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予定よりも大人数を連れて帰宅した私を見て、お父様はそれはもう驚いていた。何があったと、その目が私を見ていた。
ウッカも、私を迎えた場には居た。いかつい顔をした傭兵たち、手足を縛られた者たち、そういう人たちと共に帰宅した私に皆が驚愕を浮かべていた。
ウッカの隣には、ルサーナが居た。ルサーナとは、時々連絡を取り合っているけれど、基本的に私とルサーナの間に関係がないとしているため、連絡は取らないようにしている。
「お父様、お話がありますので、人払いをお願いします。そしてこの者たちが何者か、お父様は疑問でしょう。その説明もしますので、彼らを休ませていただけませんでしょうか」
私がそういえば、お父様は頷く。
そして私は傭兵と追手であった兵士たちの責任者、護衛の意味の奴隷たちを連れて、お父様の書斎に向かった。
そこで私はお父様に、何故こういうことになったのかを簡単に説明した。
「―――そういうわけで、同じ公爵家としてこのままにしておけないと思ったので、私はこの者たちを保護することにしましたの、申し訳ありません、お父様、当主であるお父様にお伺いも立てずに勝手な真似をしてしまって」
私はお父様にそう告げて、頭を下げる。娘とはいえ、当主であるお父様にお伺いも立てずに勝手をしてしまったのは間違いのないことである。
「……頭を下げなくて良い。詳しく話を聞きたい。そこの者たち、話してもらおうか、知っていることを」
お父様は私にそう告げて、傭兵と兵士たちの責任者に向かってそう告げた。
お父様は残酷な話をやっぱり私に聞かせたくないみたいで、その際私に退室しなさいといったけど、私は私が連れてきてしまったというのもあって、当事者であるから話は聞くべきだと思って、その場にいるといった。お父様はあきらめたように溜息を吐き、私もその場で彼らの話をもっと詳しく聞くことになった。
その結果わかったことといえば、ツードン公爵家が違法な薬物を売りさばいているという話、領地内で搾取が続けられているということ。――――それに加えてもう一つ、お母様を殺すように命令した家が、ツードン公爵家だということだった。
私を殺すように命じたのも、その家だ。
ああ、と私は思った。妙に冷静だったのは、ようやくお母様を殺したものが、わかったからだ。三年だ。三年もかかった。お母様が誰に命じられて殺されなければならなかったのか。――――私は、お母様が死ななければいけない原因を作った人の手掛かりを手に入れられたのだ。
傭兵や兵士たちは、三年前にある人物を殺害するために何かをやっていたという事しか知らなかったみたいだけど。その殺そうとした人物というのは、私だ。お父様の心を崩すために、私を狙った。幼い子供であった私の方が、殺しやすいと思ったから。そして次代のナザント公爵家の当主を殺したかったから。
私を狙っていたんだ。あの時。でも、お母様が私を庇った。私を庇って亡くなった。
「―――その、殺されそうになった人物というのは私ですわ」
私は彼らにそう告げた。彼らはぎょっとしたような顔をした。私はそんな彼らに告げる。
「殺されそうになった私を庇い、私のお母様はなくなりました。私のお母様が殺された原因を教えてくださり、感謝しますわ。良かったですわ、あなた方をあの場で殺してしまわなくて」
私はそう告げた。
本当に心の底から、ツードン公爵家が黒幕だと分かったことに感謝している。お母様を殺す真似までして、私を殺しかけもして、そして私の可愛い妹に手を出そうともして、許せるわけがない。即急にどうにかしなければ、私の大切な家族にまた手を出されてしまうかもしれない、と思うと怖い。そんなの、許せない。私の大切な存在をまた、奪われたりなんかしたくない。
お父様はそれから彼ら二人を退室させる。護衛の奴隷たちも外に出して、私とお父様がその場に二人っきりになった。
二人っきりになった途端、お父様に抱きしめられた。
「……お父様?」
「良かった、無事で。エリーは無茶ばかりしてっ」
お父様は私をぎゅっと抱きしめて、泣き出しそうな声を出していた。
「ごめんなさい、お父様、心配かけて」
自分でも無茶したって自覚はある。でも私がああやって交渉しなきゃ、彼らだって話を聞いてくれなかったかもしれない。――でも、本当にお父様には心配をかけてしまった。
「ごめんなさい……、でも、お父様、お母様の、敵わかりましたわ」
「エリー……」
私から身体を離して、お父様は言う。
「私の方でどうにかする。絶対に敵は取る。だからエリーは、無茶をしないでくれ」
「……出来る限りそうしますわ。でも、私も、お手伝いはしますわ。私は狙われている身で、無関係ではいられませんもの。ひとまず、このことを王妃殿下たちに伝えるべきかと思うのです」
実家で守られているウッカはともかく、私は学園でツードン様と同じ生徒という立場で、狙われやすい。実際私の事をツードン公爵家は狙っている。無関係ではいられない。
―――そういうわけで、ひとまず王宮へと使いを出すことになった。




