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第0話 OpeninG――それは風のように過ぎてゆく

ついに始まった本腰一次創作!


今回はプロローグとなります。次回からは、倍量してお送りします。


主人公も名前が登場しませんが、どうぞ!

「コレが、ホープライトか……!」

 とある商店街の裏側。人通りが少ない中で、二人いた男の内の片方が目を見開いて、少し興奮気味につぶやいた。

 今の片方は、どこかの商社の社長といったていだ。長年のキャリアを思わせる、小太りの男性。そしてもう片方は、”ホープライト”と呼称された何かを見せた者で、セールスマン的な雰囲気をかもしだしている、背の高い青年だった。

 両方とも、仕事に使うような黒スーツ。

  青年は白いネクタイをしており、ぱりっとした風貌。派手な虎柄ネクタイの小太りとは対照的にさっぱりしている。その両腕に抱えているのは、セールスマンが売り物を入れておくようなケース。既に開けてある。今、彼が提示したのは、この中の物である。こちらも服装と同様に黒い。中にはさらにケースがあり、そのへこみの中に、商品・・たちはあった。

 小太りは買う側、青年は売る側という関係だろう。

 商品は様々な色のペンライトで、どう見ても、このような場で行う取引の商品とは思えない。用途も、普通のペンライトと変わらないように見えるが、外面に、アルファベットで何か書いてある。それは全て別々であったが、共通しているのは白文字で書かれていることだった。

「その通り。これがホープライト、希望の光……」

 セールスマンは、ライトの内の一つを取り出し、小太りに見せる。それは、灰色で、”MOUSE”の字が書かれたライトだった。英単語”MOUSE”は、”ネズミ”の意。

 ライトを右手の人差し指と親指ではさみながら、説明していく青年。

「例えば、これは『マウス・ライト』……『鼠の光』を内包しております」

「これを使うと、鼠の力が私に宿るわけか?」

「ええ。正確に言えば、鼠の光が貴方を守護します」

「だが、鼠とは少し不快だな、猫に食われる方じゃないか」

「確かに、そうですね」

 そこで、二人は談笑する。鼠を出したのは、単なる一例である。もっとも、小太りの顔は鼠に似ているフシがあったのだが。出っ歯と言い、上につりあがった目と言い、鼠のそれと酷似している。

 買い手の顔がどうなのか、ということはさておき、守護するとはどういう意味だろうか。ペンライト如きが、持ち主を守る存在となるとは考えづらいが、用途が通常とは違うのかもしれない。よく、スパイ映画などで、ボールペンに見立てたピストルが登場することがある。それに、ペンライト自体、『ペン型のライト』なのだ。形だけで用途を判断することはできない。

「ライトの後ろ側をひねるだけで点灯します」

 『マウス・ライト』を手渡しながら、セールスマンの男性が言う。

 この台詞から察するに、どう見てもそれは普通のライトとしか思えないのだが……。

「今ここで使ってみてもいいかね?」

 半ば興奮気味に言う。それほどの価値が、このライトに秘められているのかもしれない。だから、この男も興奮しているはずだろう。

 しかし、セールスマンは首を横に振った。駄目だ、という拒否の意味だ。

「いいえ。騒ぎになるとまずいですし、そもそも購入されていないものは使わせられませんよ」

 それにしてもこのライト、中々怪しい。使ったらどうなるかなど、常識の範囲内で言うならば(先程の通りそれが正しいとも限らないが)最初から既にわかっているはずなのだが、試してみようとしている。今の光景では、まるで麻薬か何かの取引のように見えてしまう。

「ううむ……」

 一考する客の男。人差し指を額の横に押し付けている。

 商店街の裏で、一迅の風がひゅうとふいた頃、口を開く。

「では、一つ購入しよう。選ばせてくれ」

「どうぞ」

 街の裏側で、ライトのような何かの密売が、進んでいた。


「待て……」


「「!?」」

 突然、木々の葉がかすれるような声が、密売を遮った。このような現場におり、尚且つ、『待て』と言ったからには、どのような状況、そしてライトが何であるのかを知る人物だと考えられる。しかし、そこまでの条件を満たす者は限られるはずだ。一体、誰だろうか。


 さわさわ……

「待て……」


 街樹が揺れるのと共に、再び訪れる、低く小さな声。それが、先程まで取引を行なっていた二人をさらに不安にさせる。

「まさか、誰かに感づかれていたのか?」

「いえ、仮にそうだとしても、このような言葉を言うまで、コトを知っている者は、公式の範囲では――私は知りません」

「公式とは?」

「まあ、気にしてはいけない領域、ってやつですよ。お忘れ下さい」

「……わかった」

 ただ、警戒するだけで時間は過ぎていく。誰かに見られていると考えられる以上、取引は続行できない。できないとなれば、邪魔者を排除するしかない。

 しかし、セールスマンは、ライトを売る者。自身は商品を使わない。先程、『力を得られる』という話をしていたが、それは逆に言えば、使っていない者は力を得ていないということ。いつまで経ってもセールスマンがライトを使わないのは、彼はライトを使っていないからであろう。

 辺りをいくら見回しても、発言者らしき人間は見当たらない。ここは人通りが少ない故に、取引を見られづらいのに加えて、邪魔者を発見しやすいことが長所だったのだが……。

「とにかく、取引はまた後日お願いします。こちらから連絡しますので」

「仕方ないねぇ……頼むよ」

 ここを見られていることがわかり、さらに見ている人間が誰で、どこにいるのかわからないのなら、このまま続けるわけにはいかない。そのような見解から、二人は途中で別れることにしたのだった。

 商店街裏を、買い手と別れたセールスマンが進む。

「まったく、折角のライトが売れませんでしたね。残念ですが、仕方ありません。過ぎたことですから。

 今はそれよりも、考えるべきことがあります」

 商人の男はしばらくぼやきながら歩いていた。内容は、ライトを売れなかったことに対する愚痴である。人間、もう少しでというところで止められると、腹が立つもの。しかも、怒りの矛先が誰なのかさえ見当が付かない。ただわかるのは、ライトに精通する者ということのみなのだから。

 『仕方ない』と割り切った青年は、辺りを見回した。さっきの人間は、まだ遠くへは行っていないだろう。ライトが使えないから、相手を捕まえることは無理だろうが、犯人の顔くらいは知っておいて損はない。

「奴はどこでしょうか?」

 考えるべきこと。それは、さっきの声の主がどこにいるか、だ。

 奴。その単語は、まるで相手が誰なのかを知っているかのようだった。

 それもそのはず、彼が所属している組織内で、最近話題になっているのが、今のような出来事だったからだ。姿を見た者はまだいないらしいが、必ずボソボソとした声でライトの取引を邪魔するらしい。

 しかも、商品をバラバラに壊してゆくという、非常に迷惑な存在。買い手が減るといけない為、この業界にとっての公式では伏せてあるのだ。買い手の男との会話で、『公式では知らない』と言ったのは、相手に伏せることに決められていたからだ。

 今回の相手も、同一人物の仕業だろうと考えていた。だが、正体がわからない為、邪魔された怒りの対象にはならない。実像かはっきりしない者に文句を言っても気は晴れない。ならば、最初に犯人を見たという手柄くらいは立てておこうという気になったのだ。

「もう行ってしまったのでしょうか? なら、そろそろ引き上げ……ッ!?」

 歩きだそうとしたとき、腕に違和感を感じた。本来、ケースを持つことで得られるであろう重量感が……無い。

 驚愕し、ケースがどのような状態になっていることを確認する為に視線を下げる。重量感が無いとは、なんとも奇怪な状態。途中で落としたか、あるいは……。

「くそっ!」

 先程まで敬語を使っていたセールスマンは、そこで口汚く悪態をついた。

 結果だけ言おう。ケースはなくなっていた。多く聞かされていた話と違ったのは、壊すのではなく持っていったこと。だが、末路は恐らく変わらないだろう。

 己の背後を見る。やはり、グチャグチャに破壊された状態で、ケースとライトの破片が散らばっていた。恐らく、修復は不可能だろう。仮に修復できたとしても、これでは新たにもう一つ作った方が早い。

 諦めるしかない……そう感じた青年は、ハァー、と息をついた。そして気づく。吐き出された空気が、白いことに。気温の低い日に息を吐くと、白くなって出てくることがある。それは身体の内側と外気の間に温度差かあるからだ。

 つまり、今の彼の周りの温度が低くなっているということ。言うなれば、冬の日のような……。今は春の始まる頃だが、さっきまで、ある程度暖かかったものが、突然寒くなるのは、不自然である。夕方ならばこれもあり得る。気温が段々と下がってゆくからだ。

 今はそんな時刻だろうかと、左手首に付けられた質素な腕時計を見るセールスマン。時計は、午後二時過ぎを差していた。気温は二時で最も高くなると言う。また、昼を過ぎたばかりでもある。今はそこまで低い気温ではないし、突然低くなるという時間でもない。

「……あっ」

 そこで、ライトの商人は、はっとする。仲間内で広がっていた噂に続きがあったことを思いだしたのだ。


『しかもよぉ、あいつが過ぎ去った後は、なんか凄く寒いらしいんだよ』


 仲間内らしい、崩した言葉遣いの台詞が蘇る。思わず、口を半開きにして立ち尽くしてしまった。まるで都市伝説にありそうなことだ。信じられない。しかし、信じ難くても、起こったことは否定できない。これは事実なのだから。

 彼の口からは、白い息が出てゆくばかりだった…………。


○○○○○○


「ホープライト、破壊できたな……!」

 商店街の建物の一つの屋上に、紫のコスチュームに身を包んだ人間が立っていた。仮面を付けている為、人相はわからない。ただ、その台詞から察するに、先程ホープライトを壊した者だろう。

 そのモチーフは、紫という色に似合わない、不死鳥だ。顔を紫色の不死鳥がすっぽりと入れ込んだと形容できる容姿。目は二つで、漆黒。

 身体にもまた、不死鳥の形態が現れており、胸の中心にマークがある。それは不死鳥が翼を広げたもところを描いたもの。黒い背景に、紫色だ。そしてマークから、体中へとパーブルラインが走り、腕や足へ。

 全体的に、黒を背景に紫の装甲が広がったコスチュームだった。他にもディティールが細かくほどこされているが、太陽の光が彼の背後にあることによって、見づらくなっている。

「怪物を生みだすライトの取引……。必ず、阻止する」

 彼は、ささやくような声で、しかし、低く力強く呟いた。彼の周りでは、水分が、まるで雪のように白くなっていた。独立した、氷が実体を持ったかのような空間。

 彼の持つ雰囲気の属性を一言で表すとするなら……『氷』だろう。全てを凍らせるつもりでいる人間、いや、己でさえも、心が凍っていなければ出せない雰囲気。

 『怪物を生みだすライト』とは一体なんなのか? また、彼の正体は――――?

月一回ペースくらいでいけると良いんですが……。


二作並行で展開しますので、大変だったりします。


次回も、お楽しみに。

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