第一部 二話 神様(自称)とチュートリアル
僕が次に目を覚ますと、そこは一面の霧だった。周りが何も見えない。
「どうなってるんだ?」
こんな霧だらけの場所が異世界なのだろうか・・・と思考を巡らせていると、いつの間にか数メートル先に人がいる。
「異世界へようこそ!君が次の召喚者だね。」そいつが話しかけてきた。よく見えないので近づいてそいつを観察する。
「お前はだれだ?!おれはどうなったんんだ?」そいつはなんというか、異常だった。人のようであることはわかるのだが、顔が見えない。いや、理解できないのだ。強いて言うなら、モザイクがかっているというのだろうか。おまけに何ということだろう。後光がさしている!
「誰か・・・ね。じゃあ神様とでも名乗っておこうかな。君は召喚されたんだよ。儀式をしたのは君だろう?」
そいつは神(自称)らしい。
「ちなみにここはまだ異世界じゃない。厳密に言うと異世界だけど、君が行くのはここじゃない、ここはまあ、チュートリアルみたいなものさ。」
神様よ、随分とゲーム好きなんだな。
「それに君が儀式で唱えた呪文、意味わかってた?君ねえ、もう元の世界には戻れないよ(笑」
悪戯っぽく神が微笑む。
「おい、ちょっと待てよ!そんなの知らねえよ!」
もう戻れないという事実を知ると、どうしようもなく萎えた。あのつまらない日常生活はどうでもいいのだが、もう父を探すこともできないのだろうか・・・
それだけが元の世界に残した心残りだった。
「そういえば10年ぐらい前にも、人間を一人召喚したような・・・ニヤリ。」
神様がタイミングを見計らったかのように呟く。
「何だって?それは父さんなのか?!」
すかさすそれに噛み付く僕。こいつもしかして僕の心を読んでるんじゃなかろうか。そんな考えすら見えているかのように、
「さあね。でそれが君の父さんだったとしたら、君が異世界行くのを躊躇う理由はなくなるんじゃないかい?」神様は聞いてきた。
確かにそうだ。何年経っても見つからない父。死んでいるとしても死体すら見つからないのはおかしい。それに自分がこんな理解不能な状況におかれている中で、もう僕の常識は通用しないのかもしれない。神様はどうやら僕の心を読んで言ってるみたいだし。だったら父は本当にその異世界とやらにいるのかもしれない。
一呼吸おいた後、
「わかったよ。その異世界とやらに行こう。でもそれには条件がある。僕の能力をその世界で生きていけるようにしろ。それぐらい神様なんだから朝飯前だろ?」神様は少しの間考え込み、
「さすがは君だ。考えてるね。確かに君の常識は既に消えたようなもんだ。このままの状態で放り込まれても数日で干からびるのがオチだしね。」やっぱりこいつ僕の心を読んでやがる。
「いいよ。君に幾つかのチカラをあげよう。ボーナスってやつだ。最低限あっちで生きていけるようにね。でもこれはよくあるチート、ってやつじゃないからね。変なことしちゃあだめだよ。ホイッと。」神様の言葉と共に、自分の頭に何かが流れ込んできた。テストの前に猛勉強した時みたいな感じだ。それだけではない。体全体が熱い。これがエネルギーってやつか、と勝手に納得する。
「これで大丈夫。一通りの準備は済んだ。これから先は君次第だ。君が行く世界はそうだなぁ・・・ドラ◯ンクエ◯トに近いかな(笑。僕は君をずっと見ているよ。次に君と会うのはいつだろうね。その時はここの霧が晴れているといいね。君の心と同じように。まあ時が来たらまた呼ぶよ。じゃあ元気でね。」そういうと神様は軽く指を鳴らした。「バイバイ、主人公。君がイースの地で創る物語に期待してるよ。」その言葉を聞いた瞬間、僕の真下に突如、真っ黒な穴が空き、言葉を発する間もなく僕は暗闇に吸い込まれていった。




