会った。それは夏季休暇の事である。
久しぶりに見たウッカは、前に会った時よりも大人になっていた。正直驚いた。ウッカはいつまでも子供のようなイメージだった。ウッカに失礼かもしれないけれど、ずっとそんな風に考えていた。
でもウッカは大きくなっていた。大人っぽくなっていた。
中等部の二年生なのだから、これからもっと大人になっていくのだろう。
「お姉様………」
ウッカは私の方を見てつぶやいた。
私を見て表情をゆがめている。ウッカの隣にはルサーナと、フラリもいる。それだけじゃなく、ウッカにういている使用人たちもいる。
可愛い。
どんな表情を浮かべていようともウッカは可愛い。
史上最高に可愛い。
可愛い可愛いウッカをこうして視界に留められるだけで嬉しかった。
だけど、そんな本音は口に出さない。
「ウッカ」
私は言うことがあった。
「ナグナ様たちとあまり仲良くするのはやめなさい。中等部の貴方が高等部に顔を出すのはしない方が良いわ」
そんな風に言ったのは、中等部では友達が沢山いるウッカだが、高等部に顔を出すことでナグナ様たち人気者たちに憧れている女子生徒たちに疎まれているという話を聞いていたからだ。
正直ナグナ様たちもウッカも何を考えているのだろう? とそんな風に思うけれど、とりあえずそういう事をなくすためにはウッカが高等部に顔を出さないことが第一だろう。
「お姉様は……、嫉妬をしているの?」
「……そんなものしていないわ」
なんだかよくわからない事を言われた。寧ろ私はウッカと仲良くして、ウッカを間近で見ていられるナグナ様に嫉妬しているよ。
私はあえてウッカを突き放していた。
ウッカの事を私はよく知っているけれど、ウッカは私の事はよく知らないだろう。
ウッカは、私の事をどんなふうに考えているのあろうか?
「ウッカ、ナザント公爵家の令嬢として相応しい振る舞いをしなさい」
私はそれだけいって、ウッカに背を向けた。
これでウッカが少しぐらい自重してくれたらいいなーって思っていたわけだけど、寧ろ悪化したらしい。
私が学園に行けていない間に、ウッカは益々ナグナ様たちと仲良くなっているだとか。
本当に危険なものはヤーグたちに対処してもらえばいいだろう。あとは、ウッカの周りにいるらしいナグナ様たちがどうにかする事だろう。それに少なからず自分で対処できるようになっていた方がいいかなと思っている。
私はウッカを守りすぎていたけれど、ナザント公爵家として教育はウッカに施している。
私は厳しい先生が良いといったからクラウンド先生に様々な事を教わったけれど、ウッカは普通に過不足がない程度に教育係がつけられていた。
「……エリザベス様、ウッカ様の事どうするの?」
「様子見ね」
猫人の奴隷のケルの言葉にそう答える。
とりあえず様子見だ。学園内の事は多分なんとか出来るだろう。大体ナグナ様たち権力者たちがウッカを守っているようだから様子見をしていても問題はないと判断した。
学園には数えられるだけしかいけいていない。
いった時にはウッカの噂も聞いた。色々嫌がらせはおこっているらしい。心配になる。
ヤーグとルサーナとフラリが居るからなんとかはなるだろうけれど。
ウッカの事も心配だから、夏季休暇が終えたあと学園にそこそこ通いたかったのだけど、夏季休暇中に違法の薬を所持している組織を見つけて殲滅しにいったり、ナザント公爵領内でよからぬことを企んでいる一味が居たりとかいで、色々ばたばたしていた。
それは夏季休暇が終わったあとも続いていた。
「次はこっちを――」
「あそこは」
支持を出していく。
そうこうしている中で負傷者も勿論出た。私の命令によってそういう負傷をするってそれは何とも嫌だった。でも、私は自分で戦う術など持たないのだから誰かを使うしかなかった。
痛ましい顔をした私に、彼らは言った。
「そんな顔しないでください」と。
「好きでいう事を聞いているのだから」と。
そんな風に言ってくれたことが嬉しかった。
そういう信頼関係を築けている事が嬉しかった。一から私が育てた子たち。最近配下に加わってもらった人もいるけれど、私についてくれる子たち。
協力し合って、領地をよくしていけることも嬉しかった。
つながりが深くなっていくことが嬉しかった。
誰も死なせないように、一心に指示をだした。だって下手をすれば死人が出るような案件だったのだから。
何の犠牲もなしに、何かを手に入れる事は難しい。
だけど、私が望むのはそれなのだ。
最低限の犠牲。本当はそれも出したくないけれど、それは難しくて。
でも、それでも私は理想をかなえたかった。
日記を今日もつける。
色々な思いを書いた日記を。




