ちょ、まて。これは違う!
それは、私にとっての願いでもあり、夢でもありました。
なんで、と言われたらう~ん、なんでだろ?
でも、夢だし、願いでもあります。これは、断固として変わりはしない。
それは、私の日常的な時間のときに、起こった。
落ちた、そう、落ちた。
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私は少しばかり冷静なのかもしれない。
いや、多いかも・・・?
私が、落ちたのはマンホールでも、落とし穴でも、なんでもなくて”異世界”でした。
異世界といっても、日本みたいなんだけど。
でも、王国制で王様も王子もいるし貴族もいらっしゃるみたい。
そこに落ちた私は、すでになじんでいる。日本に近いからなじむのも早かったのだと思う。
まだ、2日なんだけどね。私には、少なからずというか些細な夢、願いがあった。
それは、普通になりたい。である。
この世界に来て、それが叶ったのである。ホントに、うれしい。うれしーい!
と、心で騒いでた私、それは間違いである。今ならわかる、間違いである。
この世界は、妖怪が大量発生した近未来の日本って設定?な世界で、うようよといる、いる。
・・・・・・妖怪が。だから、元の世界では異能だった私はこっちでは異能でも何でもない。
だって、ほらあそこも陰陽術使ってる!いえーい!おじい様、こちらはお仲間がいっぱいでうれしいです!まだ、2日だけど!だれとも、仲良くなってないけど!
と、心はお騒ぎ中、神瀬神楽。陰陽師やってます!
「ぎゃー!」「いやー!」
うー?すっごい化け物いる!!でも、あっちでもいたし見慣れてるもんよねー。
「なんで、効かない!!」
「最高ランクが来るまでのしばしの辛抱だ皆!」
さっきから、最高ランクがどうのこうのと、そいつ一発でやれちゃいそうなやつなのにー?
「おお、王子殿下自らきてくださったぞ!」
キラッキラの光が、見える。わお、あれが王子!さすが、綺麗顔!
「皆、逃げ遅れるなよ。」「はい、王子殿下!」
「ゆけ、邪魔になる」「はぃぃぃい!」
おおー、すっごい。男までも、虜にしてしまうほどの美貌ですか、そうですかー。
切れ長の瞳を、すぅと細めこちらを見た。黒髪が、風に揺らいで、幻想的な風景に見えた。
後ろに、凄まじいほど怒ってる妖怪いるけど。まぁ、なんとまぁ、綺麗な男でしょうか!
和服、似合いますなー。じい様も、きてた狩衣がすっごい様になってますー!
でも、あの恰好で王子って似合わなっ。
と、一人で笑ってる私。「おい、逃げ遅れるな」
そういって、ひょいっと私を後方に投げる男。否、王子。やめてくれ、私水干なんだから!
ズルズル服なんだから!
「女、王子殿下の邪魔をするでない!」「自分の身、自分で守れるし」
「何を言う?!あれは、殿下程のランクでないと!!」
でもさ、その王子殿下様眉間にしわ寄ってますよ?苦戦してるみたいですよ?
いいんですかー?
「めんどーだなぁ。・・・オンベイシラマンダヤソワカ」
毘沙門天さまよ、私に功徳を。
「あらゆる、邪鬼よ。我が、通力において滅されよ!」
懐から取り出した、呪符をとりだしてペイっと妖怪に投げつければ一気に消えた。
「オンクロダノウウンジャックソワカ」
この地の、穢れを祓ってくださいな。
それを、終えて後ろを振り向けば目をこれでもかと開く男たち。
王子はというと、不敵な笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「呼んだはずの嫁がいつまでたっても現れなかったのは、君がこんなところにいたからか。」
嫁?それに、首をかしげて私はじぃと王子を見つめた。
「ああ、そうだ。見つけたことだし、婚礼をあげようか。君で間違いないだろう?異界の陰陽娘」
「へ?」
「俺の、嫁にふさわしい娘を異界から呼ぶこと。そう、占に出たからな。」
そう、いって口角をあげる王子に戦慄を覚えた。
ひぃ・・・「しかも、顔も悪くない。通力も、思ってたよりはるかに凄まじい」
「・・・・ち、ちがうと・・・信じたい!」
だって、異界からきた陰陽師。陰陽娘だ。そこ、あてはまる。
ちょ、ちょ、ちょ、普通じゃない展開です!
このままじゃ、王子の嫁にされちゃう!
「オンアロリキャソワカ」ぽつり、呟いたその真言を聞いた王子はにっこり
「やだな、災難なんてないって!」
引きずられた、その先は純和風のお屋敷。
十二単を着せられ、婚礼の儀式。
その後、その後、聞きたくもない真言が周りの陰陽師たちから贈られる。
『オンシャレイジュンテイソワカ』
功徳、安産、子授けって・・・
ちょ、まて。これは違う!
私の未来、違ーう!
異世界に落ちて、3日で王子の嫁ってどういうことよ。