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22を一部書き換えました。

 クラリとムナは、一族全体を人質にとられているようなものだからか、私に酷く従順であった。

 「しばらくは、貴族の侍女としてのマナーを学んでもらうわ。話はそれからよ」

 私とウッカの側に付き従う存在ならば、侍女が適任である。『魔女』の一族は貴族ではない。侍女として働けるだけの技量をどうにか身に着けてもらわなければならない。ウッカの側にいても不自然ではないように。

 とりあえず二人には、離れでそういう事を学んでもらうことになった。色々教えて、つぎはぎだけれどもある程度出来るようになるまで一か月ほどかかった。本当はもっとはやくウッカの側においておきたかったのだけれども、やっぱり侍女として過ごした事がない子たちに突然侍女をさせるのには無理があるのだ。

 あの毒混入事件があってから、私は適度に奴隷たちにウッカの様子を見に行かせている。何か不審な行動を起こしている侍女が居ないのか、しっかりと調べる必要があった。もし、そういう存在がウッカの側に居るというのならばどうにかしなければならなかった。

 色々と考えなければならないことと、やらなければならない事が沢山ある。

 二人には離れで侍女としてのマナーを学んでもらったから、ウッカとはあった事がないけれども、姉妹で一人ずつ私とウッカに仕えていても違和感がないように小細工する必要がある。私はウッカに距離を置かれるように行動しているのだから―――。

 「どうしようかしら」

 うーんと、考え込む。どのようにしたら違和感がないのだろうか、どうしたらいいのだろうか。


 それを考えて、私が決めた事は二人に演技をさせることだった。


 「仲の悪いフリをしろって、どうしてそんな事しきゃならないのよ」

 そう、私が決めたのはクラリとムナに仲の悪いフリをさせるということ。もしこの二人が姉妹だと知っても共に居ない事をウッカが怪しまないようにしたかった。

 私の言葉に気の強いクラリは”なんでそんなことをしなきゃいけないんだ”と、その美しい顔を不機嫌そうにゆがめている。まだ短い付き合いだけれどもこの二人が仲の良い姉妹だということは十分承知だ。

 クラリからしてみれば可愛がっている妹に演技とはいえ、冷たい言葉を浴びさせなければならないと考えるだけでも嫌なのだろうことがよくうかがえた。

 その気持ちがよくわかる。私は自分から自分の意思で、ウッカを突き放そうとして、冷たい言葉を浴びさせているけれどそれに心が痛む。自分で決めた事なのにって思われるかもしれないけれども、私はそれでも本心からウッカが大切で大好きでたまらないのだ。

 「貴方たちをここに連れてきたのは、私と妹の毒味役として側におくためよ。それは聞いてるわね?」

 私が二人の顔を見ながら告げれば、二人は頷いた。

 「私は諸事情があって妹に冷たくしているの。嫌われるように仕向けているというのが正しいわ」

 その言葉に驚いたような顔を二人はする。どうして、と顔に書かれているがそれにこたえる必要性は今はない。だから、続ける。

 「それでね、姉妹を別々に私とウッカの側においているのを知ったらウッカがどうしてって疑問に思うかもしれないでしょう? 私が嫌われるように仕向けているとかそういうのがウッカに悟られるのは困るのよ。貴方たち二人が口も聞かないほど仲が悪いってことにしてほしいの。もし、姉妹だってばれたらの話だけれども」

 ウッカに嫌われるように、間違っても私の側に進んでやってこようとしないようにと心を鬼にしてウッカに冷たくしているのだ。

 それが無駄になるのは困る。

 「もちろん、この離れや『魔女』の一族の移住区でいつものようにしてもらうのは構わないわ。ただ、毒味役としている間はそういう風にしてほしいの。いいえ、しなさい。命令違反をするなら、わかっているわよね?」

 脅すような口調でいえば、二人は理解できないといった表情をしながらもうなずくのであった。

 それからお父様が新たな侍女を加える時に一緒にクラリとムナも侍女としてナザント公爵家に奉公しにきたという設定で侍女になった。気の強いクラリがウッカの側に、大人しい妹のムナが私の側に居る事になった。私を裏切れば一族すべてがどうなるかわからないのだから、二人も真剣に毒味役に取り組んでくれるだろう。これで、毒に関しては少しは安心できるようになった。

 最近、『魔女』の一件で忙しくしていたけれども買い取った奴隷たちの教育も怠るわけにはいかない。

 ルサーナとウェンは戦闘の才能があったのか、めきめきと実力をつけてきている。

 サリーとポトフは獣人だから身体を動かすのも得意だけれども、考える事が苦手なルサーナとウェンと違って頭を使う事も好きらしく両方とも少しずつ身に着けている。

 カートラはまだ奴隷として買って時間がそんなに経っていないから私の事を警戒しているようだけれども、いう事を聞けば酷い目には合わないと理解しているのか一生懸命だ。

 エーマは勉強が好きだからか、奴隷の時はこんなに勉強出来なかったから嬉しいとクラウンド先生の授業を喜んで受けている。

 ヒラリはようやく文字を覚えだしている。エーマよりは覚えるのが遅いけれど、反発する意思は今の所ないみたいだからしばらく様子見だろう。

 一気に奴隷を増やしても教育に失敗してしまうから少しずつ増やしているわけだけれども、今の所順調だ。



 ―――そうして過ごす中で、今年も『ヘラルータ』の開催される季節が巡ってくる。





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