三月ウサギ
三月ウサギの家の前に来ると、アリスは扉を開けた。
「三日月うさぎ! 久し振りね! アリス様が来てあげたわよッ!!」
扉を開けると同時にアリスは高々に叫んだ。 すでに女王様気取り
……な、なんでもありません。
「アリス~! 久し振りだね。また、紅茶を飲みに来てくれたの?
嬉しいよ~ うれしいよ~ 」
三日月うさぎは注ぎ口が3つあるポットを振りかざした。
「おやぁ~? お客さま~?」
「そうよ。ほら、ありす。挨拶くらい、率先してしないとダメでしょ」
「あ……初めまして。ありす です。白いうさぎさんを追いかけていて……」
「お客さまだ~~~!!! お客さまだ~~~~~~!!」
三日月うさぎは 歌を歌っているような しゃべり方をした。
世界についていけていない ありす は、三日月うさぎの発狂とも取れる声と動きに固まった。
「怖いの? 三日月うさぎは喜んでるだけよ。 よかったわね、ありす。歓迎してもらえて」
アリスは勝手に座ると、三日月うさぎが注いだ紅茶を一口飲んだ。
「おいしい? おいしいかい? アリス うれしい」
「ええ、美味しいわ。私も会えてうれしいわ、ネムリネズミ。起きてくれたのね」
アリスは右手にカップを持ちながら、上品に微笑んだ。
「ありす、どうしたの? ほら、座りなさい」
アリスは ありす に隣に座るように促した。
「え? あ……はい」
ありす が アリスの左隣に座ると、すぐに紅茶の入ったカップが差し出られた。
三日月うさぎは 得意そうに笑っていた。
ありす は 白うさぎと違い、三日月うさぎは下品に思えて紅茶を飲むのを躊躇っていた。
「ねぇ、マッドハッターは居ないの?」
「マッドハッター?」
ネムリネズミはアリスに聞き返すと、返答を待たずに眠ってしまった。
「そうよ、マッドハッターよ。居るでしょ?」
「ハッター 這った なに 貼った~~~?!」
「もう! 三日月うさぎ!! ハッタ でも、もういいわ! 居るでしょ?狂う程にキザな帽子屋よ!!」
「何?アリス。 僕に会いに来たの?」
アリスは振り返った。
「なによ……貴男、『僕』なんて 言わなかったじゃない」
「『私』というと、この台詞メインの世界じゃヤヤコシソウ そうでしょう?
利口で美人のアリス」
マッドハッターは帽子を取ると、跪きアリスの手を取った。
あれ? アリスは慌てて手を引っ込めた。
「私に触れるなんて、100億年早いのよッ!!」
そう言いつつ、アリスの顔は赤い。
「五月蝿いッ!そんな説明 要らないのッ!!」
ああ、そうでしたか。すみません。やり直しますか?
「進めなさいッ!!」
御意。
「アリス姫はご機嫌ナナメかな?」
「違うわよッ! なんで、そんな……」
「『狂う程にキザな帽子屋』がご要望かと」
「違うってばッ! 三日月うさぎに聞いていたから、言っただけで……」
「そう?」
「そうよッ!!」
「やり直す?」
「~~~~!!」
「僕は、どっちでもいいよ?」
「進めなさいッ!!」
「あ~あ、残念だな」
あの……。
「ああ、ごめんね。進めないとね」
マッドハッターは微笑んだ。
「アリス、ありすの話は聞いたのかい?」
「え?」
二人は同時に返事をした。
「アリス、僕は君に答えの無いナゾナゾを沢山出した。
その答えは見つかった? だから 僕の事を呼んだの?」
「あれは あれには、意味があったの?」
「おっと、僕にそう聞くのはナンセンスってもの。
君だって、そう思うだろ?
アリス、君は 幼いこの ありす の話をよく聞いた方がいい」
アリスは ありす を見た。
三月ウサギは こぼれる程に紅茶を注いだカップを マッドハッターに差し出した。
「ありがとう」
マッドハッターはカップを掲げた。
「祝おう! 何でも無い今日を。今日の再会は何でもない。
さぁ、早く祝ってお茶会を!!」
そう言うと、マッドハッターは椅子に腰かけて 紅茶を飲み干した。
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