3・人形使い 後日談
(≧◇≦) 感想ありがとうございます!(大歓喜)
ボケとツッコミのせいでハミ出してしまい、泣く泣くカットした部分を後日談としました(ハミ出すな!)
皆さん、人形のあの髪の毛、どうしたでしょうね?
ええ、夜、兄の部屋から妹の部屋へ行く廊下で、ホ○ホイにゴッソリ剥ぎ取られた、あの人形の髪の毛ですよ。
その日、藤山コウキは逸る気持ちを抑えつつ、自身が通う大学へ向かっていた。
一昨日の夜の『信じられない出来事』を自分以外にも見てもらい、『現実』だと確認してほしかったのだ。
最初は妹の『お兄ちゃんへの可愛いお願い』だと軽く考えていたが、まさか、あんな、不気味なモノを目にするとは、明るい日差しの中を歩く今、『証拠』を自らの腕で抱えているのに、信じられない気持ちであった。
(これが『狐に摘ままれた』ってやつかな。昔話の村人Aかよ)
なんだか自分の状況が急に可笑しくなり、思わずニヤけそうになる顔に手を当てながら、部室やサークルの部屋がある大学内の別館に入って行く。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「オッス~!待たせたな諸君」
「待ってた待ってた」
「や~、藤山くんありがとうね~」
「ご足労忝ないでござる、藤山氏」
「神秘の解明の為ならば、一日千秋の思いで待つのも、我が運命よ……」
「オレなんて、楽しみ過ぎて夜しか眠れんかった!」
コウキを迎えたのは、大学のミステリー研究会、通称『ミス研』のメンバー。
メンバーの1人で、高校からの友人のカズオに今回の『事件』を雑談程度に話した結果、ミス研メンバー全員一致で、検証することになったのだ。
……メンバーに、忍者(自称)と魔道の探求者(自称)がいるが、気にしてはならない。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「では部長! ご開帳、お願いします!」
「や~、ボクに任せてもらえるとは光栄だな~。ではでは、封印、解除~」
「「「「おお~~」」」」
「いや、よく考えたら、感動するようなモンじゃないよな?」
「コウキ~、それは言わないお約束だろ? オレらはムッチャ楽しみにしてたんだからな?」
「そうだぜ、藤山! 今、オレらはこの現場にいる! それだけでワクワクすんじゃねぇか!」
「そう、この深淵の欠片から漂う負の波動……それを我が身で感知すること、それこそが探求の道……」
「然り。傀儡に使われた物など、稀に見る逸品でござるよ」
「そうだよね~、ボクも藁人形は持ってるけど、呪いの人形は持ってないんだ~。贅沢を言えば、片足だけでも欲しかったな~」
「そ、そうか、みんなが喜んでくれたなら、良かったよ……」
魔道の探求者(自称)と忍者(自称)はともかく、ほんわかした部長のブッ飛び具合いに、コウキはドン引きである。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
忍者(自称)が書記をする中、コウキが語る『事件』のあらましを、ミス研メンバーは誰も口を挟まず静かに聞く。
「……で、妹が相談したその子が俺に『絶対に守ってくれ』って言ってた通りに、あのケースに入れて、今朝まで上に雑誌と鉄アレイ乗せてビニテで留めて、さっき開けるまで閉めたまんまだったんだよ」
「……なるほどね~」
「うっわ! なんか今になって寒気してきた!」
「オレも!うっわ、ムッチャぞわってしてきた!」
「うむ、これぞ深淵の波動……我がSAN値がヤバい」
「藤山氏、その解決策を授けた女子は、何かその道の修行をされている巫女なのでござるか?」
「え? いや、ヒロミ、妹が言うには『普通なんだけど色々凄い』らしいんだけど……なんか、だいたい何でも答えてくれるとか……よくわからん子らしいんだよな」
『不思議ちゃん』扱いされているのを花さんが知ったら、激おこ案件である。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「んで、部長、コレの検証って、どんな感じ?」
「そうだね~、まずは保管用サンプルの採取して~、人形の髪の毛のナイロン繊維から謎物質に変化しているか酸とアルカリに漬けて~、電気流して~、燃やして~、凍らせて~、うふふ~、楽しみだね~」
「……部長さん、聞いてた以上にヤベェ人だな……」
「いつもあんな感じだぞ、部長」
「そうそう、今日は特にご機嫌だよな部長」
部長の暗黒面に、コウキはドン引きである。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ではでは~、サンプル採取しますか~」
「おっしゃ、フタ外すぜ~」
「っ!? 待つでござるカズオ殿! 皆も見るでござる!」
「え? ん? えっ、なにこれ……?」
「うっわ! なんで? え、フタ開いてないよな?」
「わ、我らの感知出来ぬ魔力を放っているのか……!?」
コウキが『あのホ○ホイ』を入れていたのは、半透明のプラスチック製の収納ケース。
ミス研の部室でフタを外した後、中を観察出来るように、厚みのあるアクリルボードを乗せていたので、隙間風が入ったり、コウキたちの息がかかったりはしない。
そんな密閉された状態なのに、ホイ○イにゴッソリ付いた人形の髪の毛が、そよ風に揺れるように、ゆっくりと、揺らめいているのだ。
「凄い!凄いよ!コレだよコレ!ボクはこういうのがずっと見たかったんだ!」
「…………」
大ハシャギする部長とは反対に、驚愕で口を開いたまま何も言えないコウキ。
(うえぇえぇ~~!?なんだアレ~~!?俺、とんでもないモンを捕まえてたのか~~!?)
自分でも「バケモノ」って言ってましたやん。
それぞれが驚愕する中、真っ先に正気に戻った忍者(自称)はスマホで写真を撮ろうとするが、何故かシャッターが反応しない。
「皆の衆!早く、撮影するでござる!面妖でござるよ!」
我に返ったコウキとミス研メンバーたちは、それぞれのスマホやタブレットで写真や動画を撮り始めるが、何故かシャッターやスタートボタンが反応しない。
タブレットは電源オフになってしまう。
「ああっ!!髪の毛が消えてく!!」
「「「「「!!」」」」」
密閉されたケースの中、人形の髪の毛は、空気に溶けるように、跡形も無く消えてしまったのだった。
《作者より》
ホ○ホイの粘着剤に人形の髪の毛のナイロン繊維が反応して『科学的に溶けた』んじゃないかと思い、手持ちのリ○ちゃん人形の髪の毛 (ゴッソリではない)で実験しましたが、全く溶けることがありませんでした。
後日、ゴッソリ済みのリ○ちゃんが、よもぎ保育園(仮称)で元気(?)に暮らしてるのを確認したので、本体から離れたから消滅したんじゃないかな?と考えてます。
前書きの元ネタが解る人は、かなりの文学好き(のはず)
気になる人は【詩・麦藁帽子】で検索してみてください。
【なろう夏のホラー企画2025・テーマ『水』】も書こうかな……水&ストーカーなので、女性にはかなり気持ち悪い話ですけど。