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 丁度夏季の長い休みがもうすぐという時期だったので、その時に一緒に公爵領までいってもらうことにした。

 ギルにも話したら、ギルも一緒に行くっていうから、一緒の馬車にのって向かうことになった。

 まったくギルは心配性である。

 でも、その心配が嬉しいと思う。私の事を心配して、だからこそこうして一緒についてきてくれるギル。

 ギルはこの前私がさらわれたのもあって、本当に心配をかけてしまった。

 ギルにはいつも助けられてばかりだ。精神的にも、ギルがいてくれるからどれだけ助かったか、どれだけ安心したかその思いは計り知れない。

 ギルが居たから、こうして頑張れる。

 ギルが居るから、こうして安心できる。

 そう、本当にそうなのだ。

 そして私の大切な幼馴染であるギルは、馬車の中で、ガター伯爵家の長男であるヴィガ・ガターのことを警戒するようにじっと見ている。妙な真似をしたら許さないといった態度だ。

 ちなみにそれはウェンたちも同様だ。そのためか、彼は居心地が悪そうな表情だ。

 ちょっと申し訳ない気持ちになる。

 

 そうしているうちに、ナザント公爵領についた。



 お父様には手紙で事前に伝えてある。お父様からの返信は私への心配ばかりがかかれていた。

 ようやくツードン公爵家をどうにかできたばかりで、また新たな問題にかかわっている私が心配で仕方がないみたいだった。

 本当に私は心配ばかりかけてしまっている。

 でも私は、強い覚悟をもって私のもとにやってきて、両親をつぶしてほしいなんて口にする彼の事を放っておけなかった。

 ナザント公爵家の屋敷に戻った私をお父様は迎えてくれた。ウッカは、その場にいたけど、私が知らない人――ガター家の長男と一緒に居ることを怪訝そうな顔で見て、そのまま部屋にひっこんでしまった。

 ただでさえこの前のツードン公爵家の事があるから、また何か企んでいるとでも勘違いされているのかもしれない。いや、まぁ、企んでいるといえば企んでいるのだけれども。

 ガター伯爵家を、その当主と夫人をつぶすことを企んでいるだんて、いくら頼まれているとはいえ、あんまりやりたいことではない。

 でもそれでも、私はナザント公爵家の次期当主なのだから、そういう潰すっていうことにもなれる必要もある。それをしなければならない時がまた来るかもしれないのだから。

 私とギルとガター家の長男はお父様の書斎に通された。

 そこで話をすることになった。

 「それで、潰してほしいとはどういうことなのだね。そこまで、ガター家はひどいのかい?」

 お父様はそう問いかけた。

 真意を問いかけるような、声で。

 「はい……」

 そう頷いて、彼は話し始めた。

 「自分の両親はもうどうしようもないです……。そちらのエリザベス様の奴隷である少年の話は知っていますか」

 「ああ、聞いている」

 「その少年と同じような存在を沢山、母は作っています。父親は愛人に走っているし、正直自分と弟は本当に父の息子なのかもわかりません」

 それぐらい、酷いらしい。ウェンのような存在が沢山いるという話は知っていたけれども、改めて聞くとなんともいえない不快感に襲われる。

 「父親の愛人も問題です。他国の間者のようで、父は、この国の情報をその愛人に流しています。父の事を扱いやすいってそんな風につぶやいた愛人の言葉を、自分は聞きました」

 愛人の問題。国の情報を簡単に流しているとそういう。

 「父は不正もしています。王宮に提出する書類に偽りをのせ、収めるべき税金をきちんとはおさめていません。そしてその金は、愛人につぎ込まれています。母も、不正を知っているけれど、それでも贅沢をやめられないと、少年を買わずにいられないみたいで」

 とそういって、顔をゆがめた。

 そんな存在が自分の両親だなんてそういうことを思いたくもないのかもしれない。

 「―――それに、はやくしないと、弟が危ないんですっ」

 冷静にただ両親の事を語っていた彼は、焦ったようにその言葉を口にした。弟が危ないとそんな風に。

 「危ないとは…?」

 「……弟は、見た目がとても良いのです。男の自分から見ても、兄のひいき目なしに綺麗な見た目をしています。母は、弟にまで手を出そうとしていますっ」

 その言葉にどうしようもなく不快感がわいた。その言葉を理解して、気分が悪くなった。

 ガター伯爵家の夫人は、息子にまで手を出したいほどにひどいようだ。

 「息子だからって母も自重してたみたいですけど、もう我慢の限界だとでもいうように弟にキスしたりしているみたいで……。はやくしないと、弟が、食われてしまう!!」

 弟の事を大事に思っているのだろう。彼は叫んだ。

 「……弟さんは、何歳?」

 「11歳です、エリザベス様」

 「あら、ちょうどウッカと同じ年なのね」

 ウッカと同じ年の少年を性的な意味で喰らおうとするガター伯爵家夫人には、正直不快な思いしかしない。なんておぞましいのだろうか。でも、今から借りを作る相手にウッカと同じ年の弟がいるというのは丁度いい。

 「お父様、ガター家の現状を知って放ってはおけません。サンティーナ様方に報告をして行動に出るべきです」

 「ああ、その通りだね、エリー」

 「それで、お父様、それをなした際には彼と彼の弟を私の配下にください」

 「……それは構わないよ」

 お父様がそういってくれたから、私は彼を見た。

 「お願いは聞いてさしあげますわ。放ってはおけないですから。でも、それをなした際には貴方と貴方の弟は私の配下に下ってもらいます。それに加えそれなりの代償は覚悟してください」

 「……構わない。どうにかしてくれるなら」

 私の言葉に何か考えた様子だったが、結局彼はそういってうなずいた。

 ギルはずっと、私たちの話を黙って聞いていた。




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