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私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


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90 エルヴィ・ケーレス 十六歳

 …………ブレスレット?

 グラファン家から帰ってきた次の日に、リーシャからもらったプレゼントを開けた。中には丁寧包装された金のブレスレットが入っていた。

 見た目はシンプルだけど触ると高価なものだということが分かる。……それに、ブレスレットから魔力を感じる。

 ベッドの上に座りながら、私はブレスレットと一緒についてきた手紙を読む。

『これは私がダクトに噛まれたときに身に着けていたブレスレットです。私の魔法で少し改造しました。いつか、エルヴィ様を助けてくれるでしょう。   あの日、死ななくて良かった』

 上質な白い紙に美しい筆跡でそう書かれていた。

 ……粋なプレゼントされちゃった。

 私はすぐにブレスレットを左手首につけた。窓から入ってくる陽光にブレスレットを照らしながら、思わず顔を綻ばせる。

 女の子からプレゼントをもらったのは初めてだ。

 気分が上がっているところに、コンコンと部屋の扉がノックされた。「はい」と返事をすると、「俺だ」とレグネルの声が聞こえた。 

 私はベッドから降りて、部屋の扉を開けた。そこにはどこかよそよそしいレグネルが立っていた。

「昨日、グラファン家に行ってきたそうだな」

 開口一番にレグネルはそう言った。 

 なんか不機嫌だ。……そんなにグラファン家に行ったことが気に食わないの?

「行きました」

 私ははっきりそう答えた。

「……どうだった?」

「はい?」

 私は想像していなかったレグネルの言葉に思わず眉をひそめてしまう。

 この流れで「どうだった?」はなんかおかしくない? 

 もっと責められたり、嫌味を言われるのかと思った。なんだか、拍子抜けだ。身構えていた私の身にもなってほしい。

「楽しかったですよ……?」

 なぜか私も疑問形で答えてしまう。

「仲良くなったのか?」

「はい、とても」

「……また遊びに行くのか?」

「いえ、今度はうちで会う予定です」

「そうか」

 なにこの表面上の会話のキャッチボール。中身が全然ないわりに、レグネルはずっと険しい表情だし。

 レグネルがリーシャに対して抱いているのは何? 嫌悪感? ……いや、どこか違う。

「お兄様も一緒にお茶会に参加しますか?」

 レグネルの考えていることが分からないから、私はリーシャとのお茶会に誘ってみることにした。

「いや、俺は……やめておくよ」

 レグネルは一瞬戸惑って、静かにそう呟く。そして「俺がいたら楽しめないだろ?」と柔らかに笑みを作る。

「そんなことはないと思いますが……」

「来る日が分かったらまた教えてくれ。俺は家にいないようにするから」

 私の否定の言葉も虚しく、レグネルはそう言って去って行った。

 一体なんだったのだろう。何を聞きにたかったのだろう。自分の兄のことが全く理解できない。

 ただレグネルが最後に発した言葉と表情で一つ分かったことがある。

 ………………レグネルが抱いている感情は罪悪感だ。

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