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オーカスは「コホンッ」とわざとらしく咳をして、説明し始めた。
「まず、自己紹介から始めます! 僕から見て奥に立っている最初に王宮に侵入した男性が二十二歳のルイス。そして、こっちにいるのが三十一歳のグレッグです。二人ともレグート国の少数民族であるガルロット族の者たちです。そして、ルイスがつけていたペンダントにいた女性は恋人のナナ。さらに、彼女はガルロット族の長の娘であり、グレッグの妹です」
……ナナに関して情報が多いな。
俺は黙ったままオーカスの説明の続きを聞いた。
「そして、ナナは死んだ」
オーカスの声が急に低くなった。この場の空気が一変する。ルイスとグレッグの表情は暗くなり、憎悪の感情が露わになる。
……死んだというよりも、この表情は「殺された」か。
「ここから先は君が話せ」
オーカスはルイスへと視線を向けて、強い口調でそう言った。ルイスは硬い表情のままゆっくりと口を開いた。
「ある日、突然モリート族がガルロット族の村に攻めてきたんです」
……やっぱり公用語を話せたのか、この男。
普段ガルロット族の少数言語を話しているせいで公用語の話し方に若干癖はあるが……。
今思えば、ルイスがなかなか口を割らなかったのも、あえて少数言語しか話さなかったのも、グレッグを待つための時間稼ぎだったのかもしれない。グレッグと共になった今、それをする必要はなくなったのだろう。
ルイスとグレッグに関しての書類には、この二人の間には強い絆があると書かれていた。
仲間と生きて合流できるまで、なんの情報も与えない、ということか。この状態になるまでオーカスの拷問に耐え抜き、もう一人現れたところで僕に交渉をしてきた。……その精神力は認めよう。
「俺たちガルロット族はモリート族の奴隷になるか、それとも戦うかの二択を迫られました。もちろん、族長は戦うことを選びました。それは皆同じ気持ちだった。……けれど、戦力が圧倒的に違いました。…………生き残りは俺たちだけです」
彼は最後に振り絞った声でそう言った。ルイスからは強い憤りと悲痛が伝わった。彼はグッと下唇を噛んで、感情を必死に押し殺す。
さぞ、無念だっただろう。
「……グレッグ、続きを」
少し間を置いて、オーカスはグレッグに向かってそう言った。グレッグは表情を強張らせながら「はい」と小さく頷いた。
「ルイスは我が一族で最も強い男です。ルイスは敵が慄くほどの威力を発揮したのですが、相手の人数があまりにも多く、最後は捉えられました。……どれだけ屈強な体かを確かめてみたい、というモリート族の長ジバットの娯楽として、鞭打ちとなったのです」
「なんとも悪趣味だな」
「本当に……」
僕の言葉にグレッグは顔を露骨に顰めて、眉間に深い皺が入る。
よっぽどルイスに対しての仕打ちが許せなかったのだろう。
「君は? どうやって生き残ったんだい?」
僕はグレッグに向かって静かにそう聞いた。
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