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第14話(サイドB)

男性視点。今回は短いです。

 王太子棟にミーアが帰ってきた晩、彼女は後ろめたそうにこちらの様子を伺っているようだった。何があったのか、彼女から告げられることはなく。尋ねることは、しなかった。


 例の噂の出処調査は着々と進み、金髪至上主義の神官による集会が五ヶ所で一回ずつ行われたことがわかった。神官は教えを説いて、さっさと旅立ったらしい。人相や特徴から王の探していた男のようだが、すでに国外へ出た可能性が高いという。集会に参加した者は、一回につき十人以下と少人数で、全員仮面を被り身元がわからないよう用意周到だった。情報が少ないため、参加者を絞り込むのは、時間がかかりそうだった。


 重い気分で王太子棟へ戻ると、ミーアが体調をくずし夕食は部屋でとるという。

 彼女の部屋へ行くと、彼女は眠っているらしい。侍女の咎めるような視線を無視して、寝室へ入る。

 王族と縁続きになるためにミーアに近付いたと彼女は考えて、ジェイナス叔父に結婚を断るよう頼んでいた。彼女がそう言うのだから、あの男はそうなんだろう。だが、ミーアはどう思っていたのだろう。誰がみても恋仲だと思うような振る舞いだったらしい。男の腕の中にいるのを見たときは、カッとなったが。あの時、彼女の二の腕を引けば簡単に歩みよってきた。変顔で何度も彼を振り返っていた。何を感じていたのか。何を考えていたのか。

 彼女が僕を男として意識することはない。ただの雇い主以上には思ってくれているだろうが。なぜ、あの男と同じ舞台には上がれないのだろう。雇い主だからだろうか。身分のせいなのだろうか。時々困った顔が返される。僕の機嫌を損ねないよう、気を使って僕の様子を伺う。そんなことを望んではいないと思いながら、辞めると言わせないのだから、矛盾している。いっそ彼女が辞めたら、変わるのだろうかと思いもする。だが、そうなれば、彼女は僕の手の届かないところへ行ってしまう、そんな気がする。こんなに近くにいるのに。

 ベッドで眠るミーア。額にかかる髪を指ではらい、熱がないことを確認する。ベッドの枕元に腰掛けて、寝顔を見ていると、ミーアが目を覚ました。ぼんやりした瞳がゆっくりと僕を捉える。ふんわりと目と口が弧を描き、微笑んでいる。まだ寝ボケている。寝起きに僕を見るといつもこうだ。僕の時だけ笑っていると知ったのは、いつだったか。それが嬉しくて、彼女がうたた寝した時は目が覚めたら見える位置で起きるのを待つのは、癖になっていた。

 しばらくして、彼女が目を瞬いて焦点を合わせようとする。しだいに驚いた表情になり、跳ね起きた。部屋から追い出そうとするのを無視して、彼女の夕食に付き合う。彼女の様子はいつもと変わりがない。


「王女様が出席される子供会に付き添いたいんですけど」

 社交界で予想以上に妹の悪口が広がっているとは聞いたが。彼女はそれで妹が心配になったのだろう。ミーアは、あの男より妹の方がよっぽど好きなんじゃないかと思うのは、気のせいだろうか。妹を心配するなら、少しくらい僕のことも心配してくれてもいいんじゃないのか?


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