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番外編:ウッカ・ナザントの願い

 「お姉様! 何かお手伝いすることある? 私もお姉様のお手伝いしたい!」

 お姉様との長い間のわだかまりがなくなって、私、ウッカ・ナザントはお姉様に沢山話しかける。

 お姉様が冷たくなってから、私はお姉様に話しかける事を躊躇していた。お姉様に冷たい目で見られて、お姉様に嫌われたんだって怖かった。

 昔の優しかったお姉様はどこに行ってしまったのだろうって、ずっともやもやしていた。

 だけど、お姉様が変わってなかった事を知った。お姉様が私を大切に思ってくれている事を知った。

 お姉様が冷たくなったのはお母様がなくなった時、私が七歳の時だった。それから七年、お姉様と私の間には壁があった。

 「そうね、ならウッカにもお手伝いをしてもらおうかしら」

 お姉様は、あの一件からよく笑うようになった。

 ルサーナがいうには、私とわだかまりがなくなって、気持ちが楽になったんじゃないかって言っていた。

 お姉様が私に笑顔を向けてくれる事が嬉しい。お姉様とこうして話せる事が嬉しい。七歳の時の記憶なんて曖昧で、その曖昧な記憶を思い出しながら、お姉様はどうしてってずっと考えていた。ずっと、お姉様がまた昔のように戻ってくれたらって、願ってた。

 それが夢ではなく、現実で、お姉様が笑ってくれているのだ。

 お姉様のお手伝いをすると、本当に領主の仕事って思っていたよりも大変なのだなとあらためて思う。

 お姉様は、お父様が亡くなってから後見人がいたとはいえこういう仕事をずっとやってきたのだなと実感すると、お姉様って凄い! って思わずにいられなくなった。

 私は噂とかを鵜呑みにして、お姉様の事をずっと勘違いしていた。私はお姉様とちゃんと話そうとしていなかった。途中から諦めて、どうしてお姉様はって思ってた。……お姉様もお姉様で、私がいなくなるのはいやだってそんな風に思って、私は貴族社会の黒い部分に耐えられないって決めつけていた。私もお姉様も、本当会話が足りなかったのだ。そう考えると私もお姉様も似た者同士なのだろう。

 お姉様は、なんでもできて、完璧で。そういう人だけど、そういう部分がお姉様の完璧ではない部分なのだろう。お姉様も話してくれたらよかったのにって。お姉様の抱え込みすぎてしまう所はお姉様のダメな部分なんだろうなって知って。私は……お姉様にもそういう部分あるんだって、安心もした。

 そう考えるともっと私がぐいぐい昔からお姉様に押しかけていればここまでお姉様との関係が擦れてなかったかもしれないし、お姉様も言ってくれればよかった話で。考えても仕方がないけどそういう可能性も考えた。

 でも、結果として今お姉様と仲良くできているからよかったと思うんだ。

 七年間もずっと、お姉様との関係が擦れていた。これ以上長引いたらそれはそれでどうなっていたかもわからないし、お姉様と仲直りができてうれしいって心の底から思う。

 「いい子ね、ウッカ」

 お姉様は私が仕事を手伝うと、よく私の頭を撫でる。

 十四歳になるのに頭を撫でられるのは恥ずかしいけど、でも同時に嬉しかった。ずっと甘えられなかったお姉様に、甘えられることが嬉しかった。この年になってそんなに甘えるのはどうかって思うぐらい私はお姉様に甘えている気がする。

 お姉様もなんだかそういうのがあるのか、私の事を撫でまわしたり、「ウッカは天使」とかえ? と思うことを言い出したりする。天使などと言われても正直反応に困っちゃうんだけど……。

 でもそういう事言っているときにギルお兄様が隣にいても驚いた顔ひとつしていないってことは、お姉様結構こういう事ギルお兄様の前で言っているのかな? ……それはそれでなんか恥ずかしい。というか、お姉様は陰で私の事どういっているんだろうか。本当に。

 「お姉様、あのね」

 私はお姉様とやりたいことが沢山あって、時間を見つけるとお姉様にそれをいう。

 今までお姉様とできなかった事。できないと思っていた事。それを、やりたいなってどんどん思いつくの。

 お姉様と一緒にこれをやりたい、あれをやりたいってどんどん思いつくのは、私がお姉様を好きだから。お姉様と何かをすることをずっと夢見てたから。

 「そうね、なら……」

 お姉様は忙しいのに、私が何かをしたいって言うとちゃんと考えてくれるの。

 断ることは頭にないみたいな感じで、時間を作ろうとしてくれるの。それが嬉しい。まぁ、時々ギルお兄様との約束があるのに「ウッカと出かける」とか言い出したりもしてあわてて止める事もあるけど。それかギルお兄様とお姉様と私で行ったりするけどさ、ギルお兄様とのデートに私ついて行っていいの? って毎回思う。でも、ギルお兄様はお姉様が喜んでいるから私がついていくのは構わないって言ってお姉様の提案にうなずいてた。

 ギルお兄様ともまたこうして話せるとも思わなかったから、嬉しい。

 お姉様がいて、ギルお兄様がいて、私がいる。そんな日々を過ごせることが本当にうれしくてたまらないの。



 離れていた分、もっともっと、楽しい日々をお姉様達と過ごしていきたいなって私はそう思うんだ。




 

というわけでウッカ視点の番外編追加です。勢いのままに書いてみました。

そしてご報告です。一迅社文庫アイリス恋愛ファンタジー大賞銀賞を受賞した本作ですが、2017年1月6日に書籍発売いたします。よろしければ手に取っていただければ嬉しいです。

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