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第一部 十四話 剣技と兄弟

おはよう。

今日もいい朝だ。さて今日も鍛錬に励むとしよう。なにせカイアスが帰ってくるのは明日だからな。この間のドラゴンの件もあるし、

次はどんなクエストがくるかわからないし。

さっさと朝食を済ませ、準備をしてから訓練場に向かう。


昨日俺が術をぶっ放していた場所には先客がいた。白髪の剣士と若い男性が二人だ。的を標的にして懸命に練習している。

みたところどうやら親子のようだ。

お互いに軽く挨拶を交わす。

すると父親の方が俺の指輪と服装に気づくと、

「ま、まさか、ドラゴンを一人で討伐したとか言う黒の魔術師様では・・・!」

「あっ、まあ、そう・・・です。ケリィ・マーセナスです。」

俺が名乗ると、父親は俺に構わず熱心に剣を振るっていた息子二人を慌てて呼ぶと、俺の前に連れてきた。

「黒の魔術師様の前で失礼な真似を・・・私はラモラック・パトロスと申します。以前は兵士として務めを果たしておりましたがもう歳で・・・。ケリィ殿の戦いっぷり聞いておりました!こいつらは私の息子たちで。これ、きちんと挨拶せんか!」

頭を叩かれた息子たちは渋々と俺に頭を下げる。

「・・・ジースです。」

「・・・ジョルジュといいます。」

二人は背が高く、面と向かうと軽く俺の身長を超える。まああちらからしてみればなんでこんなチビが、ってなるのも分からなくはない。

挨拶も済ませたし彼らもいるので、今日は隅の方で魔術の試験運用でもしようかとしていると、ラモラック爺さんが、

「これもせっかくの機会!ぜひともこのバカ息子達に魔術師様の魔術を見せてやってはくれませんか。こやつら剣の腕は多少なりとも立つようですが、魔術の方はちっともで。小さい頃から剣魔両道と教えてきたのにまことに恥ずかしい・・・。」と駆け寄ってきた。

剣魔両道ね、そんな言葉があるのか。

文武両道はウンザリだけどそれなら悪くないかも。

それにいいアイデアを閃いた。

「魔術をお見せするのはいいですが、その代わり俺にも少しばかり剣術を教えてくれませんか?」

「魔術師様が剣を?ドラゴンを倒す位の腕前ならば必要ないとは思いますが・・・分かりました。息子達と手合わせさせましょう。」

それなら話は早い。

俺はジースとジョルジュを呼び、彼らの前で玉炎と獄炎壁を披露して見せた。だが彼らは何とも反応がない。

「これが魔術の中でも火属性の術です。剣魔両道を目指すそうですね。頑張ってください。」

うわー、すごーい!凄いですね!どうやるんですか?!

というセリフが聞こえて・・・こない。

その代わりに聞こえてきたのは、

「へぇー、これが噂の魔術師様か。こんなの剣一本あれば勝てるわな。」

というジースの舐めまくったセリフだった。

イースに来てからまだ完全にここの生活に溶け込めたわけではないが、ここでの俺を否定されたようで少し腹が立った。

するとそれを察したかのように、ジョルジュが、

「ケリィさん。良かったら僕らとお手合わせ願えませんか。」

「もちろんです。お父様ともそういうお話でしたから。」

この二人はどうやら自分たちの剣術にかなりの自信があるようだ。

「そうでしたか。ではケリィさんは魔術を使って結構です。もし私達が負けたら大人しく魔術の勝利を認めましょう。」

ほほう。こいつら黒の魔術師をとことん舐めてるようだな。

俺と二人は訓練所の中央へ歩き出し、お互いに向かい合う。

「さあ、行きますよ!」

ジョルジュの掛け声と共に二人がこちらに駆け出す。

それに合わせて、俺も右腕で無詠唱魔術を発動させる。

まずは先に飛び出してきたジースの足元を掬う。と同時ににジョルジュが反対側から迫ってきた。

すぐさまこちらも先ほどと同様に足元を崩せばいいだけだ。右腕に念を込めて術を発動させる。

ジョルジュの足元の地面が抉れ、足を掬う。だが彼は素早いステップでそれを躱すと、こちらへの攻撃を再開した。

「僕はジースと違って、冷静なんです。」

「うるせえぞ冷血兄!」

いつまにか態勢を立て直したジースもこちらに迫る。

一気に距離を詰められるとこちらに勝機はない。あまり荒いのは使いたくなかったが仕方ないか。

覚えたばかりの水武術を発動させる。

水刃(アクアカッター)」。水圧を上げて鋭くした水を飛ばす、シンプルといえばシンプルな術だ。

さらに無詠唱版は黒色は当然のこと、放った水刃が分裂&目標追尾してくれるというおまけ付き。

ああなんてお得なんでしょう水魔術。

突然飛んできた黒い水の刃に驚く二人。

「チッ!!」

それぞれ剣でガードする。

その程度じゃ終わらんぜお二人さん。

続けて玉炎をお見舞いする。

「ぐはぁ!」

耐えきれなくなったジースが吹っ飛ぶ。

ナイスな推進力でしょ俺の炎。

相手はあと一人。こうなればあとは簡単だ。冷静に行こう。

「ほれほれほれ〜っ。」

水刃を連続で飛ばす。

分裂した刃は三方向からジョルジュに襲いかかる。

あとは彼が防御に徹したところにあとは軽く玉炎をお見舞いすれば俺の勝利。

のはずだった。

刃が彼に襲いかかる瞬間、彼の動きが突然疾風の如く加速したかと思うと、瞬く間に華麗な三連撃で刃を打ち払い、俺の目の前に突進してきた。

繰り出される深い斬撃。

その完璧な動きに見とれてしまったほどだ。

まずい。やられる。

反射的に右腕でガードする。と同時に指輪を掲げて彼の手元に衝撃を発生させた。

カキィッ!!と金属のぶつかる音がしたあと、彼の手から剣が吹っ飛ぶ。


一瞬の沈黙のあと、

「お見事です。参りました。」

とジョルジュが告げる。


終わった。全くヒヤヒヤさせやがって。


「お見事、魔術師様。さすがですな。これでこのバカ共の薬にもなったでしょう。」

ラモラック爺さんはさも満足そうに手を叩いている。


だが薬になったのは俺の方だ。ジョルジュの最後のあの動き。右腕が生身の腕だったら完璧にやられていた。


「ってて・・・なんだ兄さん負けたのかよ!俺だってもうちっとやりゃあな・・・」

ジースも目覚めたようでわめき散らしている。


おれはジョルジュの元へ歩み寄り、

「あの最後の動きはなんだったんですか?正直驚きました。」

と質問した。

その質問に彼は、

「えっ、ケリィさんは剣技を知らないんですか?」

と驚きの声をあげる。

剣技。聞いたことのない言葉だ。第一に、俺は英雄扱いなどされてはいるが実践経験など皆無に等しいのだ。

「よ、よかったら教えてくれないかな?」

と聞き返す。

「ええと、剣技(ソードスキル)は剣士の嗜みです。特定の動きを繰り出すことで、ただの剣術を(スキル)の域まで引き出すことが出来るんです。もっとも、僕たちの親父なんかは若い頃は剣を極め過ぎて普段から剣術が全てスキル化してたとか言ってますが。」

ほう。スキルか。というと(かた)みたいなもんか。

「さっきのは剣技のなかでも基本的な『三連斬』です。まさかケリィさんが知らないとは思いませんでしたよ。」

「えっと、じゃあさ、剣を投げる、みたいなものもあるのかな?」

「ええ、『投擲剣』ですね。それも基本技の一つですよ。」

まてよ、じゃあこないだのドラゴンを倒した時のもスキルか・・・?

「なに、あんた剣技知らねえのか!じゃあ俺が見せてやるよ!おいジョルジュ兄!」

ジースが割り込む。

「仕方ないな・・・。ケリィさん、あいつの動きを見ていて下さい。」

二人は訓練場の中央で向かい合うと、ジースが動き出した。

姿勢を低くし、動きが加速したかと思うと、目にも止まらぬ早さで連続で斬り込む。ジョルジュもそれを上手く受け流している。

「これが剣技だ!さあ、おまけに魔術師様にいいもの見せてやるよ!」

そう叫ぶとジースが剣を逆手に持ち替え、ジョルジュ目掛けて技を繰り出した。

その速さは先ほどの比ではない。

逆手の利を活かして繰り出される剣撃は気のせいか赤い色を帯びているように見える。

その連撃の数、実に十。

「みたか!これが上級剣技、『火重撃』だ!」

見ると、技を受けたジョルジュの方はかなり辛そうだ。よほど重い攻撃を受けたのだろう。

「はぁ・・・ざっとまあ、こんな感じです。お分かりいただけましたか?」

「オーケー。よくわかったよ。ありがとう。」

気がつけばもう日もくれそうな時間だ。

「おっ、そろそろか。」

俺は元日本人。時間は守るのがポリシーだ。

「今日はありがとうございました。とても参考になりました。」

三人に挨拶をし、訓練場を出る。

出る間際に、

「面白かったぜぇー!ケリィーッ!」

「また会いましょうーーっ!」

と二つの大きな声が聞こえた。

なんだかんだ言ってあの二人は面白いな。仲間にするならああいう人達がいい。


ギルドに戻り、夕食を済ませてから部屋に戻る。

剣技、仲間。


なんだか今日はとても充実した日だったような気がする。


あしたはカイアスが帰ってくる。俺がそれが新しい何かに出会える機会のように思えてならなかった。



おしらせ:

ケリィ は けんぎ を覚えた!


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