表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/108

63

幼き奴隷少女、エーマ

 私は自分の年がわからない。エリザベス様より五つか、六つか、大体それぐらい年下だろうとは言われている。ただ、農村で生まれ育ち、奴隷となった私は自分の正確な年なんて知らない。

 7,8歳程度の私は、エリザベス様に飼われて、エリザベス様の奴隷になった。エリザベス様の奴隷となって二年近く経過している。その間に、私はエリザベス様の事を色々と知った。

 エリザベス様はこの家を継ごうと一生懸命で、誰よりも努力をしていて。私はエリザベス様がどういう事をなそうとしているのか、そういう事はまだ難しくてあまりわからないけれど、だけど、エリザベス様がどういう人かは少なからずこの二年で理解しているつもりだ。

 だからこそ、私は―――、

 「エリザベス様! どうして、貴方はそう、無茶を」

 目の前で泣きじゃくるルサーナ姉さんと、ベッドで横になっているエリザベス様を前にああと思う。同じ奴隷仲間であるため、私は彼女を姉扱いしていた。

 エリザベス様の長かった綺麗な髪が無造作に短くされている。エリザベス様が大切にしていた髪が。外傷は見られない。だけど、エリザベス様がさらわれていたのは事実である。

 エリザベス様は、4日ほどさらわれていた。たった4日といわれるかもしれない。でも、その間、ナザント公爵家はずっとあわただしかった。私は別邸には連れて行かれずに、ナザント公爵領の離れで勉強を続けていた。

 私はエリザベス様がさらわれたというのに、何もできなかった。私はエリザベス様に沢山のものを与えられているというのに、エリザベス様が買ってくださったからこうして今まで読めなかった本を沢山読めるようになって、食事も満足にとれるようになっているというのに。なのに、何も出来ないことが歯がゆかった。

 「エリー」

 エリザベス様の幼馴染であるギル様は、エリザベス様の名を呼んで手を握っている。

 ギル様と、そしてウェン兄さんはエリザベス様を助けに突入していたらしい。それだけの力があるから。ルサーナ姉さんはエリザベス様の命令でエリザベス様の妹様の所にいっている。あえて、エリザベス様と仲たがいをしたとして。

 そんなルサーナ姉さんは、エリザベス様がさらわれたことをしって駆けつけたかったみたいだが、「ウッカ様も危ないかもしれない」ということでエリザベス様の命令もあるしとウッカ様の隣にいた。

 救出されたって知って、いても経ってもいられなくて、当主様に申し出てウッカ様に悟られないようにここに来たのだ。

 今回エリザベス様がさらわれたのは、社交界の会場となった家の者がツードン公爵家側であったからというものだった。そういう動きを見せていなかったが、実はそうだったらしい。それで、一瞬の隙にエリザベス様は浚われた。貴族のお屋敷には秘密の抜け道というものも存在している。それを使われたらしい。

 ツードン公爵家ともども、その家の裏切り者(その家の一部の者がツードン家についており、当主は知らなかった)はとらえられ、処罰がこれから処されることとなっている。

 こういう時、私は何も出来ない。大きくなったとしても、私にはそういう力はない。

 獣人である彼らはそういう力を持ち、力を持ってエリザベス様を守り、エリザベス様を助け出すことが出来るだろう。

 でも、私はそうではない。隣にいるヒラリだってそうだ。そんな、戦う力も才能も私たちにはない。そのことが悲しいし、悔しいって思う。エリザベス様が大変な時、何も出来ないのかなって。

 だけど、エリザベス様は将来的に私たちが使える駒であるために私たちに様々なものを与えてくれている。ここでの生活は快適で、私はエリザベス様に感謝をしている。だから、私は、エリザベス様が将来的に公爵家を継いだ時に力になれるようにありたい。

 まだ、知識とか、足りないけれど。でも、そうありたいと私は確かに望むから。戦う術はないけれど、別の戦い方は見つけられると思うから。

 だって本の中では武力的な強さがなくても、主人を守り通した人だっているんだもん。そういう人だって確かに存在しているんだ。私は、そうなりたい。そうありたい。って、本当に目の前の光景を見ながら思っている。

 「ヒラリ、頑張ろう」

 「うん」

 目の前のヒラリに声をかければ、ヒラリも私と同じ気持ちなのだろう、そういってうなづいてくれた。

 私たちにはそういう力はないけれど、もう、エリザベス様がこういう目に合わないように、私たちはそういう力をつけよう。

 エリザベス様が当主になった時に、私たちが支えられるように、そういう力をつけよう。

 眠ったままのエリザベス様を前に、私とヒラリはそんな決意を胸にする。

 エリザベス様。

 私を買ってくれた人。奴隷として、どんな目に合うんだろうって思っていた中で、私の好きなように勉強させてくれた人。

 私を駒とするという打算があるっていうけれど、そんなものあってもなくてもどうでもいい。だってエリザベス様が私に沢山のものを与えてくれたことは事実で、私は、エリザベス様っていうその人の事好きなんだから。それだけで、力になりたいってそう思える。



 はやく、目を覚ましてください、エリザベス様。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ