1
『エリザベス・ナザントという令嬢』の連載版
「エリー、貴方の妹よ」
わたしは、エリザベス・ナザント。今年三歳になった。ナザント公爵家の長女なの。
今日、わたしに妹が出来た。
お母様が、妹が出来るって喜んでいて。お父様も、幸せそうにしていて。だから妹っていう存在が生まれるの、凄く楽しみにしていたの。
揺り篭の中に眠る妹を見たら、とっても小さくて、触ったら壊れてしまいそうなほどの愛らしい存在だった。恐る恐る指でその頬に触れたら、羊の毛みたいに柔らかくて、それに驚いて思わず手を引っ込めた。だって柔らかくて、ぷにぷにしてて、ちょっと触ったら壊してしまいそうに思えてしまったから。
そしたらお母様が、「大丈夫よ、触っても」って優しく笑ってくれたんだ。でもやっぱり赤ちゃんってか弱い存在だからあんま乱暴に扱っちゃ駄目よっても言われたの。だからどんなふうに触れたらいいんだろうってしばらく悩んだんだよ。
妹の名前はウッカっていうの。
あのね、ウッカが生まれたのは雨が沢山降る時期でね、雨の女神様の名前がウッカテリっていうからそれにちなんで付けられた名前なんだよ。ちなみにわたしのエリザベスって名前は、わたしが長女だから公爵家を継ぐ立派な当主になれるように! って意味で過去にいた女王様の名前をつけたっていってたけど公爵家を継ぐってどういう事なのかまだいまいちわからないの。だから、これから沢山勉強するんだ。
お母様とお父様がね、わたしが、その公爵家の当主に立派になってくれたらうれしいっていったんだ。だから、わたしは、大好きなお母様とお父様が喜んでくれるように早く立派な公爵家の当主になりたいの。
それにね、わたしが立派になったらウッカも幸せになれるってお母様とお父様がいったの。
ウッカはね、よく泣く赤ちゃんだった。ウッカが泣くと、わたしはどうしたらいいか最初困ったの。だってわたしが泣く時は悲しい時で、だからウッカが泣くのって悲しいからだと思ったから。でもそれをいったらお母様が赤ちゃんはちょっとした事で泣くんだって教えてくれたの。お腹がすいてもなくし、ちょっとした物音とか、周りの環境でも泣くんだって。
あのね、そういう時は赤ちゃんがどういう気持ちなのか考えてお腹すいているならミルクを上げて、抱っこして泣かないのーっていってあげてあやしてあげればいいんだって。
わたしはお姉ちゃんだから、お母様が「ウッカを守ってあげるのよ」っていったの。うん、わたし、ウッカを守るよ。だってこんなにウッカは可愛くて、壊れてしまいそうなほどにか弱いんだよ。
「ウッカー、お姉ちゃんだよー」
「ウッカ、遊ぼうか」
「ウッカ、あの玩具に興味あるの?」
わたしはいつもウッカが生まれてからいつもウッカの周りをうろちょろしていた。だってウッカはとっても可愛いんだもん。可愛くて、ずっと見ていたいなって思うぐらいで。そんなわたしの事、お母様もお父様も笑って見てたんだ。
ウッカが言葉を話せるぐらいの年になってからはね、「お姉さまだよ」ってわたしの事呼ばせようと必死になったの。何かね、貴族なんだから「お姉ちゃん」じゃなくて、「お姉さま」って呼ばせた方がいいってお母様がいってたの。
お母様とお父様とわたしでね、誰が一番真っ先にウッカに名前を呼ばれるかって競争したの! 三人ともウッカに向かってね、「お母様よー」、「お父様だよ、ウッカ」、「お姉さまって呼んで。ウッカ」ってずっといってたらね、昔からこの家に仕えてくれてるばあやに「いい加減にしてくださいませ!」って怒られちゃったの。あんまりそうやって強要するのはよくないんだって。
……でも一番真っ先に呼ばれたの、お母様だったの。ちょっとがっかりした。でも二番目はわたしだったよ。うれしいよ。ウッカが、ね、お姉さまって呼んでくれるの。お父様が自分が一番最後だって凄くへこんでたの。だからお母様と二人でお父様に元気を出してもらおうって色々やったんだ。
お父様はね、お母様が大好きなの。わたしとウッカの事も可愛がってくれててね。わたしもお父様もお母様も、ウッカも大好き!
ウッカは動けるようになってから、「お姉さまぁあ」って舌っ足らずで呼んで、わたしの後をついてきてたの。それが凄く可愛くて、思わず甘やかしてしまったの。お母様とお父様もウッカの可愛さにやられてたみたいで、つい甘やかしそうになって、またばあやに怒られたの。三人で椅子に座らされて、ばあやが「全く、そんなに子供を甘やかしてはいけません」って言われたの。ばあやに怒られるのは嫌いじゃないんだよ。ばあや、大好き。ばあやはわたしのこと考えていつも怒ってくれるんだよー。ばあやは第二のお母様みたいな人で、お母様とお父様が忙しい時一緒にいてくれるの。
なんかね、後から聞いたんだけどわたしがもっと小さい頃もわたしを甘やかそうとお母様とお父様がしてばあやに怒られてたんだって。だからばあやは「前にもいったでしょう」と怒ってたの。だから三人でばあやにごめんなさいしてね、ウッカに心を鬼にして少し厳しくしたの。でもそれでも甘やかしすぎだって怒られちゃったけれど。
「おねえさまぁ」
「おねえさまぁあ、あそんでぇ」
ウッカはそんな風にわたしの後ろをついてきてたの。可愛かったの。可愛くて、わたしはウッカに遊んでって言われるといつも遊んであげてたんだよ。
そしたらね、ウッカが生まれるまでいつも遊んでたお父様のお友達の子供のギルがね怒ったの。
「何でそいつとばっかり……」
わたしがウッカとばっか遊ぶからって、ギルと遊ばなくなってたからって。ギルは寂しかったみたい。
それでね、
「……俺もエリーと一緒にいたい」
って言ってたの。ギルは寂しがり屋なんだなってはじめて知ったの。ギルは男の子だけど可愛い所あるなって思って口にしたら、滅茶苦茶怒られて、喧嘩になったの。それで洋服を汚したらお母様とお父様に二人して怒られたんだ。
それからはギルが寂しくないように一緒に遊ぶようになったの。ギルは最初、ウッカが小さくてか弱いからどう接せばいいか迷ってたみたいなの。わたしもそうだったから、「こうしたらいいんだよー」って教えたの。何だかそれが楽しかったの。ギルって物知りだからいつもわたしが教えてもらうばかりだったからね。ギルに教えるのって新鮮だったの。
わたしとギルが五歳、ウッカが二歳になった時にね、わたしは国王陛下と王妃殿下の元にお母様とお父様と一緒にいったの。
なんかね、わたしがうんと小さい頃にいったことあるらしいけど全然記憶になくてね、はじめていった王宮ってことで浮かれたの。
国王陛下と王妃殿下はとっても優しかったの。
あのね、王子様のイリヤ様(第一王子)とヒロサ様(第二王子)はとっても優しいの。でもね、同じ年のナグナ様(第三王子)は何かひねくれてるって感じだったの。素直じゃない感じが、ギルに似てたから構ってあげたの。大体お母様とお父様に失礼のないように接するようにって言われたしね。相手は王子様だもの。
それからね、よくわからないけれど何度も王宮にいってわたしは王子様たちと遊ぶことになったの。そしたら婚約? っていうよくわかんない話になったの。王妃殿下が、わたしを王子様たちの婚約者にしたいっていってるんだって。
それでね、一番年が近いナグナ様が婚約者になったの。婚約者って結婚する人なんだよ。だからね、仲良くなろうってナグナ様に話しかけまくったら、ナグナ様もそのうちわたしと話してくれるようになったの。
でもね、そのことをギルにいったら、ギルがしばらく口を聞いてくれなかったの。なんでだろう? 凄く悲しくて、ウッカにじゃれついて癒してもらったの。
お母様とお父様が笑ってくれて、ばあやが何かあったらしかってくれて、ギルと一緒に遊んで、可愛いウッカがいて、王子様たちと仲良くて、そうやってのんびりとした幸せな生活を送っていたけれどそれはお母様がなくなったことで変わったの。
次回更新未定。とりあえず幼少期から。
ものすごい勢いで続編希望が来ていて考えたら色々思いついたため、こうなった。短編の時より劣化しているかもですけど、とりあえずこんな感じになりました。
感想もらえたら喜びます。