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私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


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 ヴィナスの権力をもう使えない!

 ……なんかこれだと、私がヴィナスの権力を悪用しようとしていたみたいに聞こえる。断じて違う!

「今の私にできることってなにかしら」

 私はそう呟き、最も単純な答えを出した。

 より強くなって、より賢くなり、行動するしかない……!!

 ずっと悶々と考えていても意味がない。無駄な時間だ。

 もう一度魔物に関して勉強をする。戦略を練り、戦いに備えて鍛える! 

 レグート国のことをより詳しく知り、どう動きだすかを見極める!

 学びから導き出された道を明確にして、自分が正しいと思う行動を起こす!

「このプラン完璧じゃない?」

 私は我ながらにニヤッと口の端を上げる。

 勇者落ちに加えて新たに王子からの婚約破棄という肩書が増えた。……ちっとも名誉ある事じゃないけれど、嫌な気はしない。

 むしろ、評価がマイナスになった方が、これから挽回するチャンスはいくらでもあると思って燃えてきちゃう。

 勇者になるって決めたんだもの。ヴィナスに負けないって言ったんだもの。最後まで意志を貫かないと。

 改めて私は、勇者となる上で一番大切なことはなんなのかを考えた。

「……必要なのは恐れを知ってもなお一歩を踏み出せるか」

 私はそう口にしたのと同時に、勢いよく部屋を飛び出した。

 


 毎日、ありとあらゆる文献から情報を集めた。

 ローズに「休んでください!」と何度も怒られるほど、私は寝る間も惜しんで魔物対策やレグート国の内政に頭を使い、身体能力向上に没頭した。

 レグネルに「少しの間休むってカイル団長に言っておいてほしい」と頼んでおいた。レグネルはあえて私に事情を聞かずに、カイル団長に伝言しに行ってくれた。なんとも優秀な兄だ。

 カイル団長は相当怒っていたに違いないと思って、私が休むと聞いた彼の反応をレグネルに聞いてみた。すると、予想と違った反応だった。

 あっさりと「分かった、体を大切にするように言っておいてくれ」と承諾して、私のことを気遣ってくれた。これにはレグネルも驚いたらしい。

 レグネルは、あの恐ろしい団長が心を入れ替えたのだと思ったのだが、騎士たちに対して乱暴に怒鳴っている姿を見て、「ああ、違った。エルが特別なんだ」となったようだ。

 贔屓されていると思ったらどうしよう、と私が呟くと、「エルの実力はそれほど認められているってことだ」とレグネルは微笑んだ。

 ……二人ともいい人!!

 私は心の中でクゥと優しさを噛みしめて涙を浮かべておいた。

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