お前
顔はいつも以上に疲れ果てているように見えた。
手もケアを怠ったのかカサカサだ。そして具合が悪いのか血色はいつも通り赤っぽくなくて蒼白で。
状態をあっさり言ってしまえば、抜け殻。
お前の抜け殻がわたしの目の前であるのだ。
「…マジで、意味分かんない」と私は溜め息まじりに呟く。
お前は今日も笑顔で家を飛び出して行ったはずだ。
笑顔で。
なのに、どうして、勝手に。
「…お前は、なに、かってに、死んでるの…!!!!」
目から溢れ出した涙は頬を伝っていき、そのまま重力に抗う事も無くお前の抜け殻に落ちた。
此処には、恐らく何もない。
何も無いなら、私はなんだ。
何、何、何、何。
「な、ん、に、も、な、く、て」
視界が反転し、ぐるりと円を描き、そのまま足から崩れ落ち。
お前は?
お前、は。
お前は、抜け殻なのに。なのに。
なのに、どうして、立っている、どうして。
「逆だよ、お前」
お前が笑う顔が反転した、崩れた世界で、只、浮かんだ。
此処には確実に、何もない。