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ミモリとはあれから一層仲良くなった。互いにミモリ、エリーと呼ぶようになった。とはいっても身分の関係もあるし、人前ではそういう親しさは見せていないけれども。
ギルにも、私の大事な友達だってミモリの事を引き合わせた。
学園で私はギルと必要最低限にしか会話を交わしていないから、ミモリは私とギルがそこまで親しい事に驚いていたようだった。
ギルは「エリーの友達だから」ってそんな風に笑って、すぐにミモリと仲良くなった。
二人が仲良くなってくれたことが、私は嬉しかった。
嬉しくて、仮面なんて忘れて笑ってしまった。それを見てギルもミモリも笑ってくれた。
友人が出来たことが、本当に心の底から嬉しくてたまらなかった。
少し浮かれてしまっていたのかもしれない。ウェンたちにも「あまり気を抜かないで下さい」とも言われてしまった。もう少し気を引き締めなきゃいけないって思うけれど、楽しい時ばかり最近感じていて、少し緊張感が欠けてきていたのは自覚していた。
命は狙われたし、結局の所まだ全然解決なんてしていないけれども、それでも大切な二人と過ごしていると楽観的になってしまっていたのだと思う。
結局、夏季休暇を終えて学園に戻ってきてからしばらくの間何も起こる事はなかった。
二学期ももう半ばぐらい過ぎたころ、その頃には私はミモリともっと仲良くなっていて、互いの事も色々知ることが出来るようになっていた。
ミモリは、卒業したら独り立ちしたいのだといっていた。
貴族だけど跡取りでもないから、結婚もせずに自分の好きな事をやりたいっていっていた。私はそんなミモリの言葉を聞いて、「だったら私の下で働きませんか?」と気づけば問いかけていた。
それはミモリという大事な友人が傍にいてくれたらいいって思った私の心に従ったからというのもあるし、ミモリは有能な人材でナザント領の当主になった際に下についててくれていたら楽だろうという打算の心もあった。
ミモリはそれに喜んでうなずいてくれた。
ミモリが私の傍にいてくれるといった日から、私はカートラをつけていた。もちろん、名目上私が貸した奴隷としてではなく、カートラをユング伯爵家の駒と周りに認識させた上でだが。
そしてミモリの交友関係や家族にも危害が加わらないように、と私はユング伯爵家に向けて警戒するようにも呼びかけた。お父様の名を使ってだけど。
だって私はナザント公爵家の娘とはいえ、ただの小娘でしかなくて、お父様の名前を使わないと危機感を持ってもらえないだろうことは予測できたから。
ユング家にも訪れた。秘密裏にだけれども。
ユング伯爵家の人たちは流石、ミモリの家族なだけあって温かい人たちだった。
それに私の言葉も、ちゃんと受け止めてくれた。
まぁ、私がミモリと学園で着実に仲良くなっているからユング伯爵家をエリザベス・ナザントが配下に収めたとか、そんなよくわからない噂が出回っていたものだけれども。
私の取り巻き筆頭のようになっていたカタリ様とオント様は突然現れて私と仲良さげなミモリに最初は色々思う所もあったみたいだけど、私が一言「友人ですの」といえば私が友人と断言している少女という事もあってミモリとも仲良くしている。
ツードン様は最近妙におとなしい気もする。相変わらず突っかかってはくるけれども、なんだか妙におとなしい。少しそういうのを見ると不安になるものだ。
何か考えているのかもしれない。色々と情報収集もしているけれども、中々情報は集まらない時もある。
ガター伯爵家の長男も私に用があるのかちらちら見ているけれど話しかけてはこないし。
うーん、と色々考えている中で私の耳に盗賊の噂が入ってきた。
「エリザベス様! 最近盗賊が出ているんですって。怖いですわね」
そんな風にいったのは、カタリ様だった。
「盗賊ですの?」
盗賊という存在は割といつでも存在する。真面目に働くよりも、人から奪う方が楽だとそちらに逃げるものだって多くいるものだ。
「ええ、そうですわ。しかも、とっても強いんですって」
オント様が、私の問いかけにそう告げる。
「まぁ、そんな盗賊が居るのですね。私は実家に帰る予定もありますし、気を付けなければなりませんわね」
私は盗賊で強いとはいっても、そこまで気には留めていなかった。実家に帰る際に気を付ける必要はあるが、実家から私兵たちも迎えにくるし、鍛えている手駒たちだっている。もし遭遇したとしてもどうにかなるとは思っていた。
最ももしどうにかならなかった場合についても考えなければならないけれども。
実家に帰る際に遭遇した場合のパターンについていくつか考えて、そんな話を聞いた数日後の二日間だけの休日にもうすぐウッカの誕生日だからと私は実家へと向かうのであった。
そこで、実際に盗賊に遭遇するとは話を聞いたときはあまり考えていなかった。




