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背中が熱い、痛い。燃えているみたい。死んじゃう。
私は気づけば、その場に倒れ込んでいた。もう体に力が入らなかった。うまく息ができない。
エオザルとの戦いがどうなったのか分からない。覚えていない。ただ、痛みだけがそこにあった。
…………あの怪物、倒せたのかな。どうなったんだろう。倒せてなかったら、私、食べられちゃう?
そんな不安に駆られながら、ゆっくりと意識が薄れていく。
おねえちゃん、大丈夫かな。ちゃんと逃げれたかな。
ふっと意識が途切れそうになった瞬間だった。『サラ!! 早く来てくれ!!』と大きな声が耳に響き、なんとか目を開く。いつもよりも低く乱暴なおねえちゃんの声だった。
私の体が少し楽になり、痛みが和らぐ。
『治癒魔法を施している。手を貸せ』
おねえちゃんと同じぐらいの年の女の子が私に近づいて来る。『これは相当……』と女の子は眉間に皺を深く寄せて私を見る。
『絶対に死なせるな』
私は隣にいるおねえちゃんへと視線を向けた。今までに見たことがないほど切迫した表情だった。サラと呼ばれた女の子は戸惑いながらも、すぐに私の近くで治癒魔法をおねえちゃんと共に私に施す。
『いきなり、私を呼びに来たと思えば……、どういうことですか? いつも私に森の前で待機するように言ってたのは、この少女と会うためだったのですか? ……一人で研究したいというから』
『ああ、そうだ。彼女に会うためだ』
『……そんなあっさりと。…………ご自分の立場を』
『分かっている』
『……そういえば、魔物は!? まさか殿下が!』
『いや、彼女だ』
『…………え? ……この子が? ……この少女は誰ですか?』
『分からない』
『…………分からないって』
『彼女は、窮屈なこの世界での僕の唯一の癒しだった』
女の子とおねえちゃんの会話が途切れたのと同時に、私はなけなしの力を振り絞ってなんとか声を出す。
『おね、えちゃ、ん』
『今は喋っちゃダメだ。必ず治すからね』
『……ぶ、じで、よかったぁ』
私は力なく笑みを浮かべた。その瞬間、ぷつんと意識が切れた。
『今度は僕が守るから』
最後におねえちゃんの確かな声が私の耳に残った。




