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伊豆守がやってきた。やぁやぁやぁ! 第五話

常磐林蔵様が連載されている「宗盛記」の二次創SSです。

楽しむには「宗盛記」の知識が必須となります。

「読んでおいてほしい本編の話数」は下記となります。チェックいただければ幸いです。

宗盛記0069 永暦元年二月 伊豆へ から

宗盛記0076 永暦元年七月 帰省 まで


この連載は、プロットを作成の後、AIで文書化したものを推敲して仕上げています。

永暦元年七月 黒装束 本拠


武蔵国某所

場所の名は、言わない。

言う必要がない。

川と台地の境目。

道はあるが、目立たない。

行き止まりに見えて、奥がある。


俺は、夜明け前に戻った。

土の匂いがする。

伊豆とは違う、湿り気の少ない匂いだ。


戸を叩くと、すぐに開いた。

待っていたわけじゃない。

でも、戻る時刻は、だいたい読まれている。

「……おかえり」

短い声。

顔は見えない。

中へ通される。

奥の間。

灯りは一つ。

座っているのは、長だ。

年は分からない。

若くも見えるし、古くも見える。

黒装束の長は、だいたいそんなものだ。


「伊豆は、どうだった」

俺は、座る。

背筋は伸ばさない。

ただ、目線を下げる。

「伊豆守様――平宗盛について、報告します」

長は、うなずく。

それだけ。

俺は、順に話した。


梟丸の報告(要点)

武名があるが、威張らない

最初から腰を据えていた

国衙の整えが異様に早い

情報を軽んじない

むしろ、異常なほど重く扱う

職人を丁寧に使う

使い捨てにしない

生活から整える


「武だけの人ではありません」

そう言ってから、少し考える。

「……武を、道具として見ている人です」

長は、何も言わない。

俺は続ける。

「為朝の件ですが」


流言を流し、選択肢を絞った

夜討ちは、最初から勝ち筋があった

国衙は、すでに“砦”だつた

誘い込んで、壊した

正面から叩いたわけではない

「戦ってる最中に、もう終わってました」

そこまで言って、口を閉じる。


長は、しばらく黙っていた。

それから、ぽつりと、言う。

「……西からも、話が来ている」

俺は、顔を上げない。

「清盛様の筋だ」

そこで、初めて、少し空気が変わる。


平治の乱での伊豆守の功績はかなりのものだ

長は、淡々と続ける。

「早馬の手配」

「帰京の準備」

「それによる、予想外に早い帰京」

「……一本御書所への出仕がな」

「兵の集まりと、敵の自壊の決め手になった、と」

一つ、間。

「六波羅を、一日にして砦とした手腕」

「院と、上西門院様をいち早く確保したことも、高く評価されておる」

俺は、知らない話だ。

伊豆では見えなかった部分。


「さらに、だ」

長の声が、少し低くなる。

「馬の確保を始めたのは、二年前からだそうだ」

「熊野詣の話が出る前から、だ」

俺は、思わず、息を止める。

「叺もだ」

「あの数は、急には揃わん」

長は、そこで言葉を切る。


しばらく、沈黙。

俺は、何を言えばいいのか分からない。

でも、言わなきゃいけないことは、もう全部言った。

長が、最後に、こう言った。

「……用意周到だな」

それだけ。

評価とも、警戒とも取れる。

どちらでもある。


「梟丸」

呼ばれる。

「伊豆で、どう見えた」

少し考える。

「変な人でした」

正直な言葉だ。

「武名を、使わない」

「誇らない」

「でも、全部、繋がってました」

「見ている先が、ずっと遠いです」

長は、ふっと息を吐く。

「清盛様に、似ているな」

その一言で、場が締まる。


「伊豆守は、一時、帰京する」

「これから、忙しくなる」

「お前は――」

一瞬、間があって、

「しばらく、武蔵で待て」

俺は、うなずく。

それ以上は、聞かない。


外へ出ると、空が白み始めていた。

腹が、減っている。

伊豆より、ずっと。

干し飯を齧る。

硬い。

でも、嫌いじゃない。

「……また、面倒な流れになりそうだな」

梟は、今日も飛ばない。

武蔵の影で、

次に“視る”べきものを、待っている。

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