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7月20日、3年の1学期の終わり。
俺は一冊の本を見つけた。
――これが始まりだったらしい。
「お前また1位かよ! 一回でいいから窓から飛び降りてくれ!」
「ちょっとまて! その一回が重要だから! ここ4階!!」
嫉妬かしらんが理不尽なことを言われている俺は、遊馬俊。
家から近いというだけの理由で、ここらへんで一番評判の悪い高校に入学して7回目の通知表1位を獲得。
学期の終わる度に渡されるので、今日は三年の最初の終業式。
時間で言うと終業式後のLHRが終わり、まだ午前中だが放課後だ。
「――そんじゃ、2学期にまた会おうぜ」
「おう。じゃあね、てっちゃん」
くだらない話に終止符を打ち、去っていく友に手を振るまではいかなくても目線を2秒ほど送っておく。
「健吾、3時まで待つんでしょ?」
2秒後に、俺は視線を少し手前に戻し話しかける。
就職する生徒は3時まで学校に残って校内選考の結果を聞くらしい。
「当たり前じゃん、ケンカ売ってんのか?」
「えぇ~、なんでそうなるの? 俺の扱いひどくない?」
「いや、んなことないっしょ」
「まぁいいや、暇だから俺もいるわ」
一番仲がいいと俺が勝手に思っているこいつは、吉井健吾。
今日で引退だが柔道部の主将で坊主頭、ノリがよくクラスの中で一番目立つ男子。
一番といっても、クラス31人なのに男子8人しかいないというね。
ついでに、俺、級長やってます。
……どうでもいいですね、はい。