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ヴィナスに婚約破棄をされた日、私は長い夢を見た。
目を覚めると、体中が汗ばんでいた。体を起こして、息を整える。
……全て思い出した。
あの日、生まれて初めて魔物と戦った。そして、瀕死だった私をヴィナスとサラに助けてもらった。エオザルとどうやって戦ったかは思い出せない。詳しくはヴィナスに聞くしかないだろう。
死にかけたあの日までの記憶を私は失っていた。
森で目を覚めた時には、怪我一つ負っていなくて、一人だった。遊び疲れて眠ってしまったのだと思っていた。おねえちゃんの存在が記憶の中から消えていた。
ヴィナスとサラは私の体を回復させて、血が付いていてビリビリに破れた服を綺麗に元通りに戻してくれたのだろう。
当時の彼らの年齢を考えると、相当な気力と魔力を費やしたはずだ。
……あれ以降、自然と森には行かなくなった。「ヒーローになる!」と言い出して、私は勇者を目指したのだ。
家族に理由を聞かれたら、「悪い怪物からこの世界を守るんだ!」と答えていた。「悪い怪物?」と皆、戸惑いの表情を浮かべていたが、それにはたいして追及されなかった。
……今思えば、あの言動は私の奥底にある記憶が信念として表れていたのだろう。
すごいな、幼い頃の私。……今より勇敢じゃない?
人は守るものがあると強くなれる。……今の私も昔の私も守りたい人は変わらない、ヴィナスのまま。
「…………そういえば、どうしてヴィナスはあの森に来ていたのだろう」
私はふとそんな疑問が頭に過った。
一気に色々と思い出して、頭が痛い。私はズキズキする頭を押さえながらベッドから出る。
頭痛なんかに負けていられない。今は思考力を止めちゃダメだ。
私はそう自分を律して、必死に頭を働かした。ぐるぐると部屋の中を歩き回りながら、色々なことを考える。どんどん頭が冴えてくる。
幼き私は魔物をどうやって倒したのか。どうしてヴィナスは私の記憶を消したのか。
魔物が現れる頻度が最近増加しているのは何故か。本当の敵は魔物だけなのか。
立ち止まり、私は王宮の応接間に飾られていた世界地図を思い出した。……魔物のことばかり意識していたけれど、レグート国に焦点を当ててもいいのかもしれない。
……両国間においての状態をどうにか聞き出したい。
そういうことは、貴族議会でしか話し合われないから表に出てくることはない。決定事項だけが私たちの耳に入る。
ヴィナスから聞き出せれば……。そこまで考えて私はハッとする。
「あ~~、そうだ、もう私は婚約者じゃないんだった。……はぁぁぁ」
思わず頭を抱えてしまう。




