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「そろそろお腹すいたね」
時計を見ると、12時半になろうとしていた。
「んじゃ、俺はそろそろ退散するかな」
名残惜しい気もするけど、本来の目的、コンビニに向かうとしよう。
「んじゃ、またな」
「じゃあね」
教室を出て階段を降りる。
「おう、これから帰宅か?」
下から、去年来た若い市原先生が上がってきた。
「いや、まだいますよ」
体育を担当していて、いかにも熱血といった先生だ。
「うわっ!?」
2人の声が重なる。
いきなり、目の前に赤く輝くネックレスが現れた。
「……なんだこれ?」
浮いているネックレスを恐る恐る取ってみる。
「触らない方がいいんじゃないか? 大丈夫か?」
銀色の紐に球体がくっついていて、更に球体に正八面体のダイヤモンドのようなものが連なっている。
「……っ、闇?」
気配を感じて後ろを振向くと、自分より一回りぐらい大きい黒く歪んで迫ってきていた。
「遊馬、危ない!」
そして、抗う暇もなく飲み込まれてしまった。
「神隠し? ……またなのか」
市原は眉の内側を引き上げた悲しい表情になった。
――学校の図書室。
「あいつ、おそいな……。なにやってんだ?」
またせるとはいい度胸だな。
帰ってきたらどうしてやろうか。
「この本なんだ?」
ふと、遊馬が持ってきた本に目が止まる。
今更な気もするが、ぱらぱらとめくって見た。
「……?」
『ぼうけんのはじまりです。
この本をひらいた貴方が主人公です。
一緒につれていく仲間を1時間以内に3人えらびなさい。
名前をよぶだけでいいです。』
遊馬が言っていたように内容が意味不明……、さっき開いてたからあいつが主人公ってことか?
だとしたら、俺も入ってるよな。
『一度えらばれた仲間は変更できません。
人数があわない場合は正常にはじまらないおそれがあります。
この本は攻略するにあたりとても重要なのでずっともっていてください。』
次のページからは何も書いていない。
……信じられないが、一応しばらくこの本は持っとくか。
そろそろ1時間だろうし、悪戯ならあとで焼き払えばいい。
「……ん?」
目の前に緑色に輝くペンダントが現れていた。