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手を結ぼう 第一話

常磐林蔵様が連載されている「宗盛記」の二次創SSです。

楽しむには「宗盛記」の知識が必須となります。

「読んでおいてほしい本編の話数」は下記となります。チェックいただければ幸いです。

宗盛記0087 永暦二年一月 から

宗盛記0094 永暦二年六月 青墓宿 まで


この連載は、プロットを作成の後、AIで文書化したものを推敲して仕上げています。

永暦二年一月


伊豆守様が帰ってきた。


「……戻ったか」


高台の木の上から、見下ろす。

国衙前に人垣。伊東、土肥の家人たちが整列している。

その中央に、伊豆守様。


まだ若い。

だが、戻ってくるたび、場の重さが増していく。


噂は、もう坂東中を回っている。


伊豆守、従五位下。

大庭、従六位下。


十五で五位。

坂東では、聞いたことのない速さだ。


「……早いな」


早すぎる出世は、反発も呼ぶ。

だが、今回に限っては、妬みより先に納得が来る。


為朝。

その名を出さずとも、皆わかっている。


伊東祐親と土肥実平が出迎え、深く頭を下げていた。

その姿を見て、周囲の武士たちの背筋が揃う。


伊東。

大庭。

土肥。


伊豆から相模へ続く、要の名だ。


その三つが、同じ向きを向いた。


「……まとまったな」


夜の流れが、静かになる。

噂が減る。

争いの気配が薄れる。


盤面が、一度、整えられた。



数日後、港が騒がしくなった。


船が増え、荷が増え、人が増えた。

塩、米、木材、鉄。


流れが一本に束ねられていく。


伊豆守様は、港と港を繋ぎ、川と道を結び、

伊豆を、坂東の入口に変えようとしている。


「……夜が、薄くなるな」


灯台。

船。

街道。


影の溜まり場が消えていく。


仕事のやり方が、変わる。


それが、少しだけ、落ち着かない。



そして、三島神社での発表。


三月三日、四日。

坂東一の武士を決める、騎射大会。


参加は、坂東および伊豆在住の武士すべて。


優勝者には、


「坂東一の武士」の称号と、米十石。


場が、一瞬、静まり返った。


次の瞬間、空気が沸いた。


「……でかいこと、やるなぁ」


坂東中から、人が動く。

噂が走る。

思惑が絡む。


武名。

名誉。


人を狂わせるには十分だ。


盤面が、再び、大きく歪む。



坂東では、すでに伊豆守様の評が定まっている。


「武名ほど、派手じゃない」

「だが……軽くない」

「誇らないのが、逆に厄介だ」

「でも、ああいうのが一番残る」


それらは、もう、どの宿場でも聞く。


だが。


本人は、それを知らない。


自分が、どんな目で見られているか。

どんな期待を背負っているか。


知らないまま、盤を動かしている。


「……そのうち、大事になるかもな」


小さく呟く。


強いとか、偉いとかじゃない。


ただ――


流れが、きれいだ。


だから、皆、乗ってしまう。



港を見下ろしながら、梟丸は、静かに息を吐いた。


「しばらく、忙しくなるな」


夜は、まだ深い。

だが、その奥で、盤面が、確実に組み替えられていく。


見続けるのが、仕事だ。


それだけでいい。



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