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 来年から学園生活を行う上で、必要なこと。

 やるべき心構え。一年は足りないかもしれないけれど、それでもできうる限り私はそれを身に着けたい。いや、身に着けなければならない。

 ナザント公爵家は狙われている。誰にか、は私はわからないけれど。平常であるならば貴族とはいえ、お母様が殺されることも、ウッカが毒を盛られることもあまりないことだろう。それが起こっているということは、元凶をどうにかできていないからというものある。証拠がない。それならば相手をどうこうすることもできない。

 私はまだ子供で、次期当主とはいえそういう事情は教えられていない。

 これからも何かが起こる可能性のほうが、高いだろう。

 もっと力がほしい。お父様に信頼される、お父様がすべてを話してくれるような強さが。

 そう思うけれども、私が人の力を借りなければ立ち上がれない子供であるというのは紛れもない事実であった。

 悔しいと思う。

 もっと力があれば。もっと、もっとと追い求めてしまう。

 そんなないものねだりをしても仕方がないことはわかっている。だけれども、即急に片づけられるならナザント公爵家を狙う問題というものはどうにしたほうがいいことなのだ。

 少なくとも、ウッカが学園に入学するまでの間にはどうにかしておきたい。ただでさえ学園での生活は大変なものであろう。それに加えてそんな得体のしれない敵までいるとなるとウッカは大変なことになる。

 私が学園にいる内にウッカが、私の可愛いウッカが少しでも安心して学園生活を送ることができるように、そんな風にしてあげたい。

 笑っていてほしい。幸せになってほしい。純粋で優しいまま、育ってほしい。そんなの私の自分勝手な願望だけれども、そうあってほしい。

 あの子が大好きだから。あの子の笑顔が、本当に好きでたまらないから。

 クラリから、あの子の話は沢山聞いている。ウッカが素直で優しい子だっていってくれた。嬉しかった。あの子が褒められるだけで嬉しくて仕方がなかった。

 それと同時に、外の世界を知らな過ぎるとも言われた。

 ウッカは、屋敷の外に家族での外出とかではない限りほとんど出ない。それはお父様の指示でもあった。ウッカは狙われる格好の的にしかなりえない。

 今の現状でウッカを外に出すことはそれだけ危険なことなのだ。私だって必要最低限屋敷の外には出ないようにしている。外に出るときはいつも護衛を連れてだ。

 ウッカには自覚がないからどういう行動に出るかもわからない。そして幼いウッカにそういう事を言うことも憚れるのだろう。

 「ふぅ」

 思わずそんな息が漏れる。

 思考し続けることは疲れてしまう。色々と考えることが多すぎて頭がいっぱいになる。だけど、だけれども、考えることまでやめてしまうことはダメだ。

 私は行動し続ける。

 立ち止まっている暇があるのならば、少しでもウッカが幸せに生きられるように、このナザント公爵家に害をなさんとする紛れもない敵に隙を見せないように、お父様に心配をかけないように、――――もう、何も大切なものを失わないように。

 私はよくばりだ。失いたくないものが沢山ある。手に入れたいものが沢山ある。

 だからこそ、そのためにはそれをあきらめてはならない。

 タリア様の元に時々顔を出して、学園生活においての対処方法を色々ともっと聞こうと思う。

 そしてナザント公爵家令嬢として、次期当主として恥ずかしくない『私』を学園で見せる必要がある。

 「……頭を整理するために、日記でも書こうかしら」

 これからやるべきこと、今まで起こったこと、頭がいっぱいになってしまうからそれを整理するためにも書いてみるのもいいかもしれないと感じた。

 このまま、ずっと思考しつづけることでいっぱいいっぱいになって、冷静に正しい判断ができなくなるよりはそっちのほうが良い気がする。まぁ、見られて弱味になるかもしれないから、人に見られないようにする必要もあるけれども。

 それにウッカへの、本人に語ることのできない思いも、大切だって気持ちもどこかで吐き出しておきたかった。

 来年には、もう学園に入学する。別邸から学園に通うことになる。

 その間、ウッカの傍にはいられない。クラリからウッカの事は聞くことができるだろうし、お父様がいるから大丈夫だと思う、思いたい。でも、不安だ。

 もっとウッカに何かあっても大丈夫なように、色々と考えるべきかもしれない。

 ウッカのこと、学園生活のために自分が身に着けなければならないこと。

 ああ、時間が足らない。私はまだまだだから、もっと、さまざまな事を身に着けて、やらなければならないことがある。焦ってしまいそうになる。前に焦って、頑張ろうとして倒れたっていうのに。

 冷静になりたくて思わず自分の頬を軽くたたく。

 焦ってはダメだ。順序を追って、きちんと、一歩ずつ進めていくのが一番なのだ。

 とりあえず日記の第一文は『焦らないようにしなければならない』というそんな率直な言葉で埋まるのであった。



 それから私は毎日日記をつけることになる。




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