冒険の物語
息をしていますか?
呼吸はちゃんと出来ていますか?
我慢していませんか?
ほらほら、そんなに我慢してたら死んじゃいますよ?
何?ここは息苦しいって?
うーん、そうですねえ。
私はそうは思わないんですけどねえ。
え?羨ましいって?
うーん。
私が言うのもなんですけど、そりゃ苦しいだろうなって思いますよ。
なんでかって?
だって、貴方自分で首を絞めてるんですもん。
気付いてませんでしたか?
言いたいことがあったら言った方がいいですよ?
死んじゃうほうが楽って思ってませんか?
死んだら楽も辛いもないですよ?
ほらほら、そんなに力入れると首、絞まっちゃいますよ?
指をゆっくり解いて、はい、深呼吸。
空気がおいしいでしょ?
思いつめてると酸欠で死んじゃいますって。
貴方が思ってるほど味方は少なくないですよ。
まあ、多くもないんですけどね。
なに?どうしたらいいかって?
貴方はどうしたらいいと思います?
何もしない方がいいと思います?
本当に?死にそうになってるのに?
どうせ死ぬならなにかやり返したから死んだ方がよくないですか?
ダメでももともと、当たって砕けろってね。
あ、それは告白の時に使う言葉でしたね。
ん?やっと笑いましたね。
苦しいと笑うこともできないですからね。
空気って大事ですね。
我慢してると吸えませんよ?
声を出すのも息を吸わないと出せないですもん。
貴方の首を絞める貴方の手は無くなったよ?
大丈夫、貴方はちゃんと声がだせるよ。
勇気を持って、でも頑張れとは言わないよ。
なんでかって?
だって頑張ってきたんでしょ?これ以上頑張る必要はないよ。
必要なのは勇気。あとは仲間かな?
あはは、勇者の冒険みたいだね。
そう、貴方は勇者。
貴方の世界を壊す魔王を倒す勇者なのだ!
それじゃあね。
また苦しくなったら来るといいよ。
また追い返してあげるから。
君はここに来るには早すぎるから。
それじゃ、また。
次は80年くらいあとに来るといい。
そしたらお話を聞かせてね。
君の冒険の物語を。




