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――廃れた商店街の裏路地。
蹲っている学生。鉄パイプや木刀を持った人相の悪い十数人の男達。
「よぉ……、山下。てめぇ、粋なことすんじゃねぇか」
「……」
向かい合って山下は立っていた。
「俺らの誘い蹴っただけじゃ飽き足らず、こいつのために俺らの仲間に手ぇ……出すとはよぉ」
なんで、お前らの仲間にならなきゃいけねぇんだよ。
べらべらとしゃべっている男は学生を蹴った。
「やめろ」
「あぁ!? なんだ、聞こえねぇよ!」
更に蹴り上げる。
「……」
「ぐっ……!? やりやがったぁ!! 今日は一人や二人じゃねぇんだぞ!? イかれてんのか!?」
無意識に殴っていた。
その勢いでよろけた奴を仲間が支える。
「もうこいつ相手にすんのはやめません? ……怒るとやべぇって、リーダーも言ってたっしょ! やっぱり放っときましょうよ!!」
支えた男はホストでもしているような格好をしている。柄の悪い男に囲まれて一人だけ浮いているように見える。
兄貴、んなこと言ってんだ。
リーダーという言葉に山下は見に覚えがある。
「こんな人数いて、なんでびびってんだよ! アホぐわっ!?」
「帰っていい?」
松田助けて、ちゃっちゃと帰ろうか。
学生に目をやる。
「いい加減にしろよぉ……、やっちまえ!!」
「――まかしとき、殺したる!!」
叫びながら男達が襲い掛かってきた。
「しっかりしろ、生きてるかー。……死んだ?」
殺風景な空き地に移動して、一旦落ち着く。
「そんなわけないでしょ」
松田は気を失っているようだ。
「それにしても、君も強いね。本当に同じ人間なのかね?」
「……井上さん、なんでついてきたの?」
ホスト風の男もついてきていた。
「君に何かあったら大変だからね。……リーダーの弟さんってこと、俺しか知らないですし」
「……腹減ったなぁ」
「聞いといてその態度ですか……。君らは兄弟揃って自分勝手で困りますよ? 直したら?」
「……?」
山下の前に、黒いオーラを纏った何かが現れた。
「な、なんだいそれ!」
……ネックレス?
黒く不気味なものを光のように放っている。
「っ! ……?」
反射的に後ろを振向くと、闇があった。
「どこいくんだよ!」
「知らね」
刺激がほしかったのか、ただの好奇心か、無意識に俺は闇へと近づいた。
「……え?」
直感だが、死にはしないだろ。
「……消えた?」