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 結論から言えば、『魔女』の一族は私――いえ、ナザント公爵家の支配下に下った。『魔女』の一族は、そう呼ばれているけれども女だけで構成されているとかそんなことはない。男女半々ともにいる。だから男でも『魔女』の一族といわれるのだ。なんだか、それは不思議だと思う。

 そして、今回私はお父様に相談して設けた『魔女』の一族の居住居にやってきた。ナザント領の一角にそういう場所を作ったのだ。

 今回、私がここに足を運んだ理由は二つあった。

 一つは、

 「私と私の妹の毒味役として二人ほど傍に居てほしいの。誰かよこしてほしいわ」

 今後毒を盛られた際に、すぐに対処できるように、すぐに気づけるように誰かを傍に置いておくという事。

 そしてもう一つは、

 「私に薬や毒について教えてほしいの。これから役に立つかもしれないから」

 『魔女』の持つ知識を学びたいという事。

 もちろん、きちんと飴と鞭を使いこなさなければいけないって思って、「従わなければわかっているわよね?」と厳しい言葉つきでだ。だって、『魔女』の一族と私たちの関係は、取引関係。利害の一致による関係。

 私たちが、居場所を与える。そして『魔女』の一族は力を貸す。そういう関係なんだもの。

 知識っていうのは、どんなものでももしかしたら何かに役に立つかもしれない。って、クラウンド先生が言ってた。私もその通りだと思っている。特に薬や毒の知識ってのは、これからも役に立つものだと断言できる。事前に知識があれば毒に気づけるかもしれないのだ。

 「二人ですか…」

 「ええ。誰かよい人いないかしら?」

 今私が話しているのは『魔女』の一族のトップ、大ババ様と呼ばれる老女だ。

 取引関係になったとはいえ、まだ知り合って間もない『魔女』の一族を完璧に信頼できているわけではない。向こうもそんな気持ちなのだろう。

 「ならば……クラリとムナが良いでしょう。あの二人はまだ若いですが、一族内でもその知識と実力は舌を巻くほどです」

 その言葉に、私は確かクラリとムナというのは『魔女』の一族との交渉の時に居た少女二人の事だ。あの時の二人が姉妹だと後から知った。赤髪の方が姉のクラリで、茶色の髪の方がムナのはずだ。

 「ああ、あの二人ね」

 「はい。エリザベス様と妹様の毒味役として側に置くなら年も近い方が良いでしょう」

 「そうね、その方が不自然ではないわ」

 大ババ様の言葉に私は頷く。

 「では二人には説明をしてそちらによこします。いつよこせばいいでしょうか?」

 「そうね、一週間以内によこしなさい。はやい方がいいわ」

 「了解です。それと薬と毒について学びたいということですが……」

 「貴族は色々大変なのよ。そういう知識を覚えておいて何も損はないもの。だから私に教えなさい。あと私についてきているこの三人にも」

 今回もリュトエント含む私兵と、私の奴隷たちがついてきている。今回連れてきた奴隷は護衛の意味を込めてルサーナとポトフを、そして勉強させようという意味を込めてエーマを連れてきている。やっぱり獣人っていうのは、運動神経が良い子たちばかりで、護衛に向いているのよね。

 「いいでしょう、いつからはじめますか?」

 「今からお願いするわ。出来る限りわかりやすいように教えてほしいわ。私は毒について少しは習っているけれど、貴方たちよりは詳しくないもの」

 それから私たちは大ババ様から、『初めての薬・毒講座』という事であんまり難しくない、簡単なところから教えてもらうことになった。

 薬や毒を扱う際の注意事項が主だった。薬は時として、毒になる。毒は時として、薬になる。薬と毒は紙一重の存在であるのだ。

 扱いに気を付けなければならない。調合に失敗すれば大変な事になる。調合する際に分量が一番大事であり、少しでも間違えれば別のものになってしまうことだってある。

 そういう事を、大ババ様はいう。

 大ババ様の言葉を私はまじめに紙に書く。私が真剣に薬と毒について学ぼうとしているからか、大ババ様はただの取引関係だというのに丁寧に教えてくれた。

 大ババ様とはまだ何回かしかあったことがないし、であったばかりだけれども私は大ババ様が好きだなと思えた。大ババ様は、真面目で優しい人だ。何処かばあやに似ている。

 ルサーナは机に向かいあうより身体を動かすのが好きだからか、所々眠たそうにしていたけれどサリーとエーマはきちんと聞いていた。エーマは私と小さな女の子なんだけれども、元々貧しい農村暮らしで勉強が出来なかったから勉強が出来るだけで嬉しいらしい。

 それにしても貧しい人たちは学ぶことさえも出来ないなんて、そういうのはなるべくない方がいいわ。貴族はお金があるから家庭教師を雇えて、学園に通えて、当たり前のように勉強しているけれど、貧しい人たちはそうではないのだ。文字の書き方も知らない子も多い。もう一人の人間の奴隷であるヒラリはまだ文字が怪しいから連れてこなかったけれど、エーマは勉強が楽しくてさっさと文字を覚えたから今連れてきているの。

 しばらくの間、大ババ様に薬や毒について教わってから私は公爵家へと帰宅した。




 クラリとムナはそれから二日後にナザント公爵家へとやってきた。





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