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私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


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「父に妹を頼まれて、俺たちは二人であの村から離れました。……ですが、妹は敵の放った矢が当たり……亡くなりました。村に戻ると、一族が皆殺しにされていました。その後、俺はルイスが捉えられているという情報を聞いて、身を隠して彼が捉えられている牢へと侵入しました。その時に俺たちは作戦を練ったのです『ジェガナ王国で共に捕らえられよう』と」

 少し詰まりつつも、グレッグはなんとか事の経緯を話し終えた。僕は少し間を開けてから、グレッグに対して質問をする。

「なぜ、わざわざ王宮に忍びこんだんだい? こっそり過ごしていればいいものの」

「……王族に目をつけてもらうためです。俺たちの目的はモリート族へと復讐です」

 グレッグは確かな声でそう言い切った。

 復讐のために僕たちを利用しようとしているのか……。僕は鋭い視線でルイスとグレッグを見つめた。僕の視線に怯えたのか、彼らは小さく身震いする。

 グレッグは緊迫した表情でなんとか話を続ける。

「ルイスが先に捕まり、俺が捕まるまで耐えてもらう。ルイスは拷問の心得がある程度あるので……。俺が捕まるまでは、作戦がバレないように時間を稼ぎをしてくれ、と」

「君が現れるまでにルイスが殺されていたら?」

「俺も死ぬつもりでした」

 低くはっきりした口調でグレッグはそう言った。さらに彼は続けた。

「俺だけ生き残るなど考えられませんでした。ガルロット族は仲間意識が強い。『仲間のために生き、仲間のために死ぬ』を美徳としています。ルイスが命を落とせば、俺はもう生きている意味がない」

「……なるほど。どうやって国境を越えた?」

 これが一番の謎だ。

 彼らが命がけでレグート国から逃げ出してきたいきさつは理解した。ただ、緊張状態にあるレグート国とジェガナ国の国境戦を簡単に越えれるとは到底思えない。

「一度北上し、ミナジェス山脈を経由し、南下しました」

 グレッグが発した言葉に僕は思わず固まってしまった。

 …………なんだって? 

 ミナジェス山脈はほとんどが雪山だ。標高の低い場所は雪はないが、そこだけを通ってこの国に入ることは難しい。

「見張りが強化されている国境線を越えられるとは思いませんでした。なので、ミナジェス山脈を二週間ほど歩き、ジェガナ国に入りました」

 ……これは驚いた。

 あの山脈を身一つで乗り切ったというのか。

 オーカスはこの話を予め聞いていたのか、それほど驚いていない。グレッグは「ガルロット族は脚力が強いので」と言葉を付け足した。僕は「はっ」と感嘆の笑い声を漏らす。

 なかなかの根性と度胸だ。

 少し彼らに興味が湧いてきた。

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