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 パーティーが始まった。煌びやかな世界がそこには広がっている。だけれども、私はこの貴族社会が煌びやかなだけではないって知っている。知ってしまった。

 優しいだけの世界なんてありえなくて。

 キラキラしたように見えた世界も、完全に綺麗な世界はありえなくて。

 だけれども、汚いだけでもない。そういう世界。そういう現実。私はそういう、世界で生きている。

 エリザベス・ナザント――――ナザント公爵家の当主として。

 パーティー会場に顔を出した。そこには、沢山の王族・貴族がいた。自国の王族だけではなく、他国の王族も見られる。

 緊張する。

 とりあえず、主催者である国王陛下と王妃殿下に挨拶をする。そして、順番に声をかけていかなければならない。

 「エリザベス・ナザントと申します」

 そういってあいさつ回りをする。ミスを犯してしまわないか不安だけれども、そうやって回った。

 一通り挨拶が終わって、一息をつく。

 この場にいるのは、当主ばかりで、私の年頃の人間はあまりいない。給仕のものから受け取った飲み物を口に含む。

 視界の中に、入ってきたのは給仕の中に紛れているウェンが入った。

 それに少し安心した。

 私はこの場に一人なように見えて一人ではなくて、私には少なからず味方がいて、そのことが、こんなにも心強い。

 大丈夫。頑張れる。

 不安は沢山あるけれど。色々といっぱいいっぱいだけど、それでも私はナザント家の当主なのだから。胸を張って。堂々と。この場でやりとげる。

 そうしていれば、声をかけられた。

 それは先ほど挨拶をしたばかりの隣国の王子様だった。私は慌てて礼を取る。

 「そんなにかしこまらなくても良い。それよりもその年で公爵家の当主をしているとは――」

 そういって、王子殿下が、クィア様が口を開く。

 私がこの年で当主なんてものをやっているからか、興味を持たれたらしい。その目には敵意などはないように見えた。尤も私から見てそう見えただけかもしれないけれど。

 王族なんて存在は私たち貴族以上に自身を隠して生きなければならない。貴族よりも王族は上の存在でそれだけ、気を使って生きていかなければならない。

 そういう存在。

 それが王族。

 だから目の前にいるクィア様も実際は私に対して良い思いを感じていないのかもしれない。

 それを考えると、ナグナ様は王族としての自覚がないというか、第三王子という立場もあって、多分、甘やかされているのだろう。

 ナグナ様は王位継承権も低く、よっぽどのことがない限り王位を継ぐなんてありえない。だからこそ、ああして自由で居られる。

 ああして、感情を表に出していられるのはナグナ様が第三王子であるからなのだ。尤も本人はそういう自覚はなさそうだけれども。

 クィア様とは割と平穏に会話が交わせた。初対面だから当たり障りのない言葉ばかりだったけれども、私はクィア様に好感が持てた。

 それからクィア様と別れてひとりになった時、カートラが接触してきた。

 不穏な動きがあるという事を私に知らせてくれた。この大きなパーティーで何かを起こそうと企んでいるものはやっぱりいるらしい。

 やはり、権力者の集まる場所というものは色々な陰謀が渦巻くものだ。

 だからこそ恐ろしい世界。綺麗なだけではなく、人の思惑が入り乱れている。そういう世界。

 私はそんな場所で生きている。そんな場所に自分から飛び込んでいる。誰にやらされたわけでもなく、私自身が、決めたからこそここにいる。

 不穏な動きがあろうが、それから目を背ける事は出来ない。

 見ないふりはすることは出来るけれども、そんなことを私は望んでいない。

 守れるものなら守りたい。防げるものなら防ぎたい。そんな風に思うのは我儘かもしれないし、そんなことを望むのはよくばりなのかもしれない。でも、起こるかもしれない事に目を背けるなんて嫌だと思うから。

 「---カートラ」

 だから私は、私の手駒である彼女たちが動くことによって危険にさらされるかもしれないとわかっておりながらも命令を下す。

 周りの参加者たちにはわからないように。ただこっそりとだけれども。

 私の短い命令の意図を彼らは読み取ってくれる。

 これから何が起こるかは正確にはわからないけれども、何かは起こるのだろう。起こそうとしている存在はいるのは確かだ。

 覚悟を決めよう。

 何かが起こるという事を。

 そしてカートラたちからどんな情報がもたらされようとも、平常心を保てるように心掛けよう。

 探らせて、その正体がわかったら動こう。その不穏な動きに私がきちんと対処できるかはわからないけれども、それでも何か起こるならどうにかしたいから。




 

 

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