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 「エリー、来てくれたんだね」

 第一王子であるイリヤ様は、そういって微笑んだ。この場には、サンティーナ様たちも居る。

 イリヤ様は、私よりも五歳も年上で、今年21歳になる。国王陛下であるイサート様がまだまだ現役なので、王太子のままであるが、いずれイサート様が国王の地位を退位すれば、彼がこの国の王となる。

 イリヤ様も、ヒロサ様も、サンティーナ様もこの場にいるけれど、ナグナ様の姿はこの場にはない。聞いてみた所、ナグナ様は「エリザベスもいるのか」といって、出かけていったらしい。

 「ごきげんよう。イリヤ様」

 お父様が亡くなって、私はただの小娘で。だけど、そんな私がなんだかんだでやっていけるのは、王家の人たちの力添えも理由だ。感謝している。

 ナザント公爵家は王家と親しい家で、そういう認識があるからこそ、家に手を出せないものも多くいるだろう。私は恵まれている。

 周りの環境がなければ、私はお父様が亡くなったあと、こうして前に進むこともできなかっただろう。誰も力を貸してくれる人が居なかったのならナザント公爵家であっても、潰されていたかもしれない。

 誰も助けてくれないからって理由で腐る人間は幾らでもいて、私もそうならなかったとは断言は出来ない。少しでも何かが違ったら、私はナザント公爵としてこの場に居なかっただろう。立場を追われて大変な目にあっていた可能性だってある。

 上に上がるのは難しいけれども、転落するのは簡単なのが、人生なのだ。

 「---それで、どのようなご用件でしょうか?」

 王家の護衛の騎士たちや、私の護衛の配下の者たちは部屋の外だ。

 「エリー、イリヤにそろそろ正式に伴侶を探してもらおうと思うの。この年までそういう相手がいないみたいだから、後宮を作り、それで王妃となる娘を選んでもらおうと考えているのよ」

 「後宮ですか」

 今の国王陛下であられるイサート様の妃は王妃様だけだけど、歴代の王の中には後宮から正妃と何十人もの側妃を持っていた王も居る。王家の血は閉ざしてはならないものだ。王家の血がつながっていっているというのが重要で、それを閉ざさないためにも妃を多く持つ事を許されている。

 「ええ。それでね、エリー。後宮に入れる令嬢たちについて貴方の意見を聞こうと思ったの」

 にっこりとほほ笑んでサンティーナ様はそういった。

 「それとウッカを後宮に入れたらどうかという話も出ていてな。意見を聞いておこうと思ってな」

 続けて言われた言葉に驚いた。それと同時にああ、そうかと思った。ウッカも今年十三歳になって、貴族社会では政略結婚をしてもおかしくはない年なのだ。私の妹。ナザント公爵の妹という地位なのだから、婚約者も居なければ後宮の話が出てもおかしくはない。

 「いえ、それは出来れば辞退させていただきたいです。ウッカは後宮でやっていけるような子ではないですし、姉として私はそういうのは認められないです」

 年の差とかは、八歳ぐらいなら別に問題はない。大人になれば変わらない。でも、ウッカの性格からしてやっていけない。それでは可愛いウッカが幸せにはならない。なら、認められない。

 ウッカが「私は上に上がりたい」とか「正妃になりたい」とかいう願望がある子だったら別に送り出すんだけど。いや、そもそもウッカがそういう子だったらもう少し色々と事情が変わってたことだろう。

 サンティーナ様たちは、私の言葉に、

 「やっぱりそういうと思ったわ」

 「だよな」

 とそんな風に答えた。

 私がなんて答えるかぐらい想像はできていたらしい。

 「はい。ですから、ウッカを後宮に入れようという動きは断らせていただきます」

 「了解。まぁ、俺もウッカを妃とかには見れないしな。ウッカを後宮に入れたらどうかといってきた奴にはナザント公爵が断ったといっておけばいいか」

 王族――特に王太子は絶対に結婚しなければならない。子を残すことも王の義務ともいえるのだから。

 王家は、貴族よりも断然責務が多い。やっぱりそういう苦労する場にウッカを放り込むのは無理だ。

 「はい。お願いします。それで、イリヤ様の後宮に入れるべく令嬢ですが、現在はどのような候補が?」

 私に意見を聞いてくれているのだから、きちんとお世話になっているこの方たちにこたえたかった。

 それからどういう令嬢が候補に入っているのか聞いて、ほとんど私の主観だけれども、意見を述べるのだった。





 帰りがけに、ウッカの結婚について色々考えた。ウッカを幸せにするためには、どういう相手ならよいのだろうか。




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