第一部 十五話 再会と発見
こんにちは日本の皆さん。そちらは暑くなってきましたか?
イースは一面の荒野。季節なんてありません。さあ一日の始まりです。
今日はやっとカイアスが帰ってくる。
口にすれば三日だが、その間にまた俺は成長できたような気がするな。
うまい飯に、カプセル、剣技、魔術、そして昨日の兄弟。
ここでの出来事一つひとつが俺を少しずつ、確実に成長させていっているのを感じるよ。
さて、カイアスのところに行くか。
あいつはもうこちらに帰っているらしいからな。
「おう、しばらく見ないうちにまた逞しくなったね、ケリィ!」
下に降りると、そこにはいつになくハイテンションなカイアスがいた。
そのせいかこちらの気分も高まる。
「たった三日ですよ、カイアス!いやー、久しぶりだなぁ!」
カイアスとはまだ会ってから少しの期間しか経っていないが、この時俺はカイアスがまるで長年の友人のように感じられた。こちらに向けられる満面の笑みから、きっと彼もそうに違いない。
その後俺はこの充実した三日間の出来事を報告した。
彼も三日間の調査で大きな成果があったらしい。
「これはイースにとって大きな進歩だよ!その遺跡で、なんと・・・」
カイアスが話を始めようとしたその時、部屋の扉が大きく開け放たれ、ローブを羽織った白髪の老人達が入ってきた。この街ではまだ見たことのない人達だ。
すると先頭の一際長い髭の老人が、
「カイアス殿!また独断で調査に行かれたとは誠か!このギルドを預かっているという勤め、忘れた訳ではあるまいに。」
えらく偉そうだ。
髪の色と背丈こそラモラック爺さんと同じくらいだが、その顔には権力の中枢にいる人間独特の傲慢さが滲み出ていた。
みると、先ほどまでの表情は消え、カイアスの顔は初めて会った時のものに変わっていた。
「これは、智者の方々にガルフ殿。わざわざここまでお越しにならずとも私から参りますのに。」
「我々がここにくるというのがどういうことか分かっておるか?カイアス殿。そなたの魔術の有用性を認めているからこそ、そなたを今の立場に置いているのだぞ?それが勤めを他所に独断で調査など!転移者の身分でその立場、我々の力添え無くしてはあり得ないものだという事、ゆめゆめ忘れるでないわ!」
後ろの方で微笑が起こる。人を小馬鹿にする笑いだ。
「はっ、その通りでございます。しかし調査は我々の発展に繋がる貴重な物でございます。なにどぞこれにてご容赦を。」
そう言ってカイアスは部屋の隅から何かの入った袋を取り出した。
「ふふぉ、仕方ないのう、今回はこの程度に済ませておくとするが、そなたの立場、忘れるでないぞ。」
それを受け取るとガルフと呼ばれた老人と取り巻き達は立ち去って行った。
数秒の間隔の後、
「あの連中は何なんだ、カイアス?」
尋ねると、彼は大きなため息をついた。
「あいつらは智者。いわば国会みたいなものさ。権力の一番上の連中だよ。僕が最前線の防御策を持っていたのを知って、この仕事につけるように仕向けたのもあいつらさ。でも僕が調査みたいなことをするといつもこうやってくるんだ。僕は元老院から嫌われているから。特にあのモウロクのガルフとかね。」
智者。それがこの街の影のリーダー、つまり人間族の指導者ってわけか。
カイアスも大変なご身分だ。
「だからさっきみたいに金を渡しておけばいいんだ。そうしてるうちは僕はこの職についていられる。それに、あの老人達は秘密が多いから悪戯に嗅ぎ回らない方がいい。」
きたねぇ。あの老人ども。
「ああ、せっかくの話を止めて済まない。ケリィ、いいかな?」
「ああ、続けてくれ。」
もう夜だ。イースでは珍しく、鳥の声が聞こえる。カイアスはまるでこの話題を話すのを待っていたと言わんばかりに表情が明るくなった。
「で、今回の調査の事なんだが、今回のはすごい発見があったんだ。表向きの報告にはいつも通りの防衛用の設備と言ってある。これを知っているのは僕と、今からはケリィ、君もだ。くれぐれも他言無用で頼む。」
「ああ、でその発見とは何なんだい?」
「ずばり、転移装置だ、それも大型の。
いままでの調査で小型のくず鉄みたいな装置は見たことがあったんだが、あんなのは初めてだ。これは僕自身の考えだが、あの装置と遺跡にはまだ僕らの知らないなにかがあると思う。」
その話をきいて俺は戸惑いを隠せない。
「転移装置?転移の魔法は使えないんじゃないのか?」
「魔法じゃない。装置だよ。今でこそ魔法=古代文明みたいに思われてるが、あれは魔法じゃない。魔法とは別の、古代文明のれっきとした技術だ。きっと転移魔法とは別の目的があるに違いない。」
ふむふむ。技術≠魔法ってことか。
「それに、古代文明について調べようとするたびにああやってさっきみたいに智者達が妨害に来る。彼らは何かの秘密を持ってるんだ。」
確かにその可能性も考えられるのは事実だ。
「それがカイアスの報告かい?」
「そうだ。そこで一つ、君に頼みがある。」
きた、もうわかるよそのお願い。
「僕と一緒にその遺跡まで来てくれないかっ?」
ほらきたー。
まあ親愛なるカイアスの頼みだからノーとは言えないけど。
「ああ、いいよ。でもどのくらいの旅になるんだ?」
「往復で三日間だよ。そんなに大した距離じゃない。」
「そうか。じゃあ明日出発だな。」
自分でいうのもなんだけど、俺決断はえぇー。
「もちろんそういうと思ってたよ!僕ももう準備はバッチリなんだ!今すぐにでも出られるくらいさ!」
それは早すぎる。というかそれ以前にカイアスってこんなキャラだったっけ。普段そんだけ気を使って演じてるってことか。こいつも大変だな・・・
「お、おう。じゃあ明日の昼にしよう。こちらもいろいろあるからさ!」
「わかった。じゃあ調査の為臨時出張ってことにしとくよ。黒の魔術師も同行、って書いておけばまあ大丈夫!
何回も言うけど、このことはくれぐれも秘密にしておくんだよ。」
「分かってるよ。じゃあまたな。」
こうして俺たちは密会を終え解散した。
その時日付不明9:30pm。
(イースには日付の概念がない。唯一腕につけている壊れたソーラー時計が時刻を教えてくれる。)




