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 「エリザベス様、おめでとうございます」

 「エリザベス様」

 「ご祝福申し上げます」

 パーティーが行われている。それは、私の十七歳の誕生日を祝うパーティー。もう、私も十七歳になる。

 時間が経つのははやい。

 もう高等部の二年生。でも、高等部にはほとんど通えていない。学園に通うよりもしなければならないことが沢山あって、領主としての仕事ばかり優先してしまう。

 誕生日のパーティーは、私が領主であるのもあって盛大に行われている。領主を継いでから色々頑張って、パーティーに参加する貴族たちも増えている。色々頑張った結果だと思うと嬉しい。

 隣にはナグナ様がいる。

 ナグナ様は仮にも私の婚約者なのだから、エスコートはしてくれる。でも不機嫌そうな顔をしている。私を見つめて何か言いたげな表情を浮かべている。

 だけどパーティーの最中だからか、下手に何かを言う事はない。

 パーティーにはギルも来ていた。

 久しぶりにギルを見た。

 「おめでとうございます。エリザベス様」

 「ありがとう」

 公の場で、私の方が身分が上だから他人行儀でなんだか嫌だった。本当は、『おめでとう、エリー』って、笑いかけてほしい。

 昔みたいに、「ありがとう」って笑って、そして二人でのんびりできたらいいのにと思う。

 でもたとえ、あまり会えなくてもギルとの間に距離が空いたとかそういう風には全然感じられない。あんまり会えなくても、何かあっても、ギルはギルだって、ギルはそのままでいてくれるってそういう安心感が不思議と私の中にはあって。

 ギルを見ていると安心できた。少しでも会話できて、嬉しかった。

 久しぶりに会って、ただおめでとうと言われただけだったけれど、それだけでこれから一年頑張れると思った。

 ナグナ様は、結局何か言いたそうな顔をしていたけれど、私に何か言う事はなかった。でも代わりに私の事を見ていた。私がどういう行動をしているかとかを見ていたみたいだ。正直よくわからない。ウッカと仲良くしているみたいだし、何かしら思うことがあるのかもしれない。


 誕生日パーティーが終わり、一息をつく。


 家では私宛の誕生日プレゼントが大量に溢れていた。ナザント公爵である私には、正直あまりかかわりのない貴族からもそういうものが届く。

 ギルからのプレゼントもあった。髪飾りだった。

 ナグナ様からの義務的に選ばれたであろう花束もあった。

 そして、平民の昔交流を持っていた人たちからのものもあった。………領民からのプレゼント。そういうのももらえるのは嬉しい。私はナザント公爵になって、ただのエリーではいられなくなって、会うことも笑い合う事もなくなったけれども、こうしてつながりを感じられるのが本当に嬉しいと思った。

 誕生日というものは嬉しい。

 おめでとうと祝福してもらえるのは嬉しい。

 十七歳になった私は、前よりも成長しているだろうか。お父様のような良い領主に近づけているだろうか。そういう疑問は次々とわいてくるけれど、近づけてくると信じて前に進み続けよう。

 ウッカも、今年十四歳になる。

 あんなに小さかった私の妹が、もうそんな年になる。

 「……今年も、頑張らなきゃ」

 高等部を卒業すれば、このまま何も起こらなければ私はナグナ様と結婚する。それは昔から決まっていること。別に不満はない。

 それは本心だ。

 でも、結婚してしまったら益々ギルと会う事は出来なくなるのだろうか。それを思うと何とも言えない気分になった。

 昔は何も考えずに、ただ笑いあえた。

 何も考えずに、ただ楽観的に生きていられた。

 でも、私は成長して、少しずつ大人になって、色々な事を知って、楽観的に待っているだけじゃダメだって事を実感した。

 「ナザント公爵領をもっとよくするために頑張らなきゃ」

 そうつぶやきながら、ウッカからのプレゼントをあける。律儀に毎年ウッカは、私に誕生日プレゼントをくれる。凄く嬉しい。ウッカは本当に可愛い妹だ。

 ウッカがナグナ様たち一行と仲良くしていて、高等部の中でウッカに不満を持つ者も増えてきているらしいと聞いた。人気者と仲良くすればそれだけ代償が伴う。

 殺すとか、そういう危険以外はウッカや周りで対処できるだろうから、放っておいてもらうようにしようと思った。だって、守りすぎても、甘やかしすぎてもダメだって最近思っているから。私はすぐ、可愛いからって妹を甘やかしてしまうから。

 ……私も妹離れをしなければならないのかもしれない。出来る自信はないけれども。可愛がり過ぎて、守りすぎてもウッカがダメになりそうだし。

 「……でもウッカが危険な目に合わないように、死なないようにはしなきゃね」

 ウッカまで亡くなったら私は耐えられる自信がない。何があっても、私の持てる全ての力を使って、やっぱり守り抜きたいと願ってしまう。




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