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 今ウッカとヤーグは11歳、二年後に学園に入学する際にウッカに接触をして、そうして傍にいてほしいと頼んだ。

 トントの方には表向きには私と親しくないといった風にしてもらい、裏方から助けてほしいと頼んだ。

 そういう味方も必要だとそんな風に思えたから。

 ツードン公爵家がつぶれて、そうして次にガター家の当主と夫人まで断罪されて、その二つに私がかかわっているのもあって、学園内では様々な噂がなされていた。

 噂の中には正解も不正解もあった。

 トントが入学した時からずっと私を見つめていた事を知っている取り巻きの少女たちは私がそれを気に食わなくて潰したのだろうかと噂していた。

 私の見た目の問題もあるだろうが、そこまで私はそんな風に見えるだろうかと何とも言えない気持ちにはなった。

 だけど、噂に惑わされない人たちも確かにいて、そういう人たちは私に接触してきた。あと、トントから話を聞いた人とか。

 そういう生徒たちとそれなりに仲良くできたのは幸いだったといえるだろう。もちろん簡単には信用できないから背景を洗ったり、監視をつけたりしたうえでだが。

 ガター家の二人をつぶしたのには収穫が大きかった。

 徐々に学園内でも、話せる存在が増えていく。取り巻きではなく、仲良くできる人が。

 それは嬉しい事だった。

 ツードン家の事がどうにかなったから、少しは身の回りに安心できて、概ね学園生活に問題はなかった。

 だけど、ナグナ様は相変わらずだった。

 噂に惑わされていた。ウッカと一緒で単純で、目に映ることだけを信じて。

 「お前は、何をしているんだ」

 と話しかけてきた。

 その後ろには、アシュイ・フロノスと騎士団長の息子と、宰相の息子がいた。

 全員跡取りという地位ではない。それもあって噂に惑わされている一面も多いみたいだ。正直少し調べれば事情は見えてくるのだが、思い込みが激しいのかもしれない。

 「何をとは、何の事でしょうか」

 「ツードン家とガター家の事だ。両方にエリザベスがかかわっているのだろう! ウッカも――」

 「ふふ、妹に何を聞いたか知りませんけど、私はナグナ様が思っているような悪い事は何もしていませんのよ?」

 第一そういうことをしているなら、王家から王命が出るわけではない。ナグナ様は王太子でも、その補佐である第二王子の立場でもなく、詳しい事情などわかっていないのだろう。

 しかし、そういう事情とかは関係者とかにしか基本的に語られはしないし、噂で流れる程度である。

 事務的に笑みを浮かべて微笑めば、ナグナ様は益々顔をこわばらせた。

 「エリザベス、お前は昔とは変わったな」

 「あら、人は成長するものですわよ」

 私はそう口にする。別に怒らせようとしているわけではない。でもナグナ様は、私が何をいってなくても、噂で私を嫌っているし、思い込んでいる。王家と公爵家の取り決めで私とナグナ様は婚約しているし、よっぽどのことがなければ結婚するのである。

 ナグナ様と結婚したら少し大変かもしれないけれど、まぁ、それはそれで仕方がない。

 「それより、言いたいことはそれだけでしたらもういきますわね」

 文句をただ言われるだけなら、もう去っていいと思った。私にはまだまだ勉強することもやることも沢山ある。

 最大の脅威が去って、今の所順調で。

 もちろん、これから先命を狙われる事はあるだろうけれども、少しは心に余裕が出来たから。

 私はナザント公爵家を継ぐために、もっと頑張らなきゃいけない。

 無理をしすぎないように、だけど相応しくあるために。

 私はもっと、もっと、立派なお父様のあとを継げるように。

 人脈を作り、駒を作り、徹底的に、大切なものが失われないように。

 そうするために。そうあるために。

 ナグナ様と婚約者だから、ギルとは相変わらず時々しか会えないけれど。それでもギルは私にとって支えで。

 ミモリとは友人としてよくあって。本当にそういう存在が出来たことが嬉しくて。ミモリがいてくれて安心して。

 お父様は私の背中を押してくれていて。お父様が居てくれるだけで頑張れて。

 ルサーナたちだって、私を支えて助けてくれている。皆のこと、好きで。

 領地の人たちだって、最近あえてないけれど、領地に触れられて、皆が大好きで。領民に幸せになってほしいって思えた。

 沢山の人が支えて、助けてくれて、安心させてくれて、それで私は頑張れる。

 ナグナ様には嫌われてしまったけれども、それでも大好きな皆が居るから頑張れる。

 ヤーグにウッカの事が頼めたし、少しは安心する。ウッカの警備ももっと固めなきゃ。学園生活をする前に。

 最近ウッカはツードン家の問題がかたづいたのもあって、外に出ている。護衛もつけてだけど。ウッカは最近楽しそうらしい。

 「――――皆、私もっと頑張る。だから、ついてきてね」

 その場にいて奴隷とかクラリとかに笑いかければ、皆頷いてくれた。




 皆が居るから、私はもっと頑張れる。

 本当にそればかりを私は実感していた。




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