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 王宮に使いをだし、私が詳しい話を知っている二人を連れて王妃殿下であるサンティーナ様と国王陛下であるイサート様の元へ向かうことになった。何故、私がかといえば、ただ単にお父様が忙しくて、適任者が私しかいなかったからというただそれだけの話であった。

 もちろん、彼らだけではなく、護衛たちも一緒にである。

 王宮へと顔を出したら、

 「エリザベス!」

 ナグナ様が私の名を呼ばれた。

 視線を向ければ、そこに居るのはナグナ様だけではなく、フロンス公爵家のご子息アシュイ・フロンス様、騎士団長の息子であるダンル・ベンル様、宰相の息子であるロラ・ジェン様がおられた。

 「お久しぶりです、ナグナ様、何の御用でしょうか」

 「お前、学園も休んで、そんな怪しい連中を王宮に連れ込んで、何を企んでいる」

 「あら、何も企んでおりませんわ」

 学園を休んでいたのは、色々な対処に追われてしまったからだ。事情をイサート様たちに話した後、落ち着いたらまた学園に通おうと思っていたというそれだけの話だ。

 ナグナ様は私の態度もあるだろうが、私が悪だくみをしているとしか考えていないようである。でも王族なら他人の裏の裏まで見るべきだと思うのですけれども、ナグナ様はそういうことが出来ない性分なのかもしれない。

 ナグナ様が私が本心をさらしてもウッカに言ってしまわないような方ならよかったのですけれども、生憎ナグナ様はそんなことできないでしょうし。

 「なら、後ろの者どもはなんだ。そんな怪しい連中を連れ込むなど――」

 そんな風に話し出すナグナ様の後ろで、周りにいる三人もうなずいておられた。彼らは全員長男ではなく、ナグナ様と同じ思考のようである。

 「あら、お知りになりたいのでしたらサンティーナ様たちにお聞きになってくださいませんか」

 サンティーナ様も、ナグナ様にいっても問題ないと判断すればナグナ様に伝える事だろう。ただ、この案件は公にするべきことではない。第一、ツードン公爵家にあまりこちらの情報をやるべきでもない。

 ―――最も私が傭兵たちを領地に連れ帰ったことなどは、もう知られてはいるだろうが。それもあって、私はもっと狙われることであろう。

 「お前は――」

 「お話し中申し訳ありません。ナグナ様、イリヤ様がお呼びですよ」

 ナグナ様が何かを言い出そうとした中で、間に入ってきたのは、アサギ兄様であった。

 ナグナ様はアサギ兄様の言葉に「兄上が、そうか」といってこちらを睨みつけて去って行った。

 「エリー、大丈夫か?」

 そしてナグナ様が居なくなると、アサギ兄様はそう問いかけてきた。

 「ええ。ありがとうございますわ。助かりました」

 「エリーは、王宮に何か用事か?」

 「はい。サンティーナ様とイサート様にお話ししなければならないことがありまして」

 「……そうか。あまり無茶はするなよ」

 アサギ兄様はちらりと私の周りにいる人々に視線を向けて、何か考えたような顔をするとそう告げた。深く聞かないあたりがアサギ兄様らしい。本当に助かる。

 「はい。私は無茶は致しませんわ。それでは、またお会いしましょう」

 私はそれだけいってアサギ兄様と別れた。

 そしてそのまま、サンティーナ様とイサート様が居る部屋へと向かう。話は通してあるからか、部屋の前を守っている人々もすんなりと中へと通してくれた。

 「お久しぶりです。ナザント公爵家が長女、エリザベス・ナザント、参上しました」

 礼を取り、目の前にいる二人を見る。公式な謁見の場ではないのもあって、顔を上げても咎められる事はない。

 「エリザベス、ここは公式な場ではないのですから挨拶はおいておくとして、そちらが例の方々でしょうか」

 「はい。そうですわ。この二人の話を、お二人に報告をしようと思い、参上したのです」

 ツードン公爵家という、この国でも有数の権力を持つ公爵家がその力を間違った方向に使っているというのは問題である。第一、それは見過ごせるものではない。

 それから私が連れてきた二人の話を、サンティーナ様とイサート様は黙って聞いていた。そしてそれが終われば、サンティーナ様とイサート様が、質問をし、それに二人が答えるという形になった。

 ある程度話を聞いたのち、「こちらでも調べよう。そして然るべき断罪をすることを約束する」とイサート様は言ってくれた。国王としても、見過ごせる問題でもないのである。

 それからイサート様たちは、護衛のものと話を聞かせてくれた二人を下がらせた。

 その場にいるのは私と、イサート様と、サンティーナ様だけだ。

 「まったく、エリザベスはまた無茶をしたのか」

 「ご心配かけてしまい申し訳ありませんわ。あの時はこれが最善だと思いましたので、思わず飛び出てしまいましたの」

 イサート様の言葉に、そう答える。

 お二人との付き合いも長い。お二人は私の事を心配してくれている。

 私には心配してくれる温かい人たちが沢山いる。そのことに勇気をもらえる。頑張ろうって思える。

 「――……無茶をしないでね、エリザベス。この件は私たちとガヴィアで片付けますから、エリザベスはおとなしくしていてくださいね」

 「できうる限りそうするつもりですわ。ただ、私は当事者で、狙われている身ですからどうなるかはわかりませんわ。でも、大丈夫ですわ。私は死ぬつもりはありません。たとえ危険な目にあっても、生きる事はあきらめませんわ」

 命は狙われているし、危険だけれども、それでも死ぬつもりはない。可愛い可愛い妹のためにも、お姉ちゃんは一生懸命生きる必要があるのだから。

 私の言葉にお二人は仕方ないなぁとでもいう風に、だけど心配そうな表情を浮かべるのであった。



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