ありす
「あんた、何やってんの」
アリスが走って行った先には幼い少女がいた。
年は10歳前後といったところだろうか。
「なにって……通りたいんだけど」
幼女の声はアリスの威圧感で徐々に小さくなっていった。
振り返った幼女は 髪が肩に着かないくらいだった。
超ストレートな髪質のアリスとは違い、ふわふわした
そう、 いうならば 雰囲気と同じように ふわっとした感じの髪の毛だ。
「あんたねぇ、
いくら ちびっ子だからって、そのまま通れる訳ないじゃないの。
あんた、常識人設定でしょ? 本当はバカなんじゃないの?」
アリス、『設定』とか言わないで。
「ったく、イチイチうるさいわね! 黙りなさい。 台詞メインにする気があるの?」
……すみません。
続けて下さい。
「じゃぁ、どうするの?」
「こうするのよ」
アリスはしゃがむとテーブルの上から小瓶を取った。
幼女に向かって 得意げに笑うと
小瓶から一粒 なにかを取り出して、口の中に入れた。
以前の出来事は、幼かったアリスにとって強烈な出来事だった。
忘れた事は無かった。
アリスの身体はみるみる内に小さくなっていった。
「うわぁっ」
幼女は歓喜に似た声を上げ、アリスの真似をした。
「利口な子は助かるわね」
アリスは悪女の笑みを浮かべた。
「ちょっと!」
は、はい。
「正しく、直しなさい」
え?
た、正しいです……けど。
「私が直せと言ったら 直 し な さ い 」
……後半がゆっくりで怖いんですが。
「早くッ!!」
は、はい。
え、えと もう一回『うわぁっ』お願いします。
「は~いっ」
アリスの身体はみるみる内に小さくなっていった。
「うわぁっ」
幼女は歓喜に似た声を上げ、アリスの真似をした。
「利口な子は助かるわね」
アリスは美しく微笑んだ。
「私はアリス。あなたは?」
幼女は狐につままれたような表情をした。
「わたしも……ありす」
「ちょっとッ!!」
は、はい。
「どうなってるの? 聞いてないわよ?!!」
あの、アリス様。 美しいお顔が台無しで……
「五月蝿いッッツ!!!」
「え、えと。
お姉ちゃんはカタカナの『アリス』
わたしは、ふらがなの『ありす』 なんだって」
「ふ~~~~~ん」
ご、ご納得頂けましたか?
……し、視線が怖いです。アリスお嬢様。
「つまり、Wアリスでも カタカナとひらがな表記で
問題ない~~~~~ってバカで浅はかな考えの稚拙文章ね?」
ご納得頂けたなら、何よりです。
「納得した、なんて言って無いわよッ!」
「いい?あんたが『ありす』という音を使う以上は、それ相当に相応しい人物だって事よねッ?!!」
「え? わたし、わからない……」
「あんた、天然キャラの間違いじゃないの」
ま、まぁ、アリス。
その辺りは話が進んで行けばわかるらしいから。
ね? ね?
「あ、っそ。ジレジレさせるんじゃないわよ?」
ああ、怖い。
そ、それはアリスの進んでくれるテンポによるんじゃないかなぁ……
「そうなの? なら、そういう事は、早く言いなさい?!」
あ……美女が台無しの顔してるよ?
えと……
そ、そう。 美しいよ、アリス。
アリスは美しく微笑んだ。
「私はアリス。あなたは?」
幼女は狐につままれたような表情をした。
「わたしも……ありす」
「そう。じゃぁ、仲良くしなきゃね。よろしく、ありす」
アリスはありすに手を差し出すと……
あれ。
お~い。
……。
二人は手を繋いだまま行ってしまいました。